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牡馬たちはなぜ「娘」になったのか

 比喩でなく、1日の大半をゲーム「ウマ娘プリティーダービー」に費やしている。そう。私はヘビートレーナー。
 今更説明の必要もないかとは思うが、このゲームは歴代の名馬たちを牝馬・牡馬問わず「娘」化したキャラを育成するゲームだ。ウマ娘たちそれぞれに史実をなぞらえた(あるいは「もしもこうであったなら」という)非常に熱く読み応えあるストーリーが用意されており、様々にメディアミックスもしている。
 どれも事前知識なくとも楽しめる王道スポ根ストーリー(特に圧巻のレースシーンは必見!)となっていて、劇場版は現在上映中。またYoutubeで視聴が可能な4話完結のアニメが公開されているので未視聴の方にはまずはこちらを是非おすすめしたい。(なお、地上波放送されていたアニメ・ウマ娘プリティーダービー1期〜3期はAmazonプライム他、比較的多くのサイトで配信されている)

 いかんいかん。ついオタク早口が出てしまった。否。今週はこのまま行かせて頂くこととしよう。
 さて。そんなウマ娘であるが、実を言うとツッコミどころも少なくはない。
 ウマ娘たちにはそれぞれ「勝負服」と呼ばれるドレス等を纏いレースを走るのだが「そのスカート絶対走りにくいだろ!」とか、レース後には「ウイニングライブ」と称してウマ娘たちが歌い踊るところなど。私もプレイし始めた頃などは「インド映画か?」と違和感を覚えたものだ。(まあしかしこのあたりはプレイしている内に慣れるしなんなら楽しみにもなってくる)
 そしてそんなツッコミどころの一つにしてこの作品の根幹を成すものに「なんで牡馬が女体化しとんねん」問題がある。ネット上には今でもこの部分に引っ掛かっているお方々は少なくないようだ。というわけで今回はこの問題について、私なりに考察してみようと思う。

 とはいえ考察も何も複合的な理由からであることは明白だ。想定されたメインユーザーが男性だからであるとか、競馬には欠かせない「繁殖」を生々しく描写するのを避けるためであるとか。(一応、「因子の継承」と呼ばれるイベントが繁殖にあたるような気もし、全く繁殖の要素がないわけではない風だ)(曖昧)
 しかし私は「牝馬限定レースがある」ことも理由の一つなのではないかと思う。

 競馬は基本的には牡馬・牝馬・セン馬(去勢された馬)の混合戦が中心だが、牝馬のみ重賞でも限定戦が組まれている。(桜花賞、オークス、秋華賞、エリザベス女王杯など) 
 翻って、2003年までは日本にも牡馬限定戦が組まれていた(朝日杯フューチュリティステークス)が、現在の日本には牡馬限定戦は存在しない。詳細は以下Yahoo知恵袋のベストアンサーに詳しいのでこちらをご覧いただこう。
 曰く「出走条件を限定するという理由は、その条件に属する馬を守るためです。 守る必要のない馬たちによる限定戦は、存在意義がない」とのこと。
 そのため牡馬限定戦は「牝馬より牡馬の方が強いのだから、あえて牡馬限定という条件をつける必要はない」という理由で廃止された背景があるようだ。
 つまり、牡馬よりも筋量などが低くなりがちな牝馬を保護するため、またその牝馬たちの中での能力を競うため牝馬限定戦が組まれていると言える。(無論、ウオッカやダイワスカーレット、最近だとアーモンドアイやレガレイラなど、混合戦で好成績を残した牝馬も多くいるが)

 ここでウマ娘の話に戻るが、登場する名馬たちの性別をそのままにキャラクター化してしまうと牡馬がもとになっているキャラクターを牝馬(女性)限定戦で走らせることができなくなってしまう。もしくは、全ての馬を男性化しても然り。つまり、ゲームの自由性が損なわれるように思われるのだ。(念の為の補足だが、ゲーム内のウマ娘たちは元になっている馬の個性によるステータス差はあれど、性別差によるステータス差は特にない)
 全ての名馬を女性化することにより、全ての名馬(が元になっているウマ娘)に全てのレースを走らせることができる。私はこれをこのゲームの醍醐味の一つとして捉えており、ゲーム内のとあるシナリオでは牡馬が元のウマ娘に全ての重賞を走らせたりなどして遊んでいた。(ゲーム内には全ての重賞トロフィーを集めるともらえる称号があるのだ)これは、もしウマ娘に登場する名馬たちの性別が史実通りであったならできなかったことだ。

 そんな次第で、私は全ての名馬が「娘」化していることには賛成だ。プレイしていて違和感も特にない。尤も、それは私がウマ娘から競馬の世界に足を踏み入れたビギナーだからかもしれないが。
 とはいえ、元性別の「ウマ息子」たちが見たくないかと言われれば嘘になる。上記のさまざまな理由から他のコンテンツのように「ウマ娘」から派生して名馬たちが「ウマ息子」になることはちょっと考えにくいが、キングヘイロー少年が高松宮記念を勝ち獲るまでの激熱ストーリーを妄想するなどしてウマ息子たちには脳内で私を楽しませてもらうこととしよう。

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