見出し画像

「どーっちどっちの歌」誕生秘話

百鬼あやめさんの「どーっちどっちの歌」が世に出てから、今日でちょうど3年になります。

2020年5月に投稿された本曲は、その半年後には本人に捕捉され、

翌年にはホロライブさんから公式に楽譜が発売され、

ついには2023年にリリースされたオリジナル曲「かわ世」の歌詞の一部にも使われたりと、とんでもない進化を遂げました。

今やお嬢の代名詞の一つとなってしまった「どーっちどっちの歌」、今回はその3周年ということで「誕生秘話」と題して制作の裏話をしていきたいと思います。

作曲のきっかけ

2020年4月。当時の私は高校2年生でした。
新型コロナによる休校でステイホームを余儀なくされ、ピアノを弾いたりYouTubeを見たりして暇を潰していました。
切り抜き動画などから徐々にVTuberにもハマりつつあった時、偶然にも目に止まったのがこちらの動画。

見てもらえばわかりますが、開始1秒で「どーっちどっち」って歌ってるんですよね。この切り抜き動画があったからこそ本曲が生まれたのは言うまでもないです。

(2024年3月追記)
こちらの動画、執筆時は残っていたんですが、現在は残念ながら非公開となってしまったようです。

さらに、これを素材にして曲を作ってみようと思ったのは、あるコメントがきっかけでした。

コメント欄より

これを見て「じゃあ作ってみよう!」と思い立ったのが作曲のきっかけです。

いざ作曲へ

「鉄は熱いうちに打て」ということで早速ピアノの前に座り、弾きながら考えたフレーズを五線紙に書き留めました。
余談ですが(余だけに)、検索すると「どっちどっちの歌」という表記をたまに見かけますが、正しくは「どーっちどっちの歌」です。お間違えなく。
それはさておき、こちらが作曲時に書いた「どーっちどっちの歌」の原譜になります。

「どーっちどっちの歌」原譜

はい。というわけで、

「どっちどっちのうた」って書いてあるやん!!!

投稿時に今のタイトルへと落ち着いたわけですが、当初はこの表記だったんですね(自分でも忘れてました)。
というわけで何が言いたいかというと、タイトル表記については、極論どっちでも構いませんよ!
作曲者自身も表記が曖昧だったわけなので、もはやどっちもどっちです。

こうしてイントロが出来上がりました。
右手のリズムは「どーっちどっち」のリズムそのまんまです。続く伴奏部分は童謡をイメージしてます。「幼稚園で歌ってそう」みたいなコメントもいただきましたが、まさしくそんなイメージです。
楽譜に起こしたのは先ほどのイントロだけで、残りはコードだけ決めて適当に弾きました。それなので楽譜出版の話が来た際は、慌ててちゃんと清書した楽譜を用意した記憶があります。

構想が固まったので、あとは実際に演奏するのみです。
お嬢の声をイヤホンで聴きながら演奏し、それをレコーダーで録音しました。

録音に使ったピアノ

その後、パソコンでピアノと声とミックスしたら完成です。
仕上げに動画編集ソフトで字幕を入れたりした後、2020年5月7日にYouTubeとニコニコ動画にそれぞれ投稿しました。

公開当初はニコニコ動画の方が反響が大きく、一晩で40件以上のコメントがつき、その大部分が「かわ余」だったのを今でもよく覚えています。
YouTube上で伸び始めたのは、およそ半年後の11月からです。

派生作品

このように生まれた本曲ですが、いくつか派生作品が生まれました。
せっかくなので、それぞれ軽く紹介します。

1. お誕生日バージョン

2020年のお嬢の誕生日に合わせて作ったものです。
どーっちどっちとハッピーバースデーを組み合わせてみたんですが、コードがわりと被ってたのでアレンジは上手くいきました。演奏については左手がなかなか安定せず、たくさん録り直した記憶があります。
あと、マイクを買ったので音質が少し向上してます。

2. Pan Piano さん

知る人ぞ知るセクシーピアニスト、Pan Pianoさんによる弾いてみた動画です。ホロメンの曲もよく弾かれてますよね。
足に目が行きがちですがとにかく素晴らしい演奏です。あらゆる点で完成度が高いのはもちろん、Pan Pianoさん独特の強弱やアーティキュレーションも相まって、よりいっそう可愛らしい音楽になっていると感じました。

3. THE FINAL

「どーっちどっちの歌」シリーズの最終作として制作したものです。
これまでにお嬢本人や他のホロメンが歌ってくれた素材を集結させた集大成です。伴奏も今回は腕が3本以上ないと弾けなかったり、途中で2回も転調したりと、持てる編曲技法をすべて駆使しました。
間奏では、お嬢が参加しているオリ曲として01:18からは「Suspect」、01:25からは「百花繚乱花吹雪」のメロディがそれぞれ使われています(当時はまだ「宵の余、良い!」が出る前でした)。
気づかれないようにオマージュを入れるというのも、アレンジの醍醐味だったりします。

4. ばーうばうの歌 (2024年3月追記)

まさか2024年になっても派生作品が生まれるとは思っていませんでした!
かわいい成分が飽和しており、破壊力が凄まじいです。地味に伴奏の繋ぎが上手いのが、作者的には関心したポイントです。

5. メロンのうた (2024年3月追記)

番長のスイカゲーム配信から生まれた曲です。
直接は関係していませんが、「どーっちどっちの歌」を通して培った土台が無ければまず作れなかった曲なので、追加してみました。どーっちどっちを超える動画を作るのは果てしなく高い壁ですが、本作は個人的に同じくらいかわいい曲に仕上がったと思っています。
知らなかった方はぜひ一度聞いてみてくれると嬉しいです。

おわりに

個人的に、音madは料理みたいなものだと思っています。
食材は人の手が加わることでことでいっそう美味しくなります。もちろん、食材のままでも食べられはしますが、調理したり、別の食材と組み合わせることで全く新しい味わいが生まれますよね。
それは、音madでも同じです。
すでに魅力的な素材でも、それを編集してリズミカルにしたり、音楽と組み合わせたりすることで、新しい魅力が発掘できます。

「どーっちどっちの歌」を料理に例えるなら、私は寿司だと思ってます。
当時の私にはまだ調理(編集)技術が十分ではありませんでした。素材の音程や長さを変えるなど器用なことはできず、せいぜい「良い素材を選んでカットする」のが精一杯でした。
しかし、それがかえってよかったのです。なぜなら、元の素材がすでに手を加える必要ないほど洗練されていたからです。
こんなことを言ったら職人さんに怒られますが、寿司って結局は魚を一口台に切って、それを酢飯の上に載せただけの料理とも言えます。でも、美味しいですよね。それはやはり、載っているネタが新鮮で、生のままでも味わい深いものだからです。
「どーっちどっち」というお嬢のつぶやきは、この上なく新鮮な"ネタ"でした。そして、私が童謡をイメージして作ったシンプルなピアノ伴奏も、そんな"ネタ"の風味を損なわない、素朴な"シャリ"としての役目を十二分に果たしてくれました。シンプルな歌に対して伴奏があまりにも豪華だと、もはやどっちが主役だかわからなくなってしまいますから。
そして、そんな二つの要素が組み合わさったからこそ、まさに寿司のようなシンプルで味わいのある一曲が出来上がったのではないでしょうか。

また、一貫だと寂しい寿司でも、たくさん並べると立派なものになります。
とすると「どーっちどっちの歌 THE FINAL」は、いろんな"ネタ"が集結した、特上寿司のような一曲と言えるかもしれませんね。

さて、というわけで「どーっちどっちの歌」について語ってきました。最後はもはや何の話か分かりませんが、語りたいことは語れたのでこの辺で筆を置きたいと思います。

「どーっちどっちの歌」投稿から3年。この曲はずっと私の音楽活動を支えてきてくれました。
本曲を聴いてくださった多くの皆さん、そしてお嬢に、心から感謝します。

ではまた!

くみゆき進

(2023年7月13日追記)
なんとホロライブ公式さんがMVを作ってくださいました!
ぜひご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?