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官民共創による事業開発の進め方〜ワークショップで設計する、実証実験の要件定義〜

「実証実験疲れ」という言葉を、自治体からも企業からも耳にするようになりました。なぜそうなってしまうのでしょう。

それは、自治体と企業との出合い方のデザインに加えて、実証実験がきちんと要件定義されていないことも大きな要因であると考えます。


1.     自治体との実証実験をデザインする「逆プロポ」とは

ソーシャル・エックスの「逆プロポ」とは、通常の公募プロポーザルのベクトルを逆にし、企業が社会課題を提示し、それに関心ある自治体が手を上げて、官民一体になって、社会課題解決型ビジネスを共に創り出す仕組みです。2021年には、そのビジネスモデルがグッドデザイン賞も受賞し、特許も取得しています。詳しくはこちらのレポートをご覧ください。

企業主導の社会課題解決
~「逆プロポ」を事例として~
https://www.sompo-ri.co.jp/2024/01/15/10950/

SOMPOインスティテュート・プラス

2.     逆プロポの手法を用いた、実証実験設計ワークショップ

逆プロポは、自治体と企業の出合い方をデザインし、自然と共創が生まれる仕組みとなっています。実は逆プロポを募集する前がポイントで、どのような実証実験を行うか、非常に丁寧にディスカッションを重ねて進められています。募集によっては、企業の方の納得がいくまで、数ヶ月かけているものもいくつかあります。

今回、逆プロポにて募集の前に丁寧に行われているディスカッションを体系化したワークショップを開発しました。このワークショップを通して、逆プロポで募集前に行われている要点の整理を効率良く行い、自治体との実証実験の要件定義の大枠を固めることが可能となりました。

このワークショップでは、官民共創による事業開発の基本について、参加者同士で学び合いながら自社のビジネスを新たな視点で深堀りし、事業の発展に結びつくと同時に、自治体にも意義を感じて頂ける実証実験を設計していきます。

この手法は、私が前職にて、大企業経営幹部向けに、ワークショップを通して経営戦略を練り上げたり、経営理念を浸透させる等の研修を実施してきた経験を元に、今回新たに開発したものです。

ただ要件定義を行うだけではなく、マインドセットや共感形成のデザインなども大切な要素として組み込まれているのが特長です。

3.     東京SUTEAMにおけるスタートアップ支援

このワークショップは、東京SUTEAMの協定事業者としてソーシャル・エックスが実施する、ソーシャルXアクセラレーションプログラムの一部として開発しました。審査に勝ち残った社会課題解決型の事業を展開するファイナリスト15社に向けてワークショップを実施し、メンタリングを通してブラッシュアップしたのち、選ばれた2社に逆プロポを実施いただきます。

ワークショップ冒頭の様子

4.     ワークショップ参加者の声

今回、東京SUTEAMでの弊社アクセラ第1期生である15社の皆さんにワークショップを実施し、様々な反響をいただく事ができました。その一部をご紹介させていただきます。

参加者の声
・話を聞くだけでなく、実際に手を動かせたのがよかったです。他スタートアップの事例や皆様の議論を聞けて自分の解像度もあがりました。
・自治体連携を具体的に考える中で、考え切れていない部分がよくわかりました。
・これまでの自治体連携の経験から自身が考えているベストな形に対する解像度が高まり、客観的に自社の事業のソーシャルインパクトについて考えるきっかけになりました。
・改めて自社が何を解決したいか、どうなりたいかを考えるきっかけになりました。
・普段の事業では、財務リターンの話が主なので、戦略リターンの側面からアプローチすることで、いつもと異なる視点で考えることができた。
・凝り固まった自社のサービスに対して「自治体に対して」という主語が統一された状態で思考できたことは非常に有意義だった。
・こんなに時間をかけて深堀りをしたことはないので、新たな視点が芽生えた。
・具体的実証のイメージを考えさせられるきっかけになりました。他社の話も聞くこともアイデアも参考になり、良い時間でした。
・自治体連携を具体的に考える中で、考え切れていない部分がよくわかった。
・自治体と実証実験を行うイメージが具体的になった。
・言語化することで、やるべきこと不足していることが明確になった。

ワークショップ後アンケートより

5.終わりに

これまで手を付けられてこなかった社会課題を、ビジネスで持続的に解決する。日本で生まれたそのビジネスが、世界に発信され、新しい当たり前として広がっていく。

ソーシャルXアクセラレーションを通して、そんなビジョンを共有出来る仲間が、次々と繋がっていく世界を思い描いています。

今回のワークショップを設計する際、「ビジョンを共にするコミュニティを作る」ということを大切にデザインしてみました。終了後に設けた交流会にどれだけの方が残って、我々と、ではなく、参加された方同士が「もっと話してみたい!」と思って頂けるかどうか。

今回、5社ずつ3日間に分けてワークショップを開催しましたが、3日とも、終了後の交流会にもほとんどの皆さんが残ってくださり、和気あいあいと楽しげに盛り上がっている様子をとても嬉しく眺めていました。

5月の最終審査では、この5社ずつの輪が15社に広がり、オブザーバーで参加される皆さんとも、このような共感の輪が広がっていくことを楽しみにしています。

ワークショップ後の様子(渋谷ヒカリエ)

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