見出し画像

GLORY DAYS感想

GLORY DAYS。オリジナルミュージカルで久々に心に刺さる作品だった。
キャストを入れ替えて4つのチームが作られたこの作品で、わたしがとりあえずSouthを観劇しようと思ったのはここ何年か観てきている矢田さんが居ることと、他作品で見ていた加藤将さんが揃っていて、そのふたりが一緒に板の上に居るところを見てみたかったからだった。

アルジャーノンに続き今回も席運が良く、最前に座ったため一番最初の観劇は怒涛だった。
ご本人も言っていたけれどとにかく今回の博品館劇場でも矢田さんはずっと板の上にいて歌っていたし、M3のときにはもう汗だくだった。毎回思うけど最前は観劇というより、矢田さんを浴びるような感覚に陥る。
わたしは矢田さんの姿と声と演技がとても好きなのだが、それを思う存分堪能した。
特にM9、『After All』のスポットライトが当たって後ろのスクリーンに横の姿の影が出るところが最高に素敵だった。頬に落ちる睫毛の影、スクリーンに映る鼻筋が印象的な輪郭、本当に外国の少年っぽさがある髪のウエーブも綺麗にシルエットになっていて、美しいひとは影まで美しいんだなあと惚けた。
作品一番最初の印象は、『聴きやすいけど曲がめちゃくちゃ難しい』。ストーリーはあらすじから何となく予想していた通りのものだった。だからといって心が乱されないかというとそうではなく、エリックくん演じるジャックの吐露から巻き起こる4人の感情の揺れの波に最前だからこそ溺れるほど呑まれた。エリックくん、わかっていたけど歌がめちゃくちゃ上手い。
微笑ましかったり、胸が熱くなったり、ハラハラしたり、そして最終的に感情のぶつかり合いで、元に戻れなくなった関係性に悲しくなったり。
Southを観て最終的に感じたのは、この4人はもう『4人』には戻れないんだろうな、という印象だった。
Southの4人は、ウィルは自分のことをまとめ役だと思っているけど実際は他の3人(特にアンディ)がウィルに合わせてやっている印象が強いし、アンディは自分がバカにされるのは嫌だし、4人の中で唯一大学を楽しんでたけど、昔は心地よかったから来てくれた感があって、スキップはみんなを俯瞰していて、今回は仲間だと思っていたから来てくれたけど、アンディに対してはほとほと呆れてる様な感じも受けたし、ジャックはアンディに対して悲しみを感じていて、何より強く怒っているからもう一生許さない、という様にみえた。
後で元吉さんのツイートを見て、Southは破壊力なるほど……と思ったけど、その意味がわたしが受け取った意味と合っているかはわからない。

それからキャスト各々が配信やツイートでどういう稽古をしていたか、とかダブルキャスト同士がどんな風に話をしたかなんていう裏話を聞いたり、プログラムを見たりして、これもしかして演じるキャストと組合せによって話の印象が全然違うんじゃないか? と気づき、面白〜! とようやくこの作品が8人4組の展開で動いている意味を知った。

わたしはその後Westを配信で観て、Eastを劇場で観たけれど、気づきの通り、本当に印象が全然違った。
話だけじゃなく、キャラクターの印象も全く違って驚いた。キャストの話すところによると、どうやらその日の互いの感情によっても変わってくる様で、凄く懐の深い演出方法だな〜と感じた。
何回観ても感じ方が違うなんて凄く面白いけれど、そういう風に作っていい作品は凄く少ないんじゃないかと感じるし、少なくともわたしは今まで見たことがなかった。
役者たちも難しさはあっただろうけど、自分たちの中で練られるものが多い分、その役の背景を自分の今までの経験から肉付けしたり、ダブルキャスト互いで相談したり、もしくは相手が持ってくるそのキャラクターの表現を見て参考にしたり出来るのは、何より楽しかっただろうなーと思う。
GLORY DAYSの座組自体、キャリアも年齢も国も違ったりする8人が凄く仲良くなっている印象があったけれど、各々違うけど芝居が好きで、それについて考えるのが好きな8人だった様に見えた。役者たちが互いにリスペクトがあって認め合っているんだなと端々に感じるのは、わたしにとっては、いい作品を安心してみることが出来る材料になるし、更にその作品も好きになってしまう。

West、Eastの配信も何回か観て、本当にキャストの演じ方がそれぞれ違うなと感じ、残しておきたくなったので、書き記す。


矢田ウィル
4人の中ではリーダーと言っているけど、3人がウィルに付き合ってリーダーにして貰っている感が強かった。(もちろん3人も一緒に居て楽しかったからという前提)
友だちとの付き合いかたがわかっていなそうだし、本当に3人しか友だちが居ないんだと思う。
たぶん昔からアンディに対して甘えがある。矢田ウィルと風間アンディは時折子どもと母親みたいな関係に見えたし、矢田ウィルはそれを無意識にアンディに強いてるようにみえた。
矢田さんがアルジャーノンを経ている影響が凄く出ているのか、わたしにその印象がこびりついてるのか、M9のウィルの孤独が際立っていたし(人形〜の歌詞の、手で人形を表現してるところがウィルの心の幼さがまろび出ていて胸が締め付けられた)それ以降ずっと孤独と寂しさがウィルから露出していて痛々しかった。(でもわたしはそれが凄く好きだった)
ハンナとはまだご飯しか行っていなそうだし、いずれハンナから振られそう。あと本当に大学でモテてなかったし人と付き合ったりしてなかったんだな……というのをジャックを抱きしめて撫でるシーンで強く感じた。動揺してるということを差し引いても抱き締め方が物凄くぎこちなくて、でもこれが矢田さんの演じるウィルなんだよな〜と理解があった……

日野ウィル
歌がめちゃくちゃ上手い!!!!ユニゾン、一番聴きながら歌ってる感が強かった…!
リーダー! って感じで明るさがめちゃくちゃ強い! 陽!!!!
子どもの時は友だち居なかったかもしれないし、この3人は一番の親友だけど大学でもそれなりに友だちは居たんだろうなって感じだった。
日野ウィルと石賀アンディは4人の中で一番バカやってた2人! って感じで気軽で安心感があった。アンディに黙ってろっていう時も「俺のため」は文字通りの意味じゃなくて『4人のため』が「俺のため」なんだというように聞こえた。
ハンナとは付き合ってるんだなと思ったし、最終的に結婚してみんなを結婚式に呼びそうだし、その時には揶揄われてもハンナの良いところをたくさん上げてくれそう。
ジャックを抱き締めるところ、物凄く温かみがあって『ひとと心と身体を交わしたことのあるウィルだ〜』と思ったしここにも陽を感じた。
日野ウィルは最後スプリンクラー浴びた後その足でアンディの家に行って「見てくれよこれ! 俺が濡れビーバーになっちまった! ははは!」って言いそうなくらいとにかく陽の雰囲気があった。(矢田ウィルは歩いて家に帰り黙ってシャワーを浴びてそう)

加藤スキップ
皮肉がわからないって言うくらいストレートな感情表現の加藤くんなのでスキップのキャラの印象がなかったけれど、関係性を俯瞰で見ているような印象も強くて、でも加藤くんの本質が覗く仲間想いというか愛のあるスキップだったように思う。
割と最終シーンの気持ちが時々によって違う印象があって、Southのときは「元に戻るよ」と言いつつも無理そうだな……と思ったし、スキップ自身もそう思っているような印象だった。
楽日のEastスキップの「元に戻るよ」はとっても優しくて愛に溢れてるように感じたのが、何となく加藤くんのこの作品への惜別とか愛とかも感じて寂しい気持ちもありつつ、微笑ましかった。
車に乗らないと言ったウィルにビール瓶を置いていくのが凄く『愛』を感じたし、優しさだよなあと思う。
加藤くんが自分のラジオでたくさんスキップを作る上での裏話をしてくれたので、それを聞いて改めて配信を観るとまた少し印象が変わったけど、でもその設定だとしたら絶対にスキップはまたみんなの元に戻ってこないといけないと強く思った。後悔するのはウィルもそうだけど、アンディが一番後悔すると思うし、ジャックも自分を責めるだろう。
あとみんなに自分のグッズをあげてたのと、バスタオルが楽屋暖簾になってたの本当によかった。
この座組みが加藤くんのオリジナルミュージカル作品一本目で本当に良かったな〜と思うし、加藤くんの真っ直ぐさと真面目さとパワーでこれからもどんどん吸収していくだろうし、その成長をみたい。

ルークスキップ
加藤くんと一緒にスキップを作ったという話を加藤くんのラジオで聞いて、ブランクはあるけどベテラン枠のルークさんとオリジナル物ほぼ初めての加藤くんが一緒の役になったの、相性良かったなーと感じた。
家庭のあるルークさんの作ったスキップの背景、ルークさんにとっては加藤くんとは重さが違うんだろうなと思ったし、加藤くんの持つスキップの『愛』はまだ名前のない愛の様に見えたけど、ルークさんは『家族愛』に見えた。だからこそスキップの俯瞰の視線とかM8の『無気力世代』も周りを責めている様に見えて一番責めているのは自分を、という印象も受けた。
ルークスキップの「愛してるぜ」の言い方が本当に優しくて、矢田ウィルにとっての救いだなあと思う。
忍び込んで鍵を取りに行こうとスキップが言い出すってところ、ふざけ合いたいっていう気持ちよりウィルのために何かしたいとかスキップ自身、バカ出来る最後の機会と思ったのかなーと考えたりした。
ルークさんがみんなに作ってくれたキャップが本当に可愛くて座組の仲の良さを感じて良かった!

風間アンディ
自分が筋肉バカなのにフットボールが兄弟の中で一番下手なこと凄く気にしてそうだし、そういうのをこの4人の中で高校時代ネタにされてたの気にしてたんだな……と感じた。
でもそういうのが気になることより高校時代は4人で居るのが心地いい方が勝ったから一緒にいたし、今回だけじゃなく過去にもウィルの頼みを呑んだりしてそうに見えた。妹が居るから、頼まれると一旦受けてしまいそう。
大学で楽しくて今回も過去の話より今が楽しい! みたいな話をしようと思ってきたのかな〜という印象があった。
ジャックの告白を受け入れられなかったのは、風間アンディはマッチョな家庭環境で育っているからそういう人間を受け入れる土壌が心になかったのと、何よりジャックが自分たちに隠し事をしていたという寂しさとかショックが全部心の中で混ざって整理できずにいたのに、それを言語化するだけの言葉が自分の中になかったんだな……という風に見えた。なのにウィルに「黙ってろ」と言われたりウィルに暴露されてたり……1番可哀想に見えたのが風間アンディだった。

石賀アンディ
歌が上手いのも演技が上手いのも知っていたけど、改めて『歌うめ〜〜〜』って思った……本当に言葉が聞き取りやすい声質をしている。
風間アンディよりも筋肉『バカ』を感じた……石賀くんはLikeA、怪人と探偵、スーパーヒロイズムでみてるけどどっか吹っ飛んでる人が上手い。
ウィルとの関係性も矢田ウィルと風間アンディは子どもと母親っぽかったけど日野ウィルが太陽で真っ直ぐで、石賀アンディが正しくバカだったから『悪友!』と感じた。
M15の『俺の番だ』の叫びながら歌うのがめちゃくちゃ凄い! あれだけ怒って叫んでちゃんと歌うことが出来るのびっくりした。
石賀アンディは色々考えて、わかんねーことは多いけど悩むのは向いてねえ! って1週間後くらいにジャックに謝りに行きそうだしエリックジャックへは謝ったのに喧嘩しそう……木戸ジャックは一生懸命謝ったら条件付きで許してくれそう。

木戸ジャック
繊細かつ愛のある木戸ジャック……。
理解されないこともあるっていうこともわかっていたと思うし、この結末も予想してたのかなーと感じた。でも予想はしていても実際目の当たりにするとショックだったろうし……。
あと木戸ジャックはアンディのことが今も好きなのか、好きだったのかな……と思うくらいアンディに対しての想いを感じた。
M14『人間のルール』も怒ってるし悲しさを感じたけど、それでもアンディに対して何か残したいって想いみたいな物があるのかなと思ったし、最後の別れの「友達を無くすぞ、たとえば僕を」も自分がいなくなることでアンディは許されないことをしたんだと気づいて、そして他の人にはこんなことをするな、というジャックが残せるアンディに向けた最後の愛みたいなものを感じた。(でも風間アンディはこうなったことを関係が元に戻らない限り一生後悔すると思うけど、風間アンディはめちゃくちゃマッチョな思考な気がするから自分から謝りにはいけなそう)

エリックジャック
エリックくんマジで歌が上手い!!!!
これからも加藤くんと良い関係でいて欲しい。
エリックジャックは怒りがめちゃくちゃ強いジャックだった。
M14、木戸ジャックは怒りより悲しみが強かったけどエリックジャックは悲しみより怒りが強かった。この後例えばアンディに謝られても絶対許さないんだと思う。風間アンディは自分ら謝られなそうだから、Southは本当に解散!! っていう印象だった。石賀アンディは謝って喧嘩して殴り合って結果分かり合いそうな気もするし、仲直りしたらジャックの立場が強くなりそう。


長くなってしまった……。
でも同じ作品、同じキャラクターでこれだけの違いを感じさせてくれたGLORY DAYSという作品を観れたこと、本当によかったなーと思うし、わたしはこれからも何度もこの作品のことを反芻するんだろう。
あと、博品館劇場、多分楽屋数、今までの公演見ていると最低3つくらいはありそうな気がするのに2人ずつとかじゃなくて4人がみんな同じ楽屋だったこともこの関係を作るための意識的なスタッフさんの配慮だったのかな〜と思って嬉しかった。あと日野さんも矢田さんも楽屋暖簾持っているだろうに、楽屋暖簾が加藤くんのバスタオルなのとか、いじられてたのもほんと良かった。高校生男子たちだな〜と微笑ましさがあった。
このご時世で親友の設定として仲を深めることは凄く難しいだろうから、8人の稽古だったり、楽屋だったり、それからそれぞれが電話しあったり話し合ったりふざけ合ったり出来ていたことは、キャスト同士の年齢差含めた相性の良さとかもあったんだろうけど、スタッフさんの配慮もきっと影響していたんだろう。改めてこの作品を大事に作ってくれて届けてくれた、GLORY DAYSというチームに感謝しかない。

家に帰ってブックレットとフライヤーを改めて見ていて、このビジュアルは彼らの『GLORY DAYS』だったころなんだろうなとふと思って、フライヤーが置かれたときから、わたしたちの中にももう物語は始まっていたんだなあとエモい気持ちになったりした。改めて素敵なデザインだ。


作品としても面白いのはもちろん、自由度が高くて何度見ても楽しめるということもあるから、今度は12年後とは言わず、出来たら近い年月で色々なキャスト、演出など色んな組合せでみたい演目だなと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?