(75)レスパイト入院②

入院の日は、義父母には定期的な通院だと話をしていた。義父は私のことがわかっている状態だった。私は義父を車に乗せ、義母には留守番してもらい、入院先の病院に向かった。夫は入院手続きが終わるまでには必ず間に合うように行くと言って朝から仕事に向かっていたが、私の車とほぼ同時に病院に到着。3人で入院受付へと向かった。義父は初めての病院であることもあまりわかっていないようだったが、夫がきてくれたことで安心したのかご機嫌になった。書類を書いたりコロナの検査をしてもらい、診察室へ通された。そこでは、先生から義父の認知症についていろいろ聞かれ、私と夫は非常に喋りづらかった。何しろ、義父は自分のことを認知症だとは思っていない。仕事に行かないといけない、家に帰らないといけない、だから出発してるだけ、なのだから。徘徊に行く、とか、徘徊すると帰ってこれない、など家族と医者が自分の前で話をしていても、まさか自分のこととはわからない。それなのに、お医者さんは、「1人で外に出て帰って来ないのはご自身の意思ですか?なぜ帰って来ないのですか?物忘れで困っているのはどんなことがありますか?」など、本人にしてみれば失礼極まりないというような質問をいくつか義父にしていた。お医者さんはそのときの義父の反応を見ているのだろうか。どれぐらい覚えているのかな。覚えていないのかな。というところを見ているのかな…。とにかく、私と夫は義父が怒り出すのでは…とビクビクした。診察が終わり、家族のレスパイトという意味も含め、入院ということに。この病院には、精神科と認知症科があるようで、義父は認知症病棟での入院になった。認知症病棟のフロアに上がり、エレベーターが開くと、そこにはガラスのドアがあり、入院患者さんの姿が見えた。義父は看護師さんに連れられてドアの向こうに連れられて行ったが、嫌な予感はしているようだ。「家族と帰りますので」と連呼している。夫と私のことを家族と認識しているのか…つらいなあ…。夫は私の数倍つらいだろう…。帰ります、と繰り返す義父をなだめるために、看護師さんが最後にもう1度ガラスのドアを開けて義父と会話させてくれた。「まだ検査が残ってるから。きちんと検査して、治療がいるところは治療しよう。そのために来たんやで。今日はここで泊まらせてもらうことになったから。布団も用意してくれてる。」なんでや…と、つらそうな顔をする義父に、夫は「オレが頼んだんや。1度検査してみようや。」義父は、困ったような顔をしていたが、看護師さんが、お部屋を見てもらいましょうか!と言って連れていってくれた。義父、初めての入院生活が始まった。


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