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「Scary」と「Scared」 〜ハロウィンにまつわるエトセトラ⑨〜

2004年11月6日の日記。
米国ヴァージニア州の片隅にある日系企業の現地法人で、日本人駐在員である「ぼす」の元、秘書兼通訳兼「やっかいごと よろず引き受け業」的な何でも屋さんとしてお仕事をしていた頃のお話。
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ハロウィンはとっくに終わってとっくに忘れ去られてしまい街はすっかり感謝祭やらクリスマスやらに向けて浮き足立っているけれど、あとひとつだけ書いておこうと思うのである。

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上の画像は ここ(ハロウィンにまつわるエトセトラ⑦) にも出てきた暗闇で光るという「骨々手袋」だが、「Time to be Scary?」とあうタイトルに使ったSCARY(すけぁりぃ)とSCARED (すけぁ(ど))の違いについて。

英単語SCARE (すけぁ)は、「(~を)こわがらせる」という意味の動詞である。

He is trying to scare us.

と言えば、「彼は私達をこわがらせようとしている」とう意味。

で、問題のSCAREDSCARYだが、こっちは
両者とも形容詞。ただ、意味が全然違ってきてしまうので使用時には要注意なのだ。(※註:前者は受動態の一部という声も聞こえるけれどここでは敢えて「形容詞」扱いすることにする)

I'm scared.

ならば「私、こわいわ」で、動詞SCARYの過去分詞形の形を取っていることからもわかるように、この「私」は受身の被害者、つまり「誰か」或いは「何か」によってコワイ目にあっているのである。

そう、「私」はこわがっているのだ。

これに対して

I'm scary.

も「私、こわいわ」と訳せないこともないが、こちらはただ単に「私、こわいわ」と言うよりも「私、こわいわよ」とか、「オレってこわいぜ」としたほうが、意味的にはっきりするだろう。

そう、つまりこちらの「私」は、言ってみれば加害者。相手をコワイ目にあわせる側にいるのだ。

"Time to be Scared"と"Time to be Scary"は
一見とっても良く似ているけれど、ハロウィンの時期がやってきたことを受けて、前者が「コワがる時」、コトバを変えると「コワ~イ時期だよ」って意味なのに対して、後者は「(自分自身が)コワくなる時」、つまり「おどかしちゃうぞぉ」的な
意味合いを含んでいるのである。

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こちら、「ハロウィンにまつわるエトセトラ⑧」の「死神さん」ヅラなしヴァージョン。この姿を見てコワがった(SCARED)のは TRICK OR TREATでお菓子をもらいにきた子供達、コワがらせた(SCARY)のは仮装していたワタシな訳だ。

似た組み合わせではTIRED (たいゃあ(ど))とTIRING  (たいゃりん(ぐ))とかEXCITED (いくさぃてぃっ(ど))とEXCITING(いくさぃてぃん(ぐ))とか。

前者・後者ともそれぞれ動詞TIRE (たいゃあ)「疲れさせる」EXCITE (いくさいと)「興奮させる」の変形ヴァージョン。そして形容詞。そうそう、「退屈させる」という動詞BORE (ぼぁ)の変形ヴァージョンBORED(ぼぁ(ど))とBORING(ぼぁりん(ぐ))もこの仲間に入る。

違いは末尾にEDがついた動詞の過去分詞形をしているかINGがついた現在進行形の形をしてるかってこと。つまり、前述のSCAREDと同様、主語にあたる人物は受け身で「ある状態にさせられている」という訳だ。小難しい文法用語による解説はさておき

I'm tired.

は「私は疲れさせられた状態だ」、つまり「私疲れたわ」であり

I'm excited!

は「私は興奮させられた状態だ」、つまり「私ワクワクしてる」ということ。そして

I'm bored.

ならば「私は退屈させられた状態だ」、つまり「私、飽きちゃった」という意味になる。

これに対して

This job is tiring.

ならば「この仕事は疲れさせる」、つまり「疲れる仕事だぜ」であり

This job is exciting!

ならば「この仕事は興奮させる」、つまり「ワクワクする仕事だぜ」となり

This job is boring.

ならば「この仕事は退屈させる」、要は「つまんねぇ仕事だぜ」となる訳だ。

つまりこれらははEDがついて「受け身である状態にさせられる」形容詞群、SCARED, TIRED, EXCITED, BOREDに対し、対象者を「ある状態にする」加害者側であることに注意。

上記例文では主語に当たるモノ(=この仕事)が、対象者であり発言者である人物を疲れさせ、興奮させ、そしてまた退屈させる原因になっているということ。

This job is boring (この仕事はつまらない)、だからこそ、結果としてI'm bored (私飽きちゃった)になる訳だ。

勿論、INGがつく加害者側は「モノ」である必要はなく「人物」でも構わない。

He is tiring and boring but sometimes
very exciting!

であれば、「あの人ってさぁ、とっても疲れるし退屈な男だけど、時々とってもわくわくさせてくれるのよねー」ってことだ。まぁ、実際こんな男性が実在するかどうかはさておき。

「私、退屈してんの」って言いたいのにうっかり

「私ってつまんない人間だからぁ」

なんて口走ってしまった人間が実在するのは事実なのである...。

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