Be Prepared？？？

2005年3月8日の日記。
米国ヴァージニア州の片隅にある日系企業の現地法人で、日本人駐在員である「ぼす」の元、秘書兼通訳兼「やっかいごと よろず引き受け業」的な何でも屋さんとしてお仕事をしていた頃のお話。
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諦めも肝心なのである。
(これまでのお話は こちら から)

「ぽんこつ」君の窓ガラスを叩いたのはAAAのトラック運転手ではなく。アパートの駐車場で待機してくれていたナカガワ氏だった。

「時間もだいぶ経ってるのにクミさん戻ってこないし、どうなったかなーと思って。」
そう言ってにっこりしたナカガワ氏の笑顔にちょっとだけ救われた気分になる。とりあえず助手席に乗ってもらって、これまでの経緯を説明するワタシ。

「あー、そりゃ間違いなくメシ食ってますね。ほら、基本的にこっちの人って休みはキッチリ取るじゃないっすか。」
苦笑いするナカガワ氏。
「クミさんもそろそろ腹減ってんじゃぁないっすか？」

ああ減っているとも！！
血糖値がぐんぐん急降下中だぞ。文句ある？？

ぎろり、と睨んだワタシを見て、更に苦笑いするナカガワ氏。とは言え八つ当たりをしても始まらないのである。ダメもとでもう一度AAAに電話をかけてみることに。

またしても機械的な「少々お待ち下さい」の後はいいかげん聞き飽きた保留音のメロディがエンドレスに流れるばかり。そろそろ我慢の限界に近づいたとき、ようやくオペレータのおねぇさんが言う。

"We were able to get hold of the driver, but he said there was a major accident in front of the truck, and the traffic was jammed.  Unfortunately, he has no idea how long it would take the scene to be cleared, but of course, as soon as the road gets cleared, he would head back to you right away"
(トラックの運転手と連絡は取れたのですが、目の前で大きな事故があって渋滞している為すぐには動けないとのことです。あいにく事故処理にあとどのくらい時間がかかるかということに関しましては現時点では不明ですが、渋滞が解消され次第、直ちにお客様の元へ向かうとのことです。

ほぉ、事故ですか。

ふざけるのもたいがいにしろと叫びたくなる気持ちをどうにかこうにか抑えつつなんとか電話を切ったワタシ。百歩譲って、仮にほんとに事故があったとしよう。だとしても、だ。こっちはもうずーっと待たされているのである。他のトラックを派遣するとか、他にも対応の仕方があるんじゃないか？そもそもワタシの方から電話をかけなくとも、運転手を見つけ次第連絡をくれるはずではなかったのか？？？

Accident, my ass!

事故だなんて絶対、嘘。
今頃ぬくぬくとメシ食ってるに違いない。

すっかり疑心暗鬼状態のワタシ。言葉使いまですっかりやさぐれてしまっている。そんなワタシを気遣ってか、ナカガワ氏が言う。
「なんか食べるモン持ってくればよかったっすね。」
えぇぃ、食べ物の話は今するな ──────。

ん？　待てよ。

もう一度ぎろりとナカガワ氏を睨みかけたワタシだったが、突如として会社のカフェテリアにある自販機でスニッカーズを買ったことを思い出した。
そうだ、そうだったよ。
もしかして長丁場になるかもって心のどこかで感じていたのか。「おなか、空くかも」って無意識のうちに予測していたのか。はっきりとした理由はわからないが、ポケットの中にはスニッカーズがふたつ。

とにかく腹ぺこだったので、ほんとはふたつともひとりでぺろりと平らげてしまいたかったが、さすがにそんなヒトデナシなことはできない。ナカガワ氏にひとつ。ワタシがひとつ。

チョコレートとピーナッツバターの甘さが、たまらない。ひたすら無言でがっつくワタシ。
「めちゃくちゃ甘いんすけど、腹へってると妙にうまいっすよね。」
ナカガワ氏も隣でもぐもぐしながら、そんなコトを言っている。

とにかくこれで血糖値は上がった。当面は空腹に悩まされることはない。ほんの少しだけど、現状が改善されたわけだ。でも、タイムリミットは刻一刻と迫ってきているのである。送別パーティの準備もあるし、ナカガワ氏だって仕事がある。このままおとなしくAAAの助けを待っていることはできない。なんてったってやつらはアテにならない。

これ以上、悩んでいてもだめだ。

口の横についてたピーナッツバターをぺろりとなめながらワタシはナカガワ氏に提案してみることにした。
「雪、掘ってみようかと思うんですけど。」

＜つづく＞
ぃょぃょクライマックスか ──────？