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#112 Noと言えないアメリカ人。アメリカの職場から見る上司部下の人間関係。

駐在でアメリカにいる時、
私の上司はアメリカ人だった。

上司の名前はJとする。
Jは、元々コンサルティング出身の
非常に頭の良くて優しい、
背が2メートルくらいある人だった。

奥さんも身長が190センチくらいあるから
2人のお嬢さんも背がやっぱり190センチ近く
あった。

私はJが大好きで尊敬していたし、
Jも私をとても可愛がってくれた。

仕事だけでなく、英語に関する質問をしても
快くかつロジカルにわかりやすく教えてくれた。
そんなJにも弱点があった。

Jの上司である人事担当副社長のBのことが
大嫌いだったのだ。
Bは身長は175センチくらい、体重は恐らく
100キロはありそうなくらいで、お腹は
はちきれんばかりに丸くなっていた。

Bは確かに人気がなかった。
傲慢で意地悪というのが主な理由だった。

Jが最も憂鬱だったのが、お昼時間だ。
Bがよくお昼ご飯をカフェテリアで一緒に食べようと
誘いに来たのだ。

そんなに嫌なら断ればいいのに、
Bが誘ってくると、にっこり笑って
"Sure"とか言っちゃって、お昼にいった。

そして戻ってきたら、
”あー、あいつは最悪だ。
今度は絶対お昼に行かない” とかいうのに
やっぱりお昼に誘われると、
”Sure”とか言ってお昼に行ってしまう。

Bから逃れるために週1、2回くらいは
私と一緒にお昼ご飯を食べていたけど
それ以外はやっぱりBと一緒だった。

昔、『NOと言えない日本人』という本が
流行ったことがあるけど、
アメリカ人こそ
NOと言えないもんなんだな
としみじみ思った。

一般的にアメリカでは上司の権限が強い。
日本のそれとは比較にならない。
部門長が予算も人事権も握っているので、
Jの場合、彼の運命はBに握られていると言っても
大げさじゃなかった。

Bのやり方が気に食わなくて、文句を言おうものなら
「嫌ならやめたら」となってしまう。
だから陰で文句を言っても、絶対に本人には
言わないし、本人の前ではほぼ絶対服従。

上司が一般的に嫌な場合のアメリカ人の
対応は
1)辞める(これが一般的)
2)さらにその上に建設的にいう。
3)ハラスメントなどは人事もいう
などがあります。

Jの場合、Bが人事トップでその上がいない。
CEOはいますが・・・・ライン上はいない。
Bも自分も人事なので、人事にはいう人がいない。
CEOにいうという手があるではないか
ということですが、ハラスメントというほど
露骨ではないこと、そうなるとロジカルに、
Bを失脚させるほどに建設的にCEOに進言できる
理由がなかったのです。

一方で、Jはその会社が好きだった。
そこで苦しんでいたのです。
Bには他にも部下は当然たくさんいたのですが、
他の部下ではなく、Jを誘ってきた。
それは、物理的に一番近いオフィスにいた
ということもあるし、BはJの頭脳の明晰さ、
穏やかな人柄をとても好んでいたように
私からは見えた。

あわれ、J。
論理的に考えると、彼には自分が辞めるという
選択肢しかない。

結局、私がいる間はその関係は変わらず
Bが誘うたびに
”Sure"と言って、お昼に行ってしまう関係は続いた。

その関係が解消されたのは数年後、
Bが退職してようやく解放されたよう。
でもその2、3年後に結局Jも会社を
辞めて引退してしまったけど。

Noと言えないアメリカ人。
アメリカの職場における人間関係は
日本人が思っている以上に政治的な側面がある。
上司次第的なところがあるから。


Jのことを思い出しながら書いていたら、
Jに会いたくなってきた。
Jは今もフィラデルフィアで元気にしているだろうか。
今度、メールを出してみよう。

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おまけの話。
昔、”NOと言えない日本人”という本が流行ったと
思うのですが、それは今はないんでしょうか?
もちろんリアルタイムで読んだことはなく
タイトルのみのうろ覚えですが、、、、
検索しても何も出てこないので、逆に
気になった・・・・・



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