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わたし日本語教師なんです

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日本語教師としての悩みや気づきについて書いたnoteのまとめです。
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#中国

仕事量と生活のバランスを考える:在中国日本語教師の日常

2月から市内のIT企業で日本語クラスを担当しています。 月曜日は自由に参加できる初級日本語講座があり、そこで毎回30名ほどの皆さんに日本語を教えています。 すべての方が毎週継続的に参加できるわけではないので、授業は積み重ね式ではなくて、毎回なにかひとつ使えるフレーズを覚えてもらうようにしています。 そして、火曜日と木曜日に少人数のグループレッスンを行っています。こちらは社員がプライベートで設定しているレッスンで、企業内の会議室を借りて授業を行っています。 参加者の熱量

中国在住日本語教師のわたしが思う、教師がマウントを取ることの理不尽さについて

世の中には、何の役にも立たないアドバイスをする人がいます。 何の役にも立たないとは言い過ぎですね。ごく一部の人には刺さるかもしれませんが、99.99%の人には役に立たないアドバイスをする人がいます。 そういった人のアドバイスには「意味がない」「通用しない」「価値がない」などの表現が含まれます。 この「○○がない」という言葉がでたら要注意です。 特に、わたしのように外国語の習得を助ける教師が、あなたの日本語は通用しないとか、その程度の努力では価値がないとか、あなたのして

中国の大学院生たちがスタバをやめてお白湯を飲むのを見て、日本語教師の仕事に不安を感じたお話

わたしのお仕事は日本語教師です。 でも、日本で日本語教師をしたことがないので、自分はきっと日本語教師としてはいびつな存在なのだろうと思います。今まで、担当した学習者はすべて中国人です。また使ったことがある教科書も「みんなの日本語」「まるごと」「いろどり」だけです。 2019年に日本語教育能力検定試験に準備不足のまま望み、当然不合格。それ以降は日本に帰ってませんので、受験もできてません。ただ、大学で日本語教育関連の授業を受け、教育実習も受けていますので、完全に無資格というわ

時短とか効率追究ではなく、成功の必殺技を知りたがる中国人のお話

先日「タイパ」について思うところを書きました。 その中で「中国人って、時短とか、効率って言葉が好きなので、タイパって概念、こちらでも流行るかもしれませんね」と書いたのですが、よくよく考えてみると、これはわたしの勘違いでした。 多くの中国人が好きなのは「時短」とか「効率」ではなくて「楽すること」です。もう少し丁寧に説明すると「得すること」です。 必殺技を知りたがる学生たちわたしは教員ですし、試験対策の日本語を教えます。 しかし、試験で高得点をとるためのテクニックのみを追

相手を傷つけるのではなく、気遣うことがアドバイザーに必要な資質

わたしの仕事はアドバイスすることです。 例えば、他の教員の授業に参加して気づいたことを伝えます。また作られたテキストや教材を確認し、意見を述べます。 意見される方も気を遣うでしょうが、意見する方も気を遣います。むしろ誰かに提案したりフィードバックする側は、アドバイス受ける側よりもはるかに時間も気も遣うべきなのです。だってわたしだって教師であり、自分を喜ばすわけにはいかないのです。 この記事で書いたとおり、少しでも偽善や欺瞞を相手に感じさせると、相手はこちら側の提案を受け

カンニングする教師たちの意識ってなに?

中国人日本語教師に日本語の教え方を教える仕事をしています。 教授法などを教えているときは問題ないのですが、演習になると珍事件がおきまくります。 例えば作文を書くという課題をだしました。主題は「地球環境を守るためにわたしにできること」でした。 25人ほどの教師の作文を確認したのですが、間違いなくオリジナルだと思えた作文は4つだけで、他はネットからパクってきたと思われる内容でした。 ほとんどの教師は「経済の発展に伴って」もしくは「社会の発展に伴って」という言葉ではじめ、続

中国語が話せない日本語教師を選んだ学生のはなし

わたしの職業は日本語教師です。 中国在住の日本人の日本語教師として、日本語教授法を教えたり、日本に留学したい学生の話を聞いて、サポートするような仕事をしています。 さて先日、出会った女子高生が「中国語を話せない日本語教師」をあえて選んだと話してくれました。 その理由は、実践的な訓練を受けられると思ったからです。 中国語が堪能な日本語教師たちのメリット中国語で日本語を学ぶことができるのは大きなメリットです。 細かいニュアンスや、用法の違いなどを中国語で説明した方が、簡

謝ったら死んでしまうと思っている人たち

中国で暮らしていると「すいません」とか「申し訳ない」と言ったら死んでしまうと思っているに違いない人に良く遭遇します。 今日もまたその手のタイプの人に出会いました。 IKEAで家具を買って、時間指定で配達を依頼しました。 午前9時から午後1時にの間に配達予定だったのですが、お昼になっても届きません。 これは1時ギリギリに持ってくるかな?なんて思ってスマホで配達状況を確認すると午後12時25分で配達完了となっていました。 わたしの住むアパートは敷地が広く、宅配ボックスが

TAKE NOTES!を読み終わって、詰め込み教育はやっぱりダメだと思った日本語教師の気持ち

今日は仕事と称してこの本を読んでいました。 この本は「詰め込み」教育を痛烈に批判し、理解を促す教育の素晴らしさを強調しています。つまり記憶する、知識を取り入れることも大事だけど、それ以上に思考すること、今取り入れた知識を過去の知識と比較して理解することを強調しています。 たしかに理解は大事です。 理解していることは基本的に説明することができます。説明できると言うことは必要な情報を記憶している、もしくは適切に取り出すことができるってことです。 ◇◇◇ わたしは日本語教

日本語教師とトレーナーは似ていると思う

今日の午前中、研修のための模擬授業に参加しました。 模擬授業を行ったのは日本語教師歴1年程度の中国人です。45分程度の模擬授業が終わった後、わたしは気がついた点などを日本語で説明します。 すると日本語がまったくわからないと不機嫌そうに言われました。 それでわたしの日本語がわからないのか、それとも日本語そのものがわからないのかと質問すると、話し言葉の日本語が理解できないという返事でした。 それで日本語教師なので日本語をもっと勉強するようにと中国語で説明するとちょっと機嫌

「日本語が難しい」と「日本語は難しい」の違いを尋ねた中国人日本語教師とのやりとりで感じたこと

どうしてなのか良くわからないことをしっかり考えることはとっても大切です。 昨日の夜10時過ぎに中国人の日本語教師から次のような質問がありました。 ・わたしは 日本語が 難しいと 思います。 ・わたしは 日本語は 難しいと 思います。 どちらが正しいですか?という質問です。 答えは「どちらも正しいが、場合により使い分ける」です。 でも、そのまま答えてしまうと、この先生はありがとうございます!と言って努力しないだろうなと思ったので「日本が難しい」と「日本語は難しい」の違

何のために日本語を教えるのか?中国人日本語教師を分類してみました。

わたしの仕事は日本語の先生の先生です。毎週のように新人が現れて、3週間ほどの訓練プログラムが終わると、ほとんどの教師は中国各地の高校へ派遣されていきます。 正直、日本語学科を卒業しているだけの中国人が日本語の先生になれるとは思いません。でも、とにかく教師が必要ですので、わたしにできることを精一杯行って、頑張ってねと笑顔で送り出すしかありません。 さて、新人教員と「どうして日本語教師の仕事を選んだ」のかを話し合うと大抵面倒臭いことになります。なぜなら日本語の教師に憧れてこの

教師とのトラブルをドライに解決する中国人学生のお話し

教師として日本人と中国人に接して、それぞれの学生のクレームの出し方がずいぶん違うって事に気がつきました。 授業の質とかに対するクレームは日本も中国もさほど多くはありません。問題になりやすいのは感情的な行き違いです。 教師も学生も残念なことに相手を選ぶことはできません。ですから当然ミスマッチが生じます。また多くの場合、教師はひとりですが学生は複数です。グループの中で階層ができてしまうこともあります。 教師も当然辛いのですが、学生はもっと辛いと思います。 さて行き違いが生

日本語教師の新人研修が好きな理由

わたしの仕事は中国人日本語教師が教えるテクニックを磨くお手伝いをすることです。 このコーチのような仕事が大好きです。 特に原石にような教師に出会ったり、今まで見えなかった可能性に気がついたりする瞬間が大好きです。 また時々、本人ですら気がついていなかった「素晴らしいこと」を見つけて、気づかせてあげるのも好きです。嬉しそうに微笑む新人たちの様子をみて、この仕事はやりがいがあるなって思います。 さて、今日トレーニングに参加していて、そんな原石に出会ったのでここでご紹介して