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現代農業と種子(タネ) (くまもとのタネと食を考える会・顧問 長野 克也)

2022年内には世界の人口は80億人に達する予想です。これらの人々は長年の人類の英知によって品種改良された農産物の品種に支えられています。現代農業なくしては世界の人口のほとんどは生存できないのも事実です。

現代の優良な品種は多収で形が揃い、美味しいものにあふれています。これは過去1万年の間の人類と植物の遺伝的多様性との戦いの結果なのです。この戦いに一応勝利した人類は大繁栄しています。

その結果、現代の農産物は生存のために必要で重要な遺伝子を消失し、人間の手厚い保護の下でしか生存できない脆弱な植物になってしまいました。このことは農業を工業製品や大きなエネルギーを消費する高エネルギー消費型の産業に変化させました。

さらに、環境の悪化や気候変動が地球規模で進行し、戦争等の社会不安が現実のものとなり、今後の食糧確保に不安な影を落としています。

これらの現状を踏まえ、我々はもう一度植物が本来有する多様な遺伝子を見直す必要があるでしょう。幸いにもそれらの遺伝子は地方品種や古典品種のタネの中に残存している可能性があります。今こそ、現代の品種からは失われたこれらの貴重な遺伝子を保存し、有効利用する時期かもしれません。

全てが失われる前に・・・・・・・

長野 克也(ながの かつや)
1955 年熊本県生まれ。東京農業大学出身(農学博士)。東海大学農学部教授(植物遺伝資源学研究室)を2021 年に退職、現在は東海大学農学部非常勤講師を務める。阿蘇の草原保全(環境省)や 恋路島の植生の保護に関する研究(水俣市)、熊本市環境保護地区指定候補地精密調査(熊本市)他多数に携わる。
タネを語らせたら日本一!の、タネを求めて世界を旅する種とり人。
“タネは動けない植物にとっての生き残り戦略”。面白くないはずがない!
2022 年より、くまたねの顧問に就任。


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