きっと。
リサイクルすることば
一眼レフ、干からびたカエル、森羅万象、髭面、宇宙、海、青天の霹靂、フリーメーソン、サイダー、台風、サムネイル、蟻の巣
「きっと。」 作:熊田健大朗
空から手が伸びてきた。
その手は海の水を少しだけ掬って空へと戻っていった。
夏の終わり、あまりにも突然のこと。
曇りの日の青天の霹靂。
でも私はあまり驚かなかった。
なんとなくそんな気がしてたから。
小学校の自由研究で蟻の巣のキットを使った時に思った。
地球も、もっというと宇宙も誰かのキットなんじゃないかって。
母は「私も小さい時そう思ってた」と笑ってくれたが
髭面で強面の父は「意味がわからん、勉強しろ」と私を肯定する事はなかった。
干からびたカエルに、生きる場所を誤った人間になってほしくなかったのだろう。
でも、私は間違っていなかった。ざまぁみろ。
少し変だからといって私をフリーメーソンと呼んだ学校の男達もざまぁみろ。
森羅万象は誰かのキットだったの。
私は海に「みんなばーかっ」と叫んだ。
一眼レフのデータを確認した。
私が見たはずの手は写っていなかった。
でも雲には明らかに手が通った丸い跡が台風の目みたいに残っていた。
私はもう一度レンズを覗いた。
夕焼けの海と空に浮かぶ崩れそうな穴が綺麗だった。
ほんとは誰かに自慢したかったけどなんだか自分だけのものにしたくて
心のサムネイルにすることに決めた。
きっと、今しっかりと夏が終わった。
残りのサイダーを一気に飲むとあまり美味しくなかった。
たぶん夏が終わったからだ。
家に帰るとNASAがどこかの星で水の存在を確認したニュースがやっていた。
私は部屋に戻り枕に顔を押し当てまた叫んだ。
「みんなばーかっ」
完
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