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さんまのスーパーからくりTVに出演していた僕の話。

タイトルの通り僕はさんまのスーパーからくりTVに出演した事がある。

あれは高校2年生の頃だった。

↑を読んで頂くとわかりやすいと思うが、その頃の僕は役者を志したものの大学進学を条件として突きつけられ燻っていた時期だった。

そんなある日、家族で食事をしながらさんまのスーパーからくりTVを観ていると「からくり映画ハリーポッターリポーター発掘プロジェクト」という企画が動き出すという告知がされていた。

日本でハリーポッターと死の秘宝が公開されるにあたってワーナーブラザーズからさんまのからくりテレビにリポーターを探して欲しいという依頼があったそうだ。

というのもご存知の方も多いと思うがこの番組には子供から老人まで面白い素人が沢山VTR出演している。

ワーナーブラザーズはそこに目をつけ依頼したとのことだった。

もちろん単におもしろ素人募集というわけではなくハリーポッターをこよなく愛する学生募集という形だ。

実際の募集要項

そんな情報をテレビで目の当たりにした僕はふと「選ばれる自信あるわ」と口にした。

それを聞いた母は「こういうのは本当に特別な子が選ばれるから無理やろ」と僕に返した。

僕はそれでムキになったのだ。


先程言った通りその頃の僕は役者を志したものの行動に移すことのできない時期だった。心の中ではなんとなく才能があると思っていたし、活動を開始すればすぐに売れると思い込んでいた。

そんな僕が母の言葉にムッとする気持ちはわかっていただけると思う。

そうして僕はインターネットで応募にあたっての概要をリサーチし人生で初めて自分の履歴書のようなものを書き、母にデジカメで写真を撮ってもらい「からくり映画ハリーポッターリポーター発掘プロジェクト」に応募した。


そして書類選考を通過したのだ。

確か家に電話がかかってきて書類選考通過を知った。

おそらく相手は番組のディレクターさんだと思うが「おめでとう」とか「1万人以上の応募の中で100人に選ばれた」とか「二次審査(面接)がTBSであるから来られるか、面接ではカメラが入ってるが大丈夫か」みたいな内容の話をされた記憶がある。

僕は母に「ほらな」と鼻高々に言うと母は「選ばれると思ってたけど」と手の平を返した。

そして後日母と東京へ向かったのだ。

TBSに着いて受付を済ませると母はどこかのカフェに消えていった。

僕はエントリー番号が書かれた紙を胸に付け「番号順に並んで下さい」という指示のもと列に入る。

実際のエントリー名札

ここで衝撃を受けたのが他の参加者が本気だということだ。

みんな自己アピールをするためにハリーポッターの衣装を着たり道着を着たりと気合が入りまくっていた。
それに比べて僕はデニムにパーカー。完全に場違い。

そんな僕を安心させてくれたのが僕の一つ前の番号の女の子。
紫色のジャージ姿でキャリーケースを持って並んでいた。

僕以外にも普通の子が居たとホッとした。
話をすると歳は僕の一つ上で岐阜から一人できたそうだ。
僕は面接までずっとその子と話をしていた。
確か五人一組での面接で僕とその子は番号が一つ違いだから面接も一緒だった。

面接スペースに向かい席に着いた時、彼女が僕に声をかけてきた事を鮮明に覚えている。
「緊張して手が痺れてきた」と。
そして彼女は「ほら」と言って僕の手を触った。


わかるわけがない。


仮に彼女の手の痺れが僕に伝わったのだとすればそれは緊張からの痺れではなく椅子に電流が流れているとしか思えない。


とはいえそんな天然な彼女に僕は少しドキッとしていたのも事実だ。


面接では「好きなキャラクターは?」、「ハリーポッターのどこが好き?」のようなテンプレ質問から始まり面白そうな回答があればディレクターさんが深ぼっていくような形だった。


ここで皆様に重大な事実をお伝えしなくてはならない。


この面接に至るまで、僕は一度もハリーポッターという作品を観ていないのだ。


思い出して欲しい。

僕がこの「からくり映画ハリーポッターリポーター発掘プロジェクト」に応募したきっかけはハリーポッターが好きだからではなく母の言葉にムッとしたからだ。

応募要項にハリーポッター大好きという項目があることからそれには違反していたと思うし、僕の枠に入れたかもしれない本当のハリポッター好きが居たことを考えると本当に申し訳ないと思っている。

書類を通過してからこの面接の日までに観て予習することもできた。しかしハリポッターは大作、死の秘宝までに6作を観なくてはいけない。
1作2時間と仮定しても12時間。後回しにした末にだらしのない僕は当日を迎えてしまったのだ。


なので面接はこんな感じだ。

「好きなキャラクターは?」
「ハ、ハリーポッターです」
「作品のどんなところが好き?」
「あの、やっぱり、魔法使うところですね」

何にも深掘りされる事なく僕の面接は終わった。


一方隣の彼女は突出したアピールはなかったもののハリーポッターが大好きだという想いをしっかりと言葉にしていた。

面接が終わり帰り際、彼女は僕に「二人とも残るといいね」と言った。

僕の面接を聞いてどこに残れる要素があるんだと思いながら彼女が天然だったことを思い出して「うん、じゃあね」と言い別々の方向に向かった。

彼女の事が少し気になっていた僕は連絡先でも聞いておけばよかったと後悔しながら大阪へ戻った。


面接の結果は落選だった。そりゃそうだ、観てないから。
落選通知とともに面接の様子が放送される日時の知らせもあった。


放送日
「写ってるかな?」「100人もいるからね」なんてたわいもない会話をしながら家族でテレビを観た。
タイトル通り結果としては写っていたのだがその理由には自分でも驚いた。


最後の一人に選ばれたのがあのジャージの彼女だったからだ。


番組としても彼女を追っていく構成になっていて僕は面接の時も待っている時も常に彼女と居たからずっと写っているのだった。

もちろん僕の声は拾われない。

「好きなキャラクターは?」
「ハ、ハリーポッターです」

なんて面白くない会話を全国放送で流すわけにはいかない。ただ彼女の横に居た。

実際のところテレビに写ったという事実よりも彼女が選ばれた事の方が嬉しかった。
後に彼女はイギリスのロケ地をリポートしに行き、出演者からのサプライズを受けたりと幸せそうにリポートしていた。

これがさんまのからくりテレビに出演(自称)した事がある僕の話だ。

あのなんだか甘酸っぱい面接の1日、ハリーポッターの魔法を知らない僕はジャージの彼女の魔法にはかかっていたのかもしれない。

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