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君が知っている僕と、僕だけが知らない君

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12月のある日小さな漁師町に一人の転校生がやってくる 幼馴染みらしいのだが、僕には彼女の記憶がない…
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君の知っている僕と、僕だけが知らない君 END

君の知っている僕と、僕だけが知らない君 END

雨に微笑みをStrolling along country roads with my baby
It starts to rain, it begins to pour君と二人で歩く田舎道。突然の雨襲われる

Without an umbrella we’re soaked to the skin
I feel a shiver run up my spine傘なんか無かったからずぶ濡れになった

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君が知っている僕と、僕だけが知らない君 ⑤

君が知っている僕と、僕だけが知らない君 ⑤

君が知っていた僕の思いと僕が知らなかった君の思い(終わるな終わるな終わるな終わるな終わるな)

頭の中で一生懸命願う。その思いと裏腹に同時進行で終わりに向けてハーモニカを吹きつづける唇、呼吸、心臓

『お誕生日おめでとう。はいこれ』

夏休み中にも拘わらず、遠野ゆかりと上川由美が訪ねてきた。手渡されたピンク色の包装紙に包まれた手のひらサイズの小箱

『二人からだからね』と由美が言葉を続ける

『う

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君が知っている僕と、僕だけが知らない君 ④

君が知っている僕と、僕だけが知らない君 ④

君に出会えた日【6年前】

『はいはい。みんな席についてー。今日は新しいお友達を紹介します』

冬休み明けの初日、始業式後の教室に担任の横谷先生が転校生を連れてきた

『…さんは、お父さんのお仕事の都合で札幌からお母さんと妹さんと3人しばらくこの町で暮らすことになりました』

クラス中から歓声が上がった。人口10,000人程度の小さな漁師町に転校生が来るだけでも珍しいのに、それが札幌という都会から

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君が知っている僕と、僕だけが知らない君 ③

君が知っている僕と、僕だけが知らない君 ③

あの日公園にて『わかった?お母さん出かけるからね』

朝から何回聴いただろう?
多分、4回目辺りからは返事はしていない
目覚めにあれだけの決意をしていたのにまだ布団の中から出られずにいる
気温のせいもあるだろうが、15歳の少年にとって身体の疲労より頭の疲労はことの外体力を奪うらしい
そのおかげで朝から7回も8回も階段を駆け上がってくる母親とのこの不毛なやり取りを繰り返している訳だ
(40過ぎて無駄

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君が知っている僕と、僕だけが知らない君 ②

君が知っている僕と、僕だけが知らない君 ②

この涙が意味するものは夢を見ていたわけではない…これは解る
レム睡眠だかノンレム睡眠の時に人の記憶は頭の中で整理されながら形となって夢というものを見るのらしい
記憶の整理とか言っておきながら目覚め際には夢の内容を覚えている方が珍しいのだから頭の中の引き出しとやらに随分と頑丈な鍵を掛けたものだ
朝になって夢の内容は覚えてないが夢そのものを見たかどうかくらいは解ると思っていたけど…

そんな日曜日の朝

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君が知っている僕と、僕だけが知らない君 ①

君が知っている僕と、僕だけが知らない君 ①

僕だけが知らない中学3年の12月のある朝、ホームルームに現れた担任の中山先生の隣に女の子が立っていた
人口10,000人程度の小さな漁師町に転校生がやって来るだけでも大事件なのに、高校受験を控えた中途半端な時期に転校してくるのはよほどのワケありなのだろう

『上川由美です』

その自己紹介にクラスは騒然となる
次に発せられた言葉はクラスのあちらこちらから聴こえる女子生徒からの『由美。おかえり』と男

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