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あまり小さいころの記憶はないほうだ。そんな少ない記憶の中でいまも覚えている3つのことがある。

あっこちゃんのママのこと。その人は他のママとはちょっと違った雰囲気を持っていた。同級生のあっこちゃんは同じマンションに住んでいたのだが、違う幼稚園に通っていた。私は公立の近所の幼稚園であっこちゃんは私立の幼稚園だったのだと思う。

違う幼稚園だったからそんなに頻繁に遊ぶわけでもなかったが、ある秋の日(夕方だったがあたりは肌寒く薄暗かった)あっこちゃんの家で、そのころには珍しいビデオを見せてもらったのだ。ディズニーのバンビの。

あっこちゃんの家はふつうのお家と違ってなんだか外国の香りがした。その頃の私がどれだけ外国という概念を分かっていたのかは想像がつかないが、(うちは海外とは無縁の家だったから)そのバンビのビデオの事を、とても鮮明に覚えている。うちにはビデオなんてなかったし、ましてや外国のものなんて何もなかった。

バンビが生まれるシーン、森の中の火事のシーン、暗くしたその部屋のなんだか外国の匂い。あっこちゃんのママは航空乗務員だった。今思うと、はじめて外国というものに興味を持ったのは、このディズニー、バンビだった。こんなに素敵な物たちはどこからくるのだろうと。

2つ目、初恋の男の子Y君。好きだなあって思っていたのに、お父さんの都合でアメリカに転勤とかいう話だったような。そこでもまた、ああ素敵な子は外国に行くんだと、根拠のない憧れを持っていた。

3つ目、少し大きくなって小学校の頃、近所にアメリカ領事館の家族が住んでいた。金髪のお姉ちゃんと弟、鬼ごっこして遊んで、彼らの大きな家の中を靴のまま駆け回り、ああ外国ってこうなのって思っていた。

どれもたわいのない記憶で、あやふやだ。でも、今思うと、神戸という土地柄も手伝って、私は小さいころから海外に興味を持っていたのだと思う。あの頃の日本から見た外国は、アメリカだけだったな。

その後、14歳で私は憧れのアメリカにホームステイすることになる。


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