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UpSwingPokerによるソルバーを使った解析方法の実例 (3ベットポットのA-ハイフロップ)

 前回はソルバーについての一般的な解説記事をご紹介しました。今回は、その最後に紹介されていた記事になります。

 ソルバーの結果を解釈して、具体的に戦略を構築する記事になります。シンプルな考え方しか書かれていませんが、それでも注目すべきポイントや、複数の結果を比較する方法の足掛かりになるかと思います。

 他人が出した結果を参照するだけの方も多いですが、余裕があればとにかく自分でソルバーを触ってみることが大切だと思います。

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3ベットポットにおけるAハイフロップの戦略

2020年7月20日 written by Dan. B

 2020年現在、NLHEで勝つには3ベットポットについて熟知しておく必要がある。一昔前とは違い、3ベットポットはまったく珍しいものではなくなった。

 今回の記事は、ブラインドから3ベットされた後のフロップ戦略について解説する。特定の状況に焦点を当てているように感じるかもしれないが、この状況に遭遇することはかなり多いはずだ。

(注:この解析はUpSwingPokerラボのFried Meulders (別名 mynameiskarl) のレッスンが元になっている。3ベットポットをIPで戦う状況を掘り下げたもので、彼は様々なフロップについて解析しており、一般的なプレイヤーに対してエクスプロイトする方法も紹介している。)

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3ベットポットにおけるIPのディフェンス戦略

 3ベットポットではフロップのポットサイズがすでに大きく膨らんでいるため、一つのミスが重大な損失をもたらすことになる。

 ポットサイズは3ベットの額によって異なるが、約17~25bbとなっていることが多いだろう。ポットが大きくなるとSPRが小さくなるため、ソルバーの解析結果では小さなベットサイズが選択される傾向にある。レイズの応酬やオーバーベットをしなくても、簡単にオールインまで辿り着いてしまうからだ。(参照:「スモールベットが有効な理由」

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フロップ: A♠ 8♢ 3♠

 BTNから2.5bbでオープンに対して、SBから9bbの3ベットが返ってきた状況を考えよう。

 SBの3ベットレンジを以下に示す。それぞれのマス目に含まれる数字はBTNのコールレンジに対するエクイティを示している。今回のフロップの場合、レンジ全体ではSBが55%以上のエクイティを持っており、SBに有利であることがわかる。

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 次に、SBの戦略を以下に示す。フロップのポットサイズは190点、ベットサイズは63点(約33%PSB)とした。

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 この戦略の特徴として、以下の点が挙げられる。

・3ベットポットではSPRが低いため、Cベットは約33%PSBと小さなサイズを選択した。
・Aハイボードでトップペアを完成させた場合、オーバーカードが存在しないため相手にエクイティを放棄させる必要性が下がる。
・Cベットの頻度はレンジ全体で47%となり、それほど高頻度ではないことがわかる。 

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 SBのCベットサイズが小さいということは、小さなリスクしか犯していないということだ。このような広く小さなベットに対しては、BTNはかなり広くディフェンスしなければならない。(参照:「Minimum Defense Frequency (MDF) とポットオッズ」)。

 ソルバーの解析結果によると、SBにエクスプロイトされないためにBTNは以下のハンドでディフェンスしなくてはならない。

「トップペア~ボトムペア」
「バックドアフラッシュのあるポケットペアすべて」
「バックドアフラッシュのないポケットペアはほぼすべて」
「バックドアでフラッシュとストレートがあるコネクター (7♢ 6♢など)」

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BTNのフロップレイズレンジ

 BTNのディフェンス戦略について詳しく見ていこう。ソルバーの結果を以下に示す。

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  この戦略の特徴として、以下の点が挙げられる。

・BTNがレイズでディフェンスするレンジはかなり狭く、以下のようなハンドで構成される。「ボトムセット」「トップツーペア」「トップペア・トップキッカー」「弱い8x、バックドアフラッシュドロー」
・「76s」「65s」「54s」の一部にレイズが含まれている。これらはバックドアでフラッシュとストレートを完成させる可能性があるため、頻度は低いがブラフとして混合されている。

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 このレイズ戦略によりSBは窮地に立たされることになるのだが、BTNの勢いはフロップに留まらない。以下にターンカードごとのBTNのアクション頻度を示す。

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 ほぼすべてのターンカードで、BTNは33%PSBの小さなベットを追撃することがわかる。特にスペードが出た場合は、かなり高頻度にベットを撃っている。

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ターンでSBがベットした場合

 SBのフロップベットに対してBTNがコールでディフェンスすると、ターンではSBのチェック率が上がる。フロップのレンジアドバンテージが、ターンでは消失してしまうからだ。

 以下の図は、ターンカードごとのSBのアクション頻度を示している。ほぼすべてのカード、特にスペードが出た場合はかなり高頻度にチェックしていることがわかる。

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 しかし、ターンで「T♡」が出て、チェック率が高いはずのSBがダブルバレルを撃ってきた状況を考えよう。SBのダブルバレルに対するBTNの戦略を以下に示す。

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 この戦略の特徴として、以下の点が挙げられる。

・レンジの65%でディフェンスしている。「トップペア以上のバリューハンド」「セカンドペア、サードペアの大部分」「Kハイガットショットの大部分」「すべてのフラッシュドロー」
・このうち、BTNは一部のハンドでオールインする戦略を取っている。ツーペア(「AT」「A8」「A3」「T8」)にブラフ(フラッシュドローのある「8x」)を混合し、一方でセット(「TT」「88」)はコールに留めている。

 ブラフオールインのハンドを選択する際に、直感的には「8x」ではなく、ペアになってないフラッシュドローでオールインしたいと思うかもしれない。

 しかし、大きなリスクを取ってオールインするからには、ソルバーはより高くエクイティを保てるハンドをブラフに選択している。フラッシュドローに加えて「8」のペアがツーペアやトリップスに発展する可能性を加味すると、これがベストなブラフハンドだと判断されたのだ。

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ターンでSBがチェックした場合

 異なる3つのターンカード(「T♡」「J♠」「8♣」)で比較して考えよう。

《「T♡」が出た場合》

 BTNの戦略を以下に示す。

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 これまでの例のように「T♡」が出た場合のソルバーの結果だ。この時点でポットサイズは316点なので、66%PSBは209点となる。

・BTNはスロープレイせずにトップペア・グッドキッカー以上でベットしており、そのサイズは66%PSB以上の比較的大きなものが選択されている。
 ブラフレンジとしてドローハンドで高頻度にベットしており(100%ではない)、驚くことに「22~55」のローポケットも含まれている。

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《「J♠」が出た場合》

 このカードによりBTNにフラッシュが完成した可能性が出てしまった。SBの戦略を以下に示す。エクイティは不利になってしまい、チェックの割合が増えていることがわかる。

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 このSBのチェックに対するBTNの戦略を以下に示す。

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 この戦略の特徴として、以下の点が挙げられる。

・多くのハンドで大きなサイズのベット(66%PSB)がされている。
・ナッツフラッシュをスロープレイすることでSBのリバーブラフを誘発している。
・フラッシュドローのついたスモールペアでポットベットを仕掛けている一方で、「KQ」「KT」「QT」「T9」などのストレートドローはチェックに留めている。

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《「8♣」が出た場合》

 このカードでもSBは不利になってしまう。SBの戦略を見てみると、チェックの割合が多くなっていることがわかる。

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 しかし、不利なボードにもかかわらずSBがCベットを撃ってきた場合は、BTNの戦略は非常にパッシブになる。以下にSBのCベットに対するBTNの戦略を示す。

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 この戦略の特徴として、以下の点が挙げられる。

・レイズ率が非常に低い。
・BTNはディフェンスレンジは「JJ-99」「54s」以上のハンドであり、その大部分をコールに留めることでSBにブラフの機会を与えている。

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 一方で、SBがチェックした場合のBTNの戦略を以下に示す。

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 この戦略の特徴として、以下の点が挙げられる。

・「J♠」の場合と同様に、多くのハンドで66%PSBが選択されている。
・バリューハンドとして、「トップペア・グッドキッカー以上」を選択している。
・ブラフとして「スペードブロッカーを持つKQ」「スモールペア」を選択している。特にスモールペアがブラフとして有効な理由は、相手のエクイティを大きく放棄させることができ、かつ、フルハウスを完成させるアウツが2枚残されているからだと思われる。

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《問題:「K♣」が出た場合》

 最後に、ターンで「K♣」が出た場合を考えよう。SBの戦略を以下に示す。

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 これまで見てきた場合よりも、SBがダブルバレルを撃つ頻度が上昇しているのがわかる。少し時間を置いて、その理由について予想してみてほしい。

〔答え〕ナッツアドバンテージによりレンジ全体が優位になったから。

 スペード以外の「K」「Q」「J」はSBにとって最高のカードだ。レンジに含まれるかなり多くのハンドがセカンドペア以上に発展し、BTNに勝てるハンドが大きく増えることになる。

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他のAハイフロップではどうなるのだろうか?

 これまでは「A♠ 8♢ 3♠」について見てきたが、フロップの種類によってCベット戦略は大きく変化する。

 Friedのレッスンからエクセル表を拝借してきた。この表を見ると、どうやらセカンドカードとサードカードの数字が大きいほど、Cベットの頻度が高くなっているように思われる。

 この大部分はレンジアドバンテージによって説明できる。数字が大きい方が、SBの3ベットレンジとよく絡んでいるということだ。

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まとめ

 3ベットポットをディフェンスするのは難しい。現在の戦略では高頻度にスモールベットを受けることになり、それに対して広いレンジでディフェンスしなければならない。

 ターン、リバーと進むにつれ、その複雑性は増大していく。カードの種類や順番などの様々な可能性を考慮し、それを正しく理解することでウィンレートを上げることができる。

 今回はこれで終了だ。ここまでソルバーの戦略について読み終えた君には、次に「期待値を損なわずに戦略を簡略化する方法」について読んでみてほしい。より実践的に戦略を理解することができるだろう。

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 記事は以上になります。

 ソルバーを使った戦略構築の、大枠だけでも理解できたような気がします。今回は3-4種類のフロップしか紹介されていませんでしたが、自分でもっといろんなパターンを見比べて、最終的には集合解析で一般化を目指せると良いですね。


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