Doug Polkの質問コーナー プリフロップに関する良質なテーマ6選
Doug Polk が日本のポーカー界隈で最近話題になったのは、かの有名なダニエル・ネグラーノとのヘッズアップ対決でしょうか。世紀の(?)対決が行われた経緯は、木原プロがわかりやすく回答されていました。
結果は大方の予想通り......ダグ・ポークの圧勝です。しかし、この対決が話題になったもう1つの理由として、「ポーカーでは自分の頭脳以外を使用することがどこまで許可されるのか」という問題について、トッププレイヤー同士が公の場で議論を交わしたことがあると思います。2人の対決において、HUDやプリフロップ表も含めたツールの使用をどこまで制限するのかという問題です。
ライブシーンに寄ったダニエルの意見を古いと感じる方が多かったようですが、僕は逆にオンラインの危うさが加速した現状にとても即しているように感じました。今後のポーカーのあり方に関してライブシーンを重要視する意見は、非常に現代的だと思ったことが印象に残っています。
さて、それはともかく Doug Polk は本当に世界最強クラスのプレイヤーだったそうです(現在はセミリタイアとwikipediaには書いてありました)。
彼が設けた質問コーナーに集められたプリフロップに関するテーマの中で、特に良質な6項目が紹介されていました。
有名プロが良質だと判断したからといって、特別に難解なものだという訳ではありませんでした。いろんな方にきっと役に立つ重要な視点を教えてくれていたので、今回はこの記事をご紹介します。
それでは、どうぞ。
Doug Polkの質問コーナー プリフロップに関する良質なテーマ6選
2017年2月21日 written by Jason Lee
あらゆるポーカーの混沌はプリフロップから始まる。
2017年ではプリフロップを適切にプレイできることは勝つために必要不可欠な条件となった。今回の記事は、Doug Polkに出されたプリフロップに関する質問をまとめたものだ。彼の回答はきっと今後長く役に立つことだろう。
Q1. オリジナルレイザーのスタックが40bbしかないとき、3ベット戦略はどのように考えると良いのでしょうか?
通常、スタックが100bbであれば、オープンレイズの後に4ベットしてもポットコミットになることはない。この理由により、比較的広いレンジで4ベットを仕掛けて、3ベットした相手を難しい状況に追い込むアクションが肯定される。
しかし、君が言うように、スタックが40bbしかなければ話は変わってくる。4ベットするとポットコミットになってしまうのだ。そして、4ベットすることが難しくなるということは、すなわち3ベットする側の優位性が上がることを意味する。
よって、3ベットレンジを広げて、ベットサイズを小さくするのが良いと思う。小さいサイズとはいえ、40bbしかスタックがなければ十分に大きな出費となるし、同時に4ベットされたときの損失も減らすことができる。
3ベットサイズの決定方法については、いくつかポイントがある。
・アンティーがあるときは、オープンレイズ額の3倍を3ベットする。
・アンティーがなければ、それより少し小さいサイズにする。
・OOPであれば、それより少し大きいサイズにする。
この方法でレンジを広げて、シンバリューを狙いに行こう。ショートスタック相手にブラフすることを恐れてはならない。バランスの取れた3ベットレンジで相手を難しい状況に追い込もう。
Q2. どうしてUTGから「A5s」でオープンするんですか?
私は「A5s」が大好きだ。このハンドでアーリー・ポジション(EP)からオープンするのには、いくつか理由がある。
・コールされても十分にEquityがある。
標準的な相手のコールレンジには、「JJ-66」「ブロードウェイカード」「スーテッドコネクター」などに加えて、「A4-A2」などドミネートしているハンドも含まれている。例えば、以下のレンジに対する「A5s」のEquityは43%になる。
・比較的Equityを実現しやすい。
「A5s」はナッツフラッシュやストレートを完成させる可能性があるため、様々な状況に対応しやすく、そのEquityを実現しやすい特徴がある。UTGが多くの場合でOOPからプレイしないといけないので、この特徴は非常に重要だ。
・「A」をブロックしている。
相手のコールレンジの中で「AA」「AK-AJ」の可能性が減るのはとても重要なことだ。
Q3. ブラインド周りのポジションで「Ax」を上手に使うにはどうすれば良いのでしょうか?
これは簡単には答えられない問題だが、一般的なガイドラインを示すことにしよう。まずはポジションごとに考えてみよう。
【BBで「Ax」を持っているとき】
相手がオープンレイザーだけであれば、常にディフェンスするようにしよう。フォールドするには強すぎるハンドだ。ただし、相手が極端にタイトであったり、大きなベットサイズを使ってきた場合は、キッカーが非常に弱い場合はフォールドすると良いだろう。
【SBで「Ax」を持っているとき】
様々な要素を考慮する必要があるため、シンプルな答えを出すことは難しい。通常のプレイヤーの傾向としては、「ATs+」「AJo」は必ずディフェンスして、「A9s-A2s」「ATo」はときどきプレイして、「A9o-A2o」は必ずフォールドすることが多いと思う。
SBはポストフロップで必ずOOPになるため、3ベット or フォールドの戦略を取り、一般的にSBからのフラットコールは避けるべきだ。(「SBでのプレイに関する4つのルール」も読んでみてほしい。)
SBでオープンレイズに直面したとき、以下の3つのポイントを覚えておいてほしい。
《オープンサイズ》小さなベットに対して、ルースにレンジを広げて戦うことを恐れてはいけない。
《ポジション》アーリー・ポジション(EP)からのオープンに対しては、非常にタイトに絞るべきだ。
《BBのスクイーズ率》BBがアグレッシブであれば、コールは控えるべきだ。
要するに、「Tight is Right(タイトは正義)」の原則は、SBのプレイに関して言えばよく当てはまる言葉だと思う。
【BTNで「Ax」を持っているとき】
まず、自分までフォールドで回ってきた場合、「Ax」はすべてオープンしよう。
誰かのオープンレイズに直面した場合、「Ax」がスーテッドハンドならほぼコールして良い。最弱の「A7s」「A6s」でさえ、ポジションがあればある程度のEquityを実現することができる。
さらに、誰かのオープンにコールが入った場合でもオーバーコールすることができる。特に「A5s」などのハンドはマルチウェイで非常にプレイしやすい。
しかし、「Ax」のオフスートハンドをプレイするのは注意が必要だ。以下の図は、標準的なロージャック(LJ)のオープンに対するBTNの戦略を示したものだ。
濃い赤は「レイズ」、ピンクは「レイズ or フォールド」、オレンジは「レイズ or コール」、水色は「どのアクションでも良い」、緑は「コール」、薄緑は「コール or フォールド」、紫は「フォールド」を示している。
スーテッドの場合と比較して、オフスートで参加する頻度はかなり少ないことがわかる。これはEquityを実現することが難しいからであり、かなり強いハンドでしかSBから参加すべきではない。
【COで「Ax」を持っているとき】
キッカーが中程度以上なら必ず参加するが、キッカーが弱ければ自分と相手のレベルに応じて決めるようにしてほしい。
後ろにいるプレイヤーが弱ければレンジを広げて、相手により多くの決断(つまり間違ったミスプレイ)をさせるように仕掛けるようにしよう。逆に、相手が強ければ適切な頻度で3ベットを返してくるので、大人しくフォールドしておくのが良いだろう。
COのプレイ方針は基本的にはBTNと同じであり、そのレンジをよりタイトにすることになる。以下にCO vs BTNのレンジを示したものだが、さきほどよりも若干タイトになっていることがわかると思う。
Q4. ポジションが後ろになるにつれてオープンサイズを小さくする戦略について、どのように考えていますか?
この手の質問は多いのだが、私が持つ膨大なサンプルデータを研究した結果、オープンサイズを変えてもあまり違いがないということがわかった。
オープンサイズを大きくすると、スチールのポットオッズは悪くなってしまうのだが、その成功率は高くなる。逆も同様に、オープンサイズを小さくするとスチールのポットオッズは良くなるが、成功率は低くなる。
よって、どのサイズを選択しようとそれほど大きな影響はないと思われる。相手にレンジを読まれないよう、その戦略に一貫性を持つことが重要なのだ。
状況に応じてあなたがプレイしやすいサイズを選択しよう。タイトなテーブルなら小さく、ルースなテーブルなら大きくすると良いだろう。
別の記事でこの質問について詳しく解説している。
Q5. トーナメントの序盤ではレンジを広げるべきですか?それとも適切なレンジをキープすべきですか?
このような質問は、多くのプレイヤーがトーナメントに関して犯しているミスを象徴している。
・低いステークスのトーナメントではどのような戦略を取るべきですか?
・トーナメントの序盤ではどのようにアジャストすべきですか?
・6-maxトーナメントはどのように考えると良いですか?
これらの質問はすべて理論的に筋が通っていない。ある特定の状況(時には存在するのかわからないような状況)を想定して心配するのは、はっきり言って時間の無駄だ。
すべての状況において、持っている情報からベストな意思決定をするということに集中してほしい。
あなたはトーナメントの種類やストラクチャーに注目して戦略をアジャストしようとしているかもしれない。しかし、結局あなたが意思決定の根拠にすることになるのは、その状況に特徴的な情報なのだ。
トーナメントの Day 1 の戦略について、まるでそれが Day 2 と劇的に変化するかのように語る人がいるが、そんなことはないのだ。まあ、たしかに小さな違いはあるかもしれないが、プレイ中の意思決定に影響を与えることはほとんどないだろう。
トーナメントでプレイの根拠として考えるべきことは「ICM」だけだ。
Q6. ミニレイズやオーバーベットをする際は、常にポラライズすべきでしょうか?
この質問は主にポストフロップに該当するが、プリフロップにも関係するためボーナスとして回答することにした。
まず、「ミニレイズ」と「オーバーベット」はまったく別の概念だということを知ってほしい。
「ミニレイズ」は、ストリートがリバーに近づくにつれてポラライズされたものになる。プリフロップにおけるミニレイズは今まではフィッシュのサインとして使われていたが、現在では広いレンジでオープンするための基準となっている。
一方、「オーバーベット」は常にポラライズされており、小さなポットを取るために大きなリスクを冒している。マージナルハンドはほとんど含まれておらず、強いハンドと弱いハンドでレンジは構成されている。
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記事は以上になります。
プリフロップ戦略を学ぶということは、レンジ表の暗記を意味している訳ではありません。定石プレイに対しても「どうしてだろう?」といろんな疑問を持つこと自体が一番大切なんじゃないかと思います。
一つ一つのハンドがどうしてそのレンジに含まれるのか、その理由や目的について丁寧に考えると、きっとポストフロップもプレイがより楽になると思います。
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