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ソルバーとは何なのか?どのように考えるべきなのか?

 ポーカーの戦略を構築する上で、いまやソルバーは無視できない重要な要素になっています。様々な記事はソルバーを根拠に解説されていることも多く、混沌としたゲームの中に共通した認識が得られることはとても良いことだと思います。

 しかし、これが絶対的に正しい戦略であるかどうかは、しっかりとその条件を吟味する必要があります。出力される結果は真理だとしても、その前にデータを入力するのは一人の人間でしかありません。

 今回の記事は、ソルバーについての基本的な使い方が解説されたものです。自分で使う際にも役に立ちますが、誰か他の人が出した結果の解釈にも必須の知識だと思ったので、ご紹介します。

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ソルバーとは何なのか? どのように考えるべきなのか?

2021年9月29日 written by Dan B.

 ソルバーとは、特定の状況における「最適」な戦略を計算してくれる強力なポーカーツールであり、その計算結果はソリューションと呼ばれている。有名なソフトとしては「ピオソルバー」「GTO+」「Simple Postflop」などが挙げられる。

 ソルバーの登場はこのゲームを大きく変えてしまった。2015年ごろから一般に流通し始めて、現在では戦略構築のスタンダードになりつつある。そのソリューションには価値の高い情報が豊富に含まれているのだが、そもそもソルバーとは一体何なのだろうか?

 その複雑な戦略を再現するために頑張ってソリューションを暗記することに、本当に価値があるのだろうか?

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ソルバーの仕組み

 簡単にまとめると、いくつかの選択肢を設定した上で、その最適な戦略を計算してくれるものだ。その選択肢とは、具体的には以下のようなものがあり、それぞれの項目を自分でソルバーに入力しなければならない。

両者のプリフロップレンジ、ベットサイズ、レイズサイズ、エフェクティブスタック、ポットサイズ、ドンクベット率

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 これらの設定により算出されるソリューションは、かなり状況を限定したものだ。実際のNLHEのゲームでは相手のレンジやベットサイズを正確に予想することは不可能だし、もちろんドンクベットするのも自由だ。

 つまり、ソルバーはNLHE全体に対する解を算出している訳ではなく、ゲームの一部に対する解を算出したものだ。そうだとしても、このゲームの重要なメカニズムを理解するのに非常に役に立つ。

 また、ソルバーを理解する上で忘れてはならないのは、これは互いの戦略をリバーまで理解していることが前提となっているという点だ。その上で、相手から期待値を最大化させるようエクスプロイトされない戦略が構築されている。

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ソルバーについてどのように考えれば良いのか?

 ソルバーは魔法のランプのようなものだ。あなたが正しく質問すれば、欲しい答えを正確に教えてくれる。それ以上でも以下でもない。

 つまり、間違った質問をすれば、役に立たない結果しか得られないということでもある。

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 正確で役に立つ結果を得るためには、できるだけ現実に即したデータを入力する必要がある。その上で、アクションの理由について考察しなければならない。

 すべてのフロップ、ターン、リバーについて一つ一つ解析することは不可能なので、そこに含まれるパターンや概念に注目することが重要だ。

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どのようなポイントに注目すればよいのか?

 入力したデータが見当違いなものでなければ、ソルバーの結果からいくつかの有用なパターンが得られるだろう。

ベット/レイズの構造
レンジ全体のアクション頻度
混合戦略を取るべきハンド

 算出されたデータを見て、なぜそのような結果になったのかを考察することになる。例えば、過去の記事ではオーバーペアを持っているときにチェックすべき状況について解説した。ピオソルバーを使って大量のフロップを解析した結果、強くコネクトしたミドルボード(「9♠ 7♣ 5♡」「7♣ 5♡ 4♢」など)ではチェックが好ましいという事実が得られた。

 実際、以下の図はBTN vs BBのシングル・レイズド・ポット(SRP)におけるフロップ「9♠ 7♡ 5♢」の状況を解析したもので、オーバーペアのチェック率が高いことを示している。

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 では、このような戦略が推奨される理由は何なのか?

 コネクトしたフロップはBBのレンジに有利であり、ツーペアやストレートを完成させている確率が高い。よって、BTNはオーバーペアでもディフェンシブな振る舞いをすることになると思われる。

 しかも、オーバーペア同士を比較してみると、より強いオーバーペアの方がチェック率が高くなっている。これは、下位のオーバーペアはターン以降にトップペアで逆転される可能性が高いため、プロテクションベットの有効性が高くなるからだ。

 この特徴はコネクトしたミドルボードに広く当てはまる概念であり、このように比較的少ないフロップを解析することでも価値のある傾向をソルバーで発見することができる。

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ノードロック

 普段あなた自身の手で実際にソルバーを動かしていなければ、このセクションは読み飛ばしても構わない。しかし、ソルバーについて説明する上でこの鍵となる機能について説明いないわけにはいかない。

 ノードロックという機能は、プレイヤーが特定の戦略を取るようアクションをロックして、それに対するエクスプロイト戦略を計算する方法だ。

 この機能を利用することで、相手が実際に取りうるプレイに対して最善の戦略を見つけたり、様々な実験を試すこともできる

 例えば、タイトパッシブな相手に対してIPで戦っている状況を考えよう。このようなソルバーが示す理想的な均衡戦略の通りにはCベットを撃って来ないと考えられる相手には、以下のようなノードロックをかけて計算する。

【ノードロック】① 相手のパッシブさを反映するために、「チェックレイズ」のアクションの一部を「チェックコール」 に変更する。 ② 相手のタイトさを反映するために、「チェックコール」のアクションの一部を「フォールド」に変更する。

 この変更により、ソルバーが示すソリューションには劇的な変化がもたらされる。つまり、このタイプの相手に対してはさらに戦略を改善させることができるということだ。

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 このような実験を繰り返すことで、ソルバーの結果にパターンを発見することができる。ゲームツリーの初期の段階における小さな変化が、後半の戦略に大きな変化を与えることがわかる。

 この方法によりEVを大きく増やすことができるが、その前提が間違っていた場合はあなたの戦略が崩壊してしまう可能性もある。

 理想的な均衡戦略からの乖離はゲームツリーの初期の段階の方が小さいことが多いので、前提の間違いは初期にある方が被害が少なくて済む。

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まとめ

 ソルバーはNLHEというゲーム全体についての解を示す訳ではなく、使う側が設定した特定の状況に対して正確な解を出してくれるものだ。その答えが本当に探し求めていた戦略かどうかは関係がないということだ。

 あなたが入力する設定は真に現実に即したものでなければならず、ソルバーの結果がどうしてそうなるのかを自分で理解する必要がある。

 ノードロック機能を使い異なる戦略を比較することで、ソルバーがどのようにアジャストしているのかヒントを得ることができる。

 この記事を読んだ皆さんには「How to Dominate Ace-High Flops in 3-Bet Pots (Deep Analysis)」も読んでみてほしい。きっと役に立つことだろう。

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 記事は以上です。

 ノードロック機能も良いですが、まずはとにかく自分で触ってみることが大切なような気がします。特定の状況を自分で入力することは簡単に聞こえるかもしれませんが、実はソリューションの解釈よりもこれが一番難しいのはないかと個人的には思っています。

 ハンドレビューで自分のハンドとボード、ベットサイズを意識する方は多いです。しかし、ソルバーを使うと最適な戦略を決定するのはそれだけではないことを身体で理解できます。普段からスタックサイズやゲームツリー全体を意識する習慣ができると良いですね。


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