Equity Denial(Equityの否定)
「Equityを否定する」って、とってもイメージしにくい言葉ですよね。正直、無理に日本語に直訳しただけで、この言葉から具体的な内容を汲み取るのはかなり難しいんじゃないでしょうか。
ベットしてFold Equityを獲得するってこと?ブラフを増やすべきってこと? それとも、相手にEquityを否定されないように、ディフェンス頻度を上げるべきってこと?
これまでは好き勝手に想像を膨らませて考えていましたが、どれも違いました。この記事で、正確に、より具体的に理解が進んだので、とても良かったです。
それでは、どうぞ。
Equity Denialがプレイに与える影響
2018年6月22日 written by Dan.B
あなたは気づいていないかもしれないが、「Equity Denial」という概念は、ポーカーテーブルのあらゆる決断の基礎的な部分になっている。
「Equity Denial」を正しく理解することで、すべてのシチュエーションで優位に立ち、ウィンレートを挙げることができるだろう。
Equity Denialとは?
Equity Denialとは、相手をフォールドさせることでEquityの実現を阻止することだ。あなたがEquity 40%のハンドをフォールドしたとき、「40%のEquityが否定された」ということになる。
この考え方は、ストリートが進むにつれて応用範囲が小さくなっていく。つまり、最もEquity Denialが最も重要なのはプリフロップとなる。リンプが良くないプレイなのも、これが大きな理由の一つだ。
「Equity Denial」は「ブラフ」と似た概念に聞こえるかもしれない。たしかに重なる部分もあるのだが、決して同じ概念ではないことに注意してほしい。
例えば、次のシチュエーションを考えてみよう。
【ブラインド 0.5/1、6人テーブル、Effective Stacks 100bb】
【Preflop】あなたはMPからJ♡T♡で2.2bbにオープンレイズし、BBのみがコールした。
【Flop】5♣ 5♢ 3♢(4.7bb) あなたが2bbのCベットを撃つと、相手はフォールドしてK♡8♡を見せてくれた。
このハンドだけを考えると、あなたよりも強い相手のハンドを降ろすことができたので、このCベットはブラフだと考えてしまうかもしれない。
実際に、Flopzillaという解析ソフトをみてみよう。あなたの「JTs」は、相手の「K8s」に対して24.39%のEquityしか残されていないことがわかる。
別の例を見てみよう。下の図は、同じシチュエーションで「44」でCベットした場合だ。「44」は72.42%ものEquityを持っており、今回はブラフとは言えなさそうだ。
ここであなたのCベットが達成したことこそ、「Equity Denial」と呼ばれるものだ。あなたのCベットにより阻止できたことが3つある。
① 相手が後のストリートでKや8をヒットさせる。これはターンだけで12%の確率で起きる。
② 相手がターンのスケアカードを利用してブラフしてくる。4を除くダイヤのカードや、ブロードウェイカードがそれに当たる。
③ ターンで相手のブラフにコールしたとしても、もう1度ブラフを撃たれたら降りざるをえない。あなたはそれに耐えられるカードをリバーに期待することはできない。
Equity Denialが戦略に与える影響
Equity Denialが影響するのは、主にベットサイズとベット頻度だ。この観点を頭に入れた上で、例をみてみよう。
【ブラインド 0.5/1点、6人テーブル、Effective Stacks 100bb】
【Preflop】あなたはBTNから2.5bbにオープンレイズし、BBのみがコールした。
【Flop】8♣ 8♢ 2♢(5.5bb) 相手はチェックして、あなたの番になった。
この状況をソルバーで解析してみよう。
すべてのハンドで、ほぼ100%の頻度で33%ポットベットを撃っている。それより大きいサイズのベッド頻度は7%以下しかない。
これはちょっとショッキングな結果だと思う。どうしてこうなったのか、その構造を考えてみよう。
どうしてソルバーは33%ポットサイズを選択したのか?
ここからややこしい概念に入っていくことになる。理解するのが難しいと感じても、最後に簡単にまとめてあるから、どうかそこまで我慢して読んでほしい。
この疑問に答える最初のステップは、最適なディフェンス頻度について考えることだ。ソルバーに設定した3つのベットサイズに対して、相手はどのようにディフェンスすべきだろうか。
あなたのベットに対して、ブレークイーブンになる頻度は以下の公式で与えられる。この公式にそれぞれのベットサイズを代入して、ソルバーの答えと比較してみよう。
Required Fold Equity (RFE) = ベット額 /(ベット額 + ポット額)
【① 100%ポットサイズ】
RFE = 55 / (55+55) = 50% となったが、ソルバーは62%ものハンドをフォールドしている。このフロップベットだけを考えた場合は50%しかフォールドしなくても良いはずなのに、戦略全体を通して最適化すると62%のフォールドが必要になってしまうということだ。
つまり、その差である12%はオーバーフォールドを意味している。
【② 66%ポットサイズ】
RFE = 36 / (36+55) = 39.5% となったが、ソルバーは53.6%ものハンドをフォールドしている。つまり、オーバーフォールドは約14%ということになる。
【③ 33%ポットサイズ】
RFE = 18 / (18+55) = 24.6% となったが、ソルバーは41.5%ものハンドをフォールドしている。つまり、オーバーフォールドは約17%ということになる。
これらの計算結果より、ソルバーが33%ポットサイズを選択する理由は、少ない投資額で相手により多くフォールドさせるためだと考えられる。相手はフロップをミスする可能性の方が高いので、少ない投資額で高頻度のブラフを仕掛けるのは理に適っている。
どうしてソルバーはほぼ100%の頻度でCベットしているのか?
上で述べたように、Cベットを撃つことで相手に17%もオーバーフォールドさせることができる。
あなたのレンジの大半は、相手にオーバーフォールドさせることで、EquityをOver Realizeすることができるのだ(もちろん非常に強いハンドのときは相手にコールしてほしいので話は別だ)。ターン以降に進めば十分なEquityを確保できたはずの相手のハンドを降ろすことができる。
下の図は、相手のフォールドレンジに対するハンドのEquityを示したものだ。
「97s」は35.67%しかEquityを持っていないが、相手をFoldさせることができている。相手のEquityを否定することで、Cベットが非常に利益的になっているのだ。
「44」はEquityが72.5%もあるが、相手のハンドレンジをかなり広い範囲で降ろすことができている。さらに、後のストリートでブラフで降ろされずに済むというのが重要なポイントだ。「44」のようなハンドではその可能性が非常に高い。
これらが「Equity Denial」の効果だ。今回のようなドライなペアボードでは特に効果があり、相手のEquityの高いハンドを降ろしやすくなる。
結論
「Equity Denial」は、プレイヤーのレベルに関わらず非常に重要な概念だ。
最後に、「Equity Denial」が重要になる場面では、以下の要素を覚えておいてほしい。
・ベットすることで得られるEV
・自分より強いハンドにディフェンスされたときに失うEV
・フロップでベットしなかった場合に、相手のターンベットに対してフォールドする頻度
これらすべてを考慮するのは難しいかもしれない。しかし、ポーカーも人生も、練習すればきっと上手にできるようになるはずだ。
読んでくれてありがとう!グッドラック!
==============
翻訳は以上です。ソルバーの解析結果を絡めて、とても具体的にわかりやすく解説されていました。
Equityの扱い方について連続で翻訳を進めています。より正確に理解が進む一方で、なんともとらえどころない難しい概念のようで、正直混乱してきました。
それでも、諦めずに歩みを進めてみよと思います。まずは様々な情報を頭に入れて、それから全体を俯瞰することで、ゆっくり着実に理解が進んでいくだろうと信じています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?