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Stack-to-Pot Ratio (SPR) の重要性(後編)

 前回の続きです。

 個人的には、まずはShort StackでSPRが小さい状況に自信がついてから、Deepに挑戦する方が良いと思っています。でも、得意・不得意もありますから、とにかく自分が一番楽しめるスタック量を意識しておくだけでも大切かもしれませんね。

 それでは、どうぞ。

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【Medium Stack】~ SPR 5以下の場合 ~

 中程度のSPRになるのは、100bbのスタックで3bet Pot (3BP) になった状況や、30bbのスタックでSingle Raised Pot (SRP)になった状況だ。これらはトーナメントの中盤以降によくみられる。

 ここで取り上げる例は、2016年のPokerStars SCOOP 2,100ドルトーナメントでのDoug Polkのプレイだ。

【プリフロップ】ブラインドは150点/300点。HJのプレイヤーが750点にオープンレイズし、BTNのプレイヤーがコール。BBにいたDougもK♡7♡でコールした。そのテーブルではDougが最もショートスタックで、11,800点を持っていた。

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【フロップ T♡ 4♡ 2♠】Dougがチェックすると、HJは1,200点のCベットを撃った。BTNはそれにフォールドし、Dougだけがコールした。

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 これはDougにとって興味深いスポットだ。HJのCベットによりDougのSPRは約3.0になり、レイズとコールのどちらの選択肢でも良かった。

 ここで、DougのSPRがもう少し小さければ、チェックレイズでオールインすべき状況だ。スタックに対して獲得できるポットの比率が大きいからだ。

 逆に、SPRがもう少し大きければ、コールすべき状況だ。チェックレイズオールインするにはスタックが大きすぎるし、小さなチェックレイズではさらにオールインを返されたときに難しい状況に追い込まれることになる。

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【ターン Q♡】ポット額は5,200点となり、Dougには10,200点が残されていたので、SPRは約2.0だ。Dougがチェックすると、HJのプレイヤーは今回はチェックバックした。

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【リバー J♣】さあ、ここでDougは決断を迫られている。ベットしてバリューを引き出すべきか、それともチェックレイズを狙ってチェックすべきだろうか?

 この状況では、Kハイフラッシュのような非常に強い手では、チェックレイズを狙うのが合理的だ。その理由は2つある。

① チェックレイズした方が、平均して獲得ポットが大きくなる。強いハンドでは当然その方が嬉しいはずだ。HJのレンジにはベットしてくるハンドがかなり含まれており、さらにその中のいくつかはDougのチェックレイズにもコールしてくれるだろう。
② 強いハンドにブラフを混合することで、チェックレイズのレンジ全体で利益を増やすことができる。オーバーフラッシュをブロックするA♡2xなどでブラフを混合すると良いだろう。

 実際に、Dougはチェックし、HJのプレイヤーは2,400点をベットしてきた。DougはSPRが約2.0の状態でチェックレイズオールインを行い、相手はそれにTTでコールした。

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【Short Stack】~ SPR 2.5以下の場合 ~

 SPRがこのように小さくなる状況は、100bbのスタックで4ベットポットになった場合や、トーナメントの中盤以降で3ベットポットになった場合、さらに15bbしかない状態でSingle Raised Pot (SRP)になった場合などがある。

 これらはかなり頻繁に起きる状況ではあるのだが、それでもミスプレイが多くみられる状況だ。15bb以下のプレイについては、「ショートスタックになったときのスチール対策」も読んでみてほしい。それでは例をみてみよう。

【プリフロップ】ブラインド 500/1,000点、アンティー100点のトーナメントゲーム。SeanがBTNから2,100点にレイズして、BBにいるJamesがT♡9♣でコールした。このとき、Jamesのスタックは13,000点だった。

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【フロップ T♠ 7♣ 4♠】ポットは5,600点で、James (BB) のSPRは2.0を下回っていた。James (BB) がチェックすると、Sean (BTN) は3,300点のCベットを撃った。

 このようにSPRが低い状況では、James (BB) はチェックレイズしてオールインすべきだ。Sean (BTN)のCベットレンジに含まれる多数のオーバーカードは、ターン以降にも十分なEquityを残している。James (BB) はチェックレイズすることで、これらのEquityを放棄するよう仕掛けるのだ。これでSean (BTN) は非常に難しい局面に立たされることになり、88や99などのポケットペアや、弱いキッカーのTX、もしくは何らかのドローハンドからバリューを引き出せるかもしれない。

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 一方で、SPRが大きいときにトップペアのような中途半端なハンドでチェックレイズするのは、良いプレイとは言えなくなる。より強いハンドを含むSean (BTN)のレンジに対し、James (BB) はターンで無駄に大きすぎるポットを中途半端なハンドでプレイすることになってしまうからだ。

 ただし、チェックレイズでオールインする場合、バリューが多すぎる傾向には注意だ。あなたがこれを仕掛けるときは、ブラフを十分に混合してバランスを取らなければならない。子飼の例では、98sや56sなどのストレートドロー、あるいはフラッシュドローなどが良いだろう。

 重要なポイントは、SPRが低くなればなるほど、オールインして突っ込んでいくハンドレンジも広くなるということだ。SPRが2.5以下の状況でフロップでペアが出来たら、コールやチェックレイズなどのディフェンスを増やさなくてはならない。

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まとめ

 今回の記事をまとめると以下のようになる。SPRについての解説が君の役に立ってくれると嬉しい。それじゃあ、また次の記事で会おう!

① フロップでは、必ずSPRを踏まえたうえで、自分のハンドの強さを評価しなくてはならない。SPRが10以上の状態でトップペア・トップキッカーを持っていたとしても、それでオールインまで行くのは非常に悪いプレイだ。逆に、SPRが3以下の状態ではナッツと同じくらい効果的に活躍するだろう。
② Equityの高いドローハンドを持っているときは、相手のオールインのせいでフォールドせざるをえない状況は避けなくてはならない。逆に、ドローハンドを持っているときは自分からオールインして、相手にEquityを放棄させるよう心掛けなくてはならない。

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 翻訳は以上です。ちょっと長かったので2回に分けて投稿しましたが、とっても役に立つ内容だったと思います。SPRはとても大切な要素のはずですが、リバーでは気づくとスタックが減っていたりすることはよくありますよね。

 プリフロップから互いのオールインするまでの道筋を意識しておくことは、とても大切だと思います。

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