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現代のショートスタック戦略 Part 4/4

 このシリーズの完結編です。難しいとされるブラインド周辺のプレイは、これである程度のレベルまで到達できていると嬉しいです。

 ぜひPart 1からどうぞ。

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Part 4. ショートスタックのブラインド対決(BB編)

 いよいよ近代のショートスタック戦略に関する記事の最終章だ。今回はブラインド対決をBBの視点から解説する。

 Part 3と同様に、BBが考えるべきシチュエーションはSBのアクションによって主に3つ挙げられる。順番にみていこう。

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#1. SBがオールインした場合

 まずは、以下の問いについて時間を取って考えてみてほしい。

 SBが理論的にExploitされないレンジで15bbのオールインをした場合、BBのコールレンジはどのようになるだろうか?






 「HoldemResources calculator」で計算すると、答えは以下のようになった。

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 数多くのPush or Fold戦略チャートが紹介されいるが、それに対するコールレンジも知っておかなくてはならない。

 以前のパートでも触れたように、この表では+0.20以上を有意としている。オールインする側であれば、この表を利用してExploitされない戦略をほぼ完璧に遂行することも可能だが、受ける側はそうはいかない。考えるべきことがたくさんあり、その分ミスを犯す余地は大きくなる。

・実際のSBのオールインレンジは、この設定よりもかなり狭いかもしれない。
・Push or Fold戦略を取っているとは限らず、ミニレイズのレンジが別にあるのかもしれない。
・弱いプレイヤーばかりのテーブルで、他のスポットでチップを増やせる可能性が高ければ、小さなEVは諦めるべきかもしれない。
・運勝負で分散を大きくしたくない。
・中途半端なハンドでトーナメントを飛ぶのは気分が良いものではない。

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 最も重要なのは最初の項目だ。Push or Foldのチャートに忠実に従ってオールインしているプレイヤーはほとんどおらず、多くはそれよりもタイトになっている。

 上の解答で示した表は、SBが適切なレンジでオールインした場合の計算結果で、そこには「63s」「T4s」「76o」なども含まれてしまっている。そこで、現実的なゲームを想定して、SBのオールインレンジを以下のように設定した。

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 このレンジで再計算した結果を以下に示す。

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 なんと、さきほどのコールレンジの半分が消えてしまった!この表には新たに以下の特徴がみられた。

・適切なSBのレンジ設定では「A2o」は1.48bbものEVが得られたのだが、変更後はゼロになってしまった。レンジを狭めたとはいえ、SBが全ハンドの1/3という広いレンジでオールインしているにもかかわらずだ。
・適切なSBのレンジ設定では「J9o」のEVはほぼゼロだったが、変更後は-2.27bbと壊滅的なマイナスを示した。
・適切なSBのレンジ設定では「QTo」のEVは1.5bbだったが、変更後は-1.0bbとなってしまった。SBがオールインレンジに「K5o」「98s」などを含めていることを考えると、これは直観に反する事実だ。

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 これほど劇的な変化があることを踏まえると、初心者がナッシュ均衡のコールレンジを覚えることは、それほど優先順位が高いことではないと思う。それよりも、相手のオールインレンジに対応して柔軟にコールレンジを変化させる方が、よっぽど重要なことだろう。

 SBが15bbのオールインを仕掛けてきた際に、そのレンジが20%しかないと予想される場合、BBのコールレンジをどう修正すべきかあなたは理解できているだろうか? 逆に、そのレンジが100%だとしたらどうだろう?

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 この感覚を身に付けるためには、「Holdemresources calculator」のようなソフトで何時間ものトレーニングが必要となる。少なくとも、Push or Foldのチャートを眺めるだけではだめだ。あなたが戦っているのは数学的にアクションするコンピューターではなく、様々な要素に影響される生身の人間なのだ。

 相手にオールインされたときに本当に必要となるのは、敵にExploitされないためのチャート表を何枚も用意しておくことではない。大事なことは、相手のレンジを想定する能力と、それに対応する方法を知っておくことだ。

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 最後に、相手からExploitされる可能性について考えよう。

 相手がどんなハンドでもオールインしてきた場合、あなたがコールしなくてはならない頻度はどのくらいだろうか?

 その答えは約29.1%だ。「K6s」「Q9s」「K8o」をフォールドしてしまったら、SBは「72o」でオールインしても利益が出る。

 この事実から「相手に好き勝手させないために、かなり広いハンドでコールしなきゃならないんだ!」と思ってしまうかもしれない。しかし、それは残念ながら私が言いたいこととは真逆の感想だ。

 Exploitされる可能性があることと、実際にExploitされてしまうのは、まったく別の話だ。

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 どのくらいコールする必要があるのか大体の目安を知っておくのも大切なことだが、実際にSBからオールインされてExploitされていると感じたことはほとんどない。

 私は2020年からトーナメントで生計を立てて60万ドルを稼いできたが、そのように感じたのは実はたった2回しかない。ときにはExploitされるかもしれないが、少ないチップを取られたところでまったく問題ない。

 あなたがExploitされる余地のあるフォールドをしたとしても、相手がそれを知ることはない。トーナメントの性質上、何周かプレイしただけではブラインド対決になることは一度もないかもしれない。スタックサイズまで考慮すると、まったく同じ状況になることはまずない。

 2人のプレイヤーがトーナメントに何か月も参加し続けたとしても、同じ状況のブラインド対決になることはほとんどなく、Exploitできているのかを判断するのはほぼ不可能だろう。

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 しかも、実際に相手がExploitしてきたとして、それにどのくらい影響があるのだろうか? 私が稼いできた60万ドルのうち、55万ドルは弱いプレイヤーから得たものだ。大事なことは、弱いプレイヤーからチップを稼ぐことであり、強いプレイヤーに対して0.02bbのEVを追いかけることではないのだ。

 上でも述べたように、Exploitされない戦略を取るためには、より大きな分散を受け入れなくてはならない。しかも、相手のオールインレンジの予想が間違っていた場合、マージナルハンドでのコールは莫大な損失になってしまう。Exploitされない戦略が、このリスクに見合う価値があるとは思えない。

 もちろん、かなり広いレンジでディフェンスする必要はあるのだが、ほとんどの場合で0.1bbほどのEVを追う必要はないと思う。

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#2. SBがレイズした場合

 スタックの浅いSBが2~3bbほどのスチールを仕掛けてきた場合は、単純にオールインされるよりも面白いシチュエーションになる。

 Part 3で、SBがレイズによって自動的に利益が出ないようにするために、BBがディフェンスすべき最低ラインを示した。その計算式は、

求められるRaw Equity = リスク / (ポット + リスク)

 よって、9人テーブル、10%アンティーのゲームでは、SBのレイズ額によって以下のように計算される。

2bb → 61.6%
2.25bb → 58.9%
2.5bb → 54.6%
3bb → 49%

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 かなり多くのハンドでディフェンスする必要がある。特に、ミニマムレイズに対してはほとんどのハンドでオッズが合ってしまう。

 例を挙げて考えてみよう。9人テーブル、ブラインド 500/1,000点、アンティー 100点のゲームで、SBがミニマムレイズをしてきた。BBに求められるRaw Equityは、

1,000 / 3,900 + 1,000 = 0.204

 となる。20.4%のEquityさえあれば良いので、BBはほぼすべてのハンドでディフェンスできることになる。重要な事実なので、整理してまとめよう。

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1. SBのミニマムレイズに対して、BBは20.4%のEquityがあれば良い。
2. SBのレイズ率が100%になっても利益を出させないためには、BBは61.6%のディフェンスが必要となる。

 ここで問題だ。

 SBがミニマムレイズをしてきた場合、BBは「T3s」をディフェンスすべきだろうか? さらに、SBのレイズ率が9%しかない超タイトなプレイヤーだった場合はどうだろうか?




 理論的には、「T3s」をフォールドすると大きな間違いになってしまう。さらに、SBのレイズ率が89%しかなかったとしても、「T3s」には30%のEquityがあるので、ディフェンスすることができるのだ。

 トーナメントでは、一般的にBBのディフェンス率がかなり低い。ほとんどのプレイヤーは、12bbほどのスタックではコールできないと考えている。なんだかんだ言い訳をしてチップを出したがらない。しかし、これまでの解説で述べてきたように、スタックが少ないほどハンドのEquityは実現しやすくなるのだ。

 もしスタックが40bbほどであれば、「87o」でショーダウンまで到達することはそう多くはないだろう。しかし、スタックが12bbほどしかなければ話が変わってくる。コールした後のポットは約5bbで、スタックは約10bb残されているはずだ。相手のCベットに対して、あなたは効果的にアクションを返すことができる。

・ミドルペアができれば、相手のレンジに対して良いオッズがあるので、そのままオールインすれば良い。これは相手にとってはやっかいなアクションになるはずだ。
・コールする選択肢もある。これによりターンでのスタックサイズはポット以下になるので、もはや相手はどんなハンドでもオッズが合ってしまい降りることができなくなる。

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 フロップで8枚以上のドローがあれば、ショートスタックは非常に有効に作用する。もしスタックが40bbほどであれば、ハンドが「T♠3♠」で、フラッシュドローのみでフロップをコールしてしまうと、非常にタフな決断を強いられることになる。

 しかし、もしスタックが12bbなら話は簡単で、フロップでそのままオールインするのだ。理論的に厳密に最適なプレイとは言えないのだが、それでも多くの利益を上げることだろう。

 SPRが小さいほどショーダウンまで到達しやすく、Equityを実現しやすくなる。

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 さて、話を戻そう。ショートスタックのSBにレイズされた場合、コールすべきなのか、オールインすべきなのか。このシリーズを通して読んでくれた皆さんなら、私が何を言いたいのかすでに理解していることだろう。

 スタックサイズをしっかりと把握し、相手のレイズレンジを考えて、それに応じてどんなハンドでオールインできるのかを知っておくことが重要なのだ。ただチャート表を覚えるのではなく、計算ソフトと何時間も向き合って、今の状況でどのように影響するのかを学ぶことこそ重要なのだ。

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 下の図は、9人テーブル、10% アンティーのゲームで、15bbのSBから2.5bbのレイズをされたときのシミュレーション結果だ。

 この計算結果には2つの前提がある。1つ目は、SBにはいきなりオールインする選択肢がないということ。2つ目は、BBのオールインに対してSBが適切にコールしてくるということだ。実際のゲームではありえない前提ではあるのだが、すべての仮定を踏まえることは不可能だし、この結果にも重要な意味がある。

 SBのオープン率を変えて検証してみた。まずは、非常にタイトなプレイヤーで、オープン率が27.6%の場合だ。これは「ポケットペア」「AX」「ブロードウェイカード 2枚」に相当する。

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 次に、標準的なオープン率として50.5%に設定した。数学的な最適値よりはタイトになっている。「AX」「22+」では必ずオールインを返すべきだとわかる。

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 次に、SBのオープン率が100%である場合だ。驚くかもしれないが、非常に多くのプレイヤーがこのようなプレイをしており、特にバブルラインではショートスタックのBBに対してこのようなプレイはよくみられる。

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 注意しておきたいのは、この計算結果はチップEVだけしか示しておらず、ICMの影響は考慮していない。

 しかし、賞金が莫大なビッグトーナメントでもない限り、ICMに関してどうこう言うのは止めにしよう。相手のオープン率が100%だと感じたときは、この計算結果が示すように容赦なく「K7o」を突き付けてEVを稼げば良いのだ。

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 さて、それなりにまともなレンジで2.5bbのオープンをしてくるSBは、どのようなレンジになっていると予想されるか? 私が考えたレンジを以下に示す。

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 一見いびつなレンジに見えるが、一つ一つ説明しよう。

・想定として、SBは「スモールペア」と「弱いキッカーのAX」ではレイズせずにオールインしてくると考えた。前回の記事で解説したように、これらのハンドはオールインすることで大きなEVが得られることがわかっている。
・オフスートのブロードウェイカード(「KQo」「KJo」など)は、半分はレイズして、半分はオールインすると考えた。スーテッドの場合(「KQs」など)は、オールインせずにすべてレイズすると考えた。
・キッカーが弱い「KXs」「QXs」はレンジに加えた。
・ブラフとして「K5o」~「K2o」をレンジに加えた。「K9o」~「K7o」はオールインしてくると想定した。

 SBがどのハンドでオールインして、どのハンドでレイズするのかを判断するのは非常に難しい作業だ。これは完璧な予想とはいかないかもしれないが、目的に沿った良い例にはなっていると思う。

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 さて、ここでまた問題だ。

 このレンジに対して、BBがオールインすることでEV+になるハンドは一体何パーセントになるのだろうか?

 SBのレンジに「弱いキッカーのAX」や「スモールペア」が含まれていないことに注意して考えてみよう。






 シミュレーション結果は以下のようになった。レンジ全体の47.3%のハンドがオールインすることでEV+になる。

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 しかし、このすべてのハンドで本当にオールインすべきなのかというと、もちろん違う。私たちがすべきことは、必ずオールインすべきハンドを抽出することだ。

 ポストフロップでプレイすることが難しく、ミスする余地が大きいハンドは、迷わずオールインすべきだ。そうでないハンドでは、コールを選択することができる。

 この例では、私なら10秒ほど考えた後に、このようにアクションを振り分ける。

・「ペア」:すべてオールイン。
・「AXo」:すべてオールイン。
・「AXs」:基本的にはすべてオールイン。ただし、相手を欺くために気分が乗ればコールするかも。
・「ブロードウェイカード 2枚」:オールインEVは十分に高いが、ときどきコールに留める。
・「スーテッドハンド」:極端にEVが低くない限りはすべてコールする。
・「KX」:かなりの割合でオールインして、その他はコールに留める。
・「Q6o」「J7o」「T7o」「97o」「86o」「75o」「65o」:すべてコールする。

 まとめると、私のディフェンスレンジは以下のようになった。

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 ディフェンス率は66.5%になった。このレンジによって、オープン率100%のSBに対してExploitされずに済むだろう。

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 ここで、求められるRaw Equityが25.4%しかないにも関わらず、一体なぜもっと広くディフェンスしないのか疑問に思うかもしれない。しかし、このシリーズを一通り読むことで、すでに答えを理解しているかもしれない。Equityを実現することができないからだ。

 「72o」でコールしても、ショーダウンまで到達することはないだろう。どのくらいのEquityを実現できるか正確に測ることはできないが、まだ経験の乏しいプレイヤーはかなりのハンドを捨てても良いと思う。

 実践では、以下のレンジを使うのはどうだろう。

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 ディフェンス率は50.5%になった。理論的に最適なレンジよりタイトだが、かなり効果的だと私は思う。

 SBにExploitされる余地があっても大した問題ではない。チップを渡してやれば良い。その他の状況で、もっと簡単に弱いプレイヤーからチップを取れるはずだ。

 ポストフロップのプレイに自信がなければ、タイトにレンジを絞るのも現実的にはスマートな戦略だ。大きなベットができない状況で、60%のレンジをプレイするのは簡単なことではない。今では私は1番目のレンジを使っているが、使いこなすまでに経験を積む必要があった。実際に、私も3年前までは2番目のレンジで戦っていた。

 理論的に最適なレンジよりもタイトに絞ることは、何も恥ずかしいことではない。ポストフロップで壊滅的なミスを連発するよりも、プリフロップは相手に譲る方がずっと良いのだ。

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#3. SBがリンプした場合

 冒頭で述べたように、ここ数年でSBからリンプするプレイはよく見られるようになった。しかし、これをバランスを取って行うのはかなり難しい。

 ただ、スタックが20bb以下のプレイヤーばかりの場合は、バランスを気にする必要はないと思う。理論的な数値よりも多くオールインすることが利益的になるはずだ。

 HoldemResources calculator のようなソフトで実際に計算してみてほしい。SBからのオールインレンジとほぼ同じだということがわかるだろう。違いといえば、ポットの額が0.5bbだけ増えたことと、SBの最低レベルのハンドはいくつか削られていることだけだ。

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 もし、SBが手強いプレイヤーでポストフロップが上手ければ、EVが小さくても多くのハンドでオールインしてしまうだろう。リンプにレイズするのは非常に危険で、オールインが返ってくるかもしれない。慎重にハンドを選ばなければ、それはチップを捨てているのと同じようなものだ。

 このような状況であれば、最強ハンドと最弱ハンドの両方で約3bbのレイズをして、その他のハンドはチェックに留めるのが良いと思う。「53o」のような最弱ハンドは相手にオールインされれば降りればよいが、「87s」のような中途半端なハンドはフォールドできなくなってしまう。

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 例を出して考えてみよう。あなたはBBにいて、スタックは17bbだ。SBがリンプしたら、どうすべきだろうか?

・オールインが大きなEVを生むハンドは、オールインする。ポストフロップで困る「AX」や「スモールペア」は必ずオールインだ。
・オールインEVが小さいハンドでも、いくつかオールインに加える。「86s」「K9o」のようなハンドを入れることで、相手に戦略を読まれないようにする。
・レイズするハンドは少ない。非常に強いハンドと、相手のオールインにフォールドしても気にならない弱いハンド(「72o」「83o」など)を混合する

 この戦略により半分以上のハンドでチェックすることになるのだが、SBリンプに関する重要なポイントを伝えたい。

 実際のゲームでは、バランスを取ってリンプするプレイヤーはおらず、非常に弱いハンドに偏っているということだ。理論値よりも高い頻度でレイズすることでExploitすることができるだろう。

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 繰り返しになるが、あなた自身でシミュレーションソフトを使ってみて、頭を悩ませながらレンジを微調整してみてほしい。

 疑問とその答えが増えるほど、いずれ来たる困難なスポットに対してあなたは準備が整っているということを意味する。

 例えば、SBが50%の頻度でリンプして、そのうちトップ15%しかBBのオールインにコールしないプレイヤーであったなら、BBのオールインレンジがどのようになるか想像できるだろうか? BBはすべてのハンドでオールインすることが答えになるのだが、あなたはこの答えにすぐに気づくことができただろうか?

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 最後に、SBリンプに遭遇したときは「どのようにBBがアクションすると予想してリンプをしてきたのか?」と毎回自分に問いかけてほしい。

 曖昧なまま答えが出ない状況も多い。しかし、例えば大きいトーナメントのファイナルテーブルで、あなたはBBで18bbを持っている状況を想像してみよう。

 リンプに対してBBがそんなに広いレンジでアイソレートしてくるとは、SBも想定していないはずだ。BBのレイズを引き出すために、あえてリンプして罠を仕掛けるなんて戦略は取っていない可能性が高い。

 じゃあ、BBはどうすべきなのか。そんなの決まってるだろ? レイズしてこないと予想されてるんだったら、その裏をかいてレイズしてやるんだ。

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ブラインド対決におけるBBのポストフロップ戦略

#1. BBがアグレッサーである場合

 あなたがBBでレイズしてコールされた場合の戦略は、SBからレイズしてBBにコールされた場合と同じような戦略になる。BBにはレンジアドバンテージがあるので、以下のようなボードが有利に作用する。

・Aハイボード
・「5 5 2」のような、フラッシュもストレートもなさそうなボード
・「K J 6」のような、ブロードウェイカードが複数枚あるボード

 SBのレンジはスーテッドのミドルカードが多く含まれており、このようなボードに強くヒットしている可能性は低い。一方で、SBに有利となる「T 9 6」のようなボードが出たら、BBは大人しく引き下がるのが賢い戦略となる。

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#2. SBがアグレッサーである場合

 多くは場合はこちらの状況だろう。Part 3でも言ったが、それでもまずは重要な事実を繰り返し伝えたい。ブラインド対決は誰にとってもストレスフルなのだ。特にBBでは、奇妙なアクションをしているプレイヤーを毎日のように見ている。

 アグレッサーでないにも関わらず、AハイボードでBBからベットを撃ってしまうプレイヤーは多い。「ブラインド対決なんだから、そうそう良い手はないはずだ。Aハイボードでベットについてくるのは難しいはずだ!」なんて考えているのだろう。

 しかし残念ながら、それほど難しいことでないのだ。あなたのプレイが不自然であれば、簡単にコールできる状況だ。

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 これまでも述べてきたように、SBからのレイズに対して、BBはかなり広いハンドでオッズが合うことになる。Raw Equityだけで考えると、ミニマムレイズなら20.4%、2.5bbレイズなら25.4%、3bbレイズなら28.9%あれば良い。プリフロップでオールインせずにコールを選択するレンジで、Aを持っている可能性は低いのだ。

 スタックが小さいからといって、参加するハンドすべてで勝つ必要はないことを覚えておいてほしい。もちろんブラフも必要なのだが、それはBBに有利なボードで行うべきなのだ。

 例えば、フラッシュドローなどはオールインしてEquityを実現させる価値が十分にある。何もハンドがないのにAハイボードで突っ込むのは、チップを捨てているのと変わらない。

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ブラインド対決に関するHUD

 Part 3でも示したように、ブラインド対決に関する私のHUDスタッツは以下のものを使っている。

 これらの項目はBBでのプレイに非常に有効だ。このプレイヤーは複数の戦略を混合していることがわかる。35%はレイズ、19%はリンプしており、かなりタイトなレンジでプレイしている。

 また、実際の相手はSBにいるのだが、BBにいるときのスタッツも十分に参考になるので見てみると、やはりかなりタイトな数字を示していた。この情報をもとに、私はBBからの戦略を以下のように立てた。

【SBがレイズした場合】本来ならオールインするようなハンドも、コールに留めることが多くなる。タイトでわかりやすいプレイヤーに対して、ポストフロップでポジションが得られることは大きなメリットだ。このような相手に対して投機的なハンドでオールインしてしまうのは、無駄にリスクを高めることになる。
【SBがリンプした場合】かなり広いハンドで容赦なくオールインする。SBがリンプするレンジはおそらく上位36~55%ほどのハンドに限られており、こちらのオールインに耐えられるハンドは少ないはずだ。BBからの3ベット率が非常に低いプレイヤーだとしたら、3bbほどのレイズも選択肢に挙がる。オールインするためにリンプで罠を張っている可能性は非常に低いはずだ。

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 これで一連のシリーズはすべて終了だ。今回の解説を実践に移さないでくれると、私としてはありがたい。映画「エターナル・サンシャイン」の主人公のように、あなたが覚えたことをすべて忘れてしまう人間であることを祈っている。こんな上手なプレイヤーを相手にするのは嫌だからね!

 とにかく、Part 1から一連の記事を楽しんでくれたら私はとても嬉しい。ここまで読んでくれてありがとう!

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 翻訳は以上です。長かったですが、とても役に立つ内容でした。ショートスタックでの考え方は、そのままディープスタックを理解する基本になると思います。

 くるぽかのメンバーで、いろんな疑問と回答を共有できたら楽しそうですね。

 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!

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