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エクスプロイト戦略で考えるべき10のこと

 ポーカーの名シーンなどをYouTubeなどで見ていると、とんでもないブラフやヒーローコールが出てきたりしますね。

 凄いスーパープレイともてはやされて紹介されますが、それが本当に良いプレイなのか、たまたまリーディングが当たっただけなのか……1ハンドだけ見せられても、正直なところ僕にはよくわからないことがほとんどです。

 GTO戦略を学ぶことは重要だと思うのですが、実際はナッシュ均衡解から大きく外れた多種多様なプレイヤーに囲まれています。どんな相手でも困惑せずに、冷静に利益を最大化する方法を学ぶエクスプロイト戦略を学ぶことは重要だと思います。

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 GTO戦略の学習というと、Solverの計算結果をもとに試行錯誤するように思いますが、それでは相手のミスを探すという視点を忘れてしまいがちのように思います。

 均衡解は算出できても、それを実戦でどう活かせば良いのか、僕は困ってしまうことばかりです。Solverを回し始める前に、具体的にどのように応用するつもりなのか目的を意識しておかなければならないのだと、最近ようやく気付き始めました。

 きっとどんな研究も、始める前の研究デザインがとても重要なのですね。

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 しかし、エクスプロイト戦略には定まった型のようなものが提供されにくいのではないかと感じています。考えるべき手順はある程度あるとしても、それを汎用性の高い形式で、しかも理解しやすい形式では、きっとトッププレイヤーでも言葉にしてまとめることが難しいんじゃないかな、と勝手に思ったりしています。

 今の僕にできることは、散在するエクスプロイト戦略の知識の断片を集めて、自分の中で整合性を考えていくこと。あるプレイヤーが発信するハンドリーディングが本当に信頼して良いものか、様々なエリートコーチと呼ばれるプレイヤーが発信するものと比較して整合性を考えていく作業が、近道なのかなと思っています。

 今回は一番リクエストの多かった、Upswing Pokerのエクスプロイト戦略に関する記事の翻訳です。皆さんが普段考えていることに、何かプラスになることがあれば嬉しいです。

 それでは、どうぞ。

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エクスプロイト戦略で考えるべき10のこと

written by Patrick Harvey, Jul 28, 2020

 あなたも一度は、次の言葉を聞いたことがあるだろう。

 ポーカーテーブルで行うすべての行動が意味を持ち、相手にとっての情報となる。

 ライブポーカーを長くプレイしていると、人間は自分が考えていることを隠すことが下手だということがよくわかる。相手の仕草を注意して観察することは非常に重要だ。これらの情報を活かすことで、GTO戦略を完璧に遂行するよりも、たくさんチップを増やすことができる。

 このようなエクスプロイト戦略を考える際に重要な10ヶ条を一緒にみていこう。これらはポットリミットオマハ(PLO)のエリートコーチであるDylan Weismanから得たものだが、NLHEを含むすべてのゲームに当てはめて考えることができる。

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その1:相手のハンドレンジはどうなっているだろう?

 そのスポットで予想される相手のハンドレンジを意識しよう。簡単な例を挙げてみる。

【プリフロップ】ミドルポジションからのレイズに対し、あなたはBBでコールした。

【フロップ: Q♠ 4♢ 2♣】あなたはチェックした。

 この場合、相手はほぼ100%の頻度でCベットしてくるだろう。このボードは、あなたがBBでコールしたハンドレンジとは絡んでいない可能性の方が高く、逆に相手のハンドレンジには強いハンドが十分にある。つまり、相手の方に「レンジアドバンテージ」がある状況だ。

 その状況で想定されるハンドレンジを考えることで、相手がどれくらいGTOから逸脱しているのかを考える基準になる。正しいことを知っているからこそ、間違っていることにも気づくことができるのだ。

《参考リンク》「ポストフロップ戦略で重要な3つの概念(3 Concepts That Should Shape Your Postflop Strategy in 2020 (Positional, Range, and Nut Advantage))」

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その2:そのハンドレンジの中で、相手はどのようなアクションを取っているだろう?

 相手のハンドレンジを想定したら、それにアジャストする方法を考えよう。

【プリフロップ】あなたがプリフロップでオープンレイズし、BBからコールされた。

【フロップ: T♡ 8♢ 6♢】BBがチェックしたのであなたはCベットしたが、相手からチェックレイズが返ってきた。

 ここで、BBはこの状況のGTOをよく理解したアグレッシブなプレイヤーだとしよう。チェックレイズするレンジを考えると、以下のような役が想定される。

「ストレート」「セット」「ツーペア」「フラッシュドロー」「ストレートドロー」

 このハンドレンジに対してプレイを続けるのは非常に難しい。あなたはターン以降で、勝っているかどうかわからない中途半端なハンドで、相手のベットにコールし続けることになるかもしれない。

 一方で、もしBBがタイトパッシブなプレイヤーだとしたら、想定されるハンドは「ストレート」「セット」「ツーペア」のような強い完成ハンドに限定されてくるだろう。このようなレンジに対しては、あなたは強いハンド以外で相手にペイオフしないように注意すれば良くなる。

 つまり、基準となるハンドレンジと、相手のアクションの傾向を知ることで、そのスポットでより正確な戦略を立てることができる。

《参考リンク》「エクイティを否定することの重要性(How Equity Denial Influences (Almost) Every Decision & Your Results)」

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その3:自分のハンドレンジは標準的にはどうあるべきなのだろう?

 その状況で標準的と思われる相手のハンドレンジを学ぶのと同様に、自分のハンドレンジについても考えなくてはならない。

その4:相手はハンドレンジという概念を持っているだろうか?

 相手はどの思考レベルでプレイしているのかを常に意識しなくてはならない。

 その相手はカジノに初めて来たような初心者なのか? あるいは、カジノで勝ち続けている強い常連客なのか? 深いレベルで考えていないプレイヤーなら、相手の弱点を攻めるシンプルな戦略を考えよう。

 コールが多いプレイヤーには、ブラフを減らしてバリューにベットを増やそう。逆に、フォールドしすぎるプレイヤーにはブラフを増やそう。相手に合わせることができなければ、チップを大きく増やすことはできない。

《参考リンク》「相手の思考レベルに合わせる重要性:考えすぎは良くない(Leveling: How Overthinking Costs You Money at the Poker Table)」

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その5:相手は自分のハンドレンジをどのように考えているのだろうか?

 相手がハンドレンジという概念を持っているなら、自分はどう見られているのかを考えよう。ここではDylanのコメントを紹介する。

「私は自分のハンドレンジがどのように見られているのかを理解しようと努めている。強いと思われていればブラフが少ないだろうし、弱いと思われていればブラフは多いだろう。相手から得られる情報とは別に、自分が相手に与えている情報についても考えなくてはならない」

その6:今、相手は論理的に考えることができているのだろうか?

 ポーカーテーブルで常に集中してプレイすることは不可能だ。相手を観察すると様々なメリットがある。

 オールインで負けてティルトしている相手なら、弱いハンドでも我慢できずにコールしやすくなっているだろう。 ショートスタックから大きくチップを増やしたばかりなら、それを失うリスクを避けてフォールドが多くなるだろう。

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その7:その状況で最適と考えられるベットサイズは何だろうか?

 エクスプロイト戦略を考える際に、そこであるべきベットサイズを知っておくことは重要だ。異なるベットサイズを使い分けるべきかどうかは相手次第なのだが、ここでDylanの重要なコメントを紹介する。

「GTO戦略で最適なベットサイズが得られたとして、それを変えることでチップを増やすことができるのだろうか?これはとても難しい問題で、ゲーム理論について確固たる基礎を理解していない限り止めておくべきだ。基準がどうなっているのかを理解せずに、応用をすべきではない。特にベットサイズはこのゲームの中で非常に複雑なテーマだ。私は通常のベットサイズを使う方がよっぽど簡単だと思う」

 ただし、相手がこちらのベットサイズに無頓着であれば、柔軟に変化させることで大きな利益を上げることができるかもしれない。

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その8:相手はこちらのベットサイズを意識しているだろうか?

 ベットサイズを意識していない状況とは、異なるベットサイズに対してコールレンジを調整しないということだ。

 例えば、相手がマージナルハンドやドローハンドでも、ベッドサイズに関わらずコールしてくれるなら、自分はバリューに偏ったレンジで大きくベットすべきだ。

 ただし、このような極端なアジャストは特定の相手と長く対戦した場合でのみ行うべきだ。

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その9:チップをもっと増やすために、最適なベットサイズの戦略から逸脱すべきだろうか?

 これまで話したように、ベットサイズの調整は多くの対戦経験や知識が要る。プレイセンスに頼っただけのエクスプロイト戦略では、長期的に見てどのようなプレイをすべきなのか学ぶことができない。

 しかし、十分な対戦経験があり、そのリーディングに自信があるのなら、躊躇わずに突き進んでベットサイズを変化させても良いだろう。

その10:その相手との対戦経験はどれくらいあるのか?それは本当に信頼できるものなのか?

 エクスプロイト戦略には、十分な量の対戦経験が必要だ。あなたのリーディングは、十分なデータがあるほどより正確になる。

 とはいえ、常に莫大な量のデータが必要だという訳ではない。座っていきなり3回連続でオールインするプレイヤーが要れば、その人は理論的にプレイしていないし、ただのギャンブル好きだということがすぐにわかる。

 ただ、多くの場合は十分なデータが手に入るまで、エクスプロイト戦略を立てるのは待った方が良いだろう。

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最後に

 これらは、相手をエクスプロイトしようとする際に考えるべきことの一部だ。プレイ中は常に相手を注意して見る必要があるし、同時に相手が自分をどのように見ているかを考えておかなければならない。もっと具体的な状況が知りたければ、以下のリンクを参照してほしい。

《参考リンク》「多くのプレイヤーがやってしまう5つのミスプレイ(5 Strategic Mistakes Poker Players Make (And How to Exploit Them))」

【注意事項】

 今回の記事の前提知識として、「ゲーム理論に基づくプレイ」についてしっかりと理解しておく必要がある。この知識がなければ、たとえ相手が大きなミスを犯していても、それを発見して対応することはできないだろう。

 「ゲーム理論に基づくプレイ(Game Theory-influenced Play)」

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 翻訳は以上です。

 一つ一つはすでに理解している内容でも、プレイ中の短い時間ですべてを統合して考えるのは難しいですよね。自分が大切だと思うことを普段から整理しておかないと、考えるべき項目でも抜け落ちてしまいます。

 簡単に標準的なプレイができるような場面でも、相手にエクスプロイトする隙はないのか、普段から一つ一つのハンドと向き合う気持ちを忘れないようにしようと思いました。

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