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「GTOを語るバカ」にならないために大切なこと by Doug Polk

 日本でポーカーブームが過熱するにつれて、「GTO」という言葉が独り歩きするのではないかと思っていました。

 しかし、実際のところそうでもなく、むしろ数年前に比べて今では落ち着いてきているような気がします。SNS上ではまだGTOを誤解されているような投稿も散見されますが、全体を見ると「どうやったら正しくexploitできるか?」という方向へテーマが動いているような気がします。

 肌感として、海外のポーカーサイトで議論されているテーマは、ちょうど5年ほど遅れて日本に流れてくるような気がします(あくまで個人的な感想ですが……)。

 「GTOを語るバカ」というのはちょっと過激すぎるタイトルだと思いましたが、正しく理解されないまま「GTO」「Nash均衡解」「exploit」などの言葉の用法が乱用されているのはたしかに問題なのかもしれません。これが議論を無駄に混乱させている側面もあると思います。

 しかし一方で、正直なところ気軽に交わす普段の会話では特に区別する必要もないのかなと思っています。僕も自分のブログで乱用していると自覚しながら書いた箇所もありましたが、僕の実力でわかりやすく説明するためには仕方ないと妥協したところです。

 タイトルはともかく内容は順序良く整理されていたので、今回はこの記事を扱いました。学習の途中でこれを読むと、ソルバーの結果を応用する基本的な考え方が確認できて良いのではないかと思います。

 それでは、どうぞ。

「GTOを語るバカ」にならないために大切なこと by Doug Polk

2021年8月18日 written by Patrick Harvey

 ポーカーの世界では「GTO」という言葉が頻繁に使われている。この言葉が多くのプレイヤーに浸透したのは良いのだが、一方でその本当の意味を誤解しているプレイヤーも増えてしまった。

 Doug PolkがTwitter上で「ゲーム理論をポーカーに応用する際、バカに見えないようにするために」という一連の投稿をしていた。今回はこれをまとめて紹介したい。

1. GTO通りにプレイするということは、誰も打ち倒すことのできない100%完璧な戦略を取っているということを意味する

 GTO通りにプレイするということは、プリフロップからリバーまで、ベット頻度やサイズなどまったくミスをせず、すべて完璧にプレイするということだ。

 相手がどんな戦略を取ろうとも、フィル・ヘルミュースが「ホワイト・マジック」を使おうとも、絶対にGTO戦略に対して利益を上げることは不可能だ。

 ということは、GTO重視の代表格である Doug Polk や Dominik Nitsche などは絶対に倒すことができない相手なのだろうか?

 いや、絶対にそんなことはない。なぜなら......

2. この世界の誰もGTO通りにプレイすることはできない

 ポーカーの世界にも偉大なプレイヤーは少なからずいて、今日も精進を続けている。しかし、彼らを含めた全員のプレイヤーが、いまだにGTOにどれだけ近いのかという尺度の中でしか語ることができない。

 最高のAIであればかなり完璧に近いプレイをすることはできるかもしれない。しかし、それでも100%完璧ではないはずだ。このゲームに対する完璧な解が得られるその日まで、決して誰もGTO通りにはプレイすることはできない。

3. ソルバーの解析結果はGTO戦略と同じではない

 ソルバーには特定のベットサイズしか使えないという重大な制限がある。ベットサイズの設定を増やし過ぎると、解析するには膨大な時間とメモリー容量が必要になる。

 このゲームでは多数の選択肢からベットサイズを選択しなければならないが、ソルバーの結果はそれを簡易的に要約したものでしかないということだ。実際は1bbからスタックサイズまで、すべてのベットサイズが選択肢として含まれる。

 本当に強いGTOプレイヤーは、実際のゲームではソルバーの解析結果を大きく逸脱することがある。ソルバーはGTOに近似させるには便利な道具だが、GTOそのものではないということだ。

4. ソルバーの解析結果ですら細かすぎて人間には実行できない

 テキサスホールデムのハンドは1,326通りあって、ボードなどの状況に合わせて様々な頻度でアクションを取らなければならない。数えきれない組み合わせは人間の知能の限界を遥かに超えている。

5. ソルバーは実行可能なレベルの戦略や知恵を得るために使われる

 ゲーム全体で使用するベットサイズやアクションを固定することで、戦略をシンプルに簡略化することができる。(参照記事 「戦略を簡略化する方法」

 簡略化するとたしかに完璧なGTO戦略からは遠ざかってしまうのだが、実際のゲームで実行可能な戦略を得ることができるし、これこそが現実的に必要なものなのだ。

6. ソルバーの結果を理解して解釈するのは膨大な努力が必要になる

 ソルバーの真価を引き出すためには膨大な時間がかかるだろう。世界のトッププレイヤーは毎日ポーカーの研究に多くの時間を費やすことで、自分の戦略を利益的で頑強なものにしている。「早くお金持ちになりたい」という気持ちでソルバーを使っても、きっと裏切られることになるだろう。

 ソルバーに限らず、どんなツールを使おうとも学習する時間を無視してはならない。

7. GTOという言葉を使いすぎるのは恥をかくから止めよう

 ポーカーに関する難しい言葉を口にすることで、周りのプレイヤーに印象付けるようなことは止めよう。常に誰かの後ろに付きたがるような、弱いプレイヤーを怖がらせることはできるかもしれない。しかし、本当に強いプレイヤーにとっては、強がっている初心者にしか見えないだろう。

まとめ

 このゲームはかつてないほど難しいプレイが要求されているのも事実だが、いまだに世界中のプレイヤーが大量のミスを犯している。常に学び続けることで、洞察力に富んだ優れたプレイヤーになることができるのだ。

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 なんだかGTOに対してとてもハードルを上げられたような記事でした。自分で翻訳しておいて言うのも変ですが、「バカにされる」という部分はあまり気にしない方が良いと思います。

 学習を進めていれば、間違った使い方をしてしまうのは当然のことです。妙に知ったかぶりをして偉そうに語るのは擁護できませんが、間違った使い方をバカにされるのは無視すべきだと思います。

 努力する人をバカにする方が間違っているのです。

 堅実な歩みを止めずに、一緒に学習を進めてくれる仲間が増えることを祈っています。

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