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戦略を簡略化する方法
ソルバーの結果ってとんでもなく複雑で、どう解釈したものか困り果ててしまいます。どんなにゲーム理論的に最適な戦略でも、実践で使えなければなんの役にも立ちません。
今回はEVロスを許容する代わりに、実行可能性が高い戦略を模索しようという記事です。例として、現時点でおそらく最も普及している簡略化戦略が挙げられています。
たしかに簡略化することは不可欠だと思うのですが、そのデメリットにも厳しい言葉で言及してあります。パターン化すると同時に、自分で考えることも止めないようにしたいものです。
それでは、どうぞ。
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EVを犠牲にせず戦略を簡略化する方法
2020年7月17日 written by Dan B.
誰しも人生をシンプルに過ごすことが好きだと思うが、ポーカーにおいても同じだと言えるだろう。
戦略を簡略化することについては、賛否両論あると思う。今回はほとんどEVを犠牲にすることなく実行できる戦略を構築していく。ソルバーを駆使した現代のポーカーでは、このスキルは絶対に必要になってくるだろう。
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「戦略を簡略化する」とはどういう意味なのか?
簡単に言うと、アクションの選択肢を減らしてゲームツリーのサイズを小さくしてしまうことだ。例えば、複数のベットサイズから1つを選択するのではなく、最初から1つのベットサイズしか使わないようにすることで戦略を簡略化できる。
また、チェックやベットなどのアクションですら、レンジ全体で統一してしまう戦略もある。例えば、ソルバーでは93%の頻度でベットすべきスポットを、レンジ全体で100%ベットすることで戦略を簡略化することができる。
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戦略を簡略化するメリット
#1: より多くのハンドをプレイできる。
ゲームツリーをシンプルにすると、例えばフロップのCベットを撃つかどうかなどの判断が少なくて済む。同時に複数のテーブルでプレイすることができ、精神的な疲労も少ないので長くセッションを続けることができる。つまり、より多くのハンドをこなせることを意味する。
#2: 後半のストリートでより上手くプレイできる。
前半のストリートをシンプルにしておくと、ウィンレートに最も影響する後半のストリートに集中することができる。ポットが大きくなるほど、ミスの影響も大きくなる。
#3: シンプルな戦略がエクスプロイト戦略として作用することがある。
フォールド過多で滅多にレイズしないような相手に対しては、レンジ全体でベットする簡易戦略が十分に効果的となる。
#4: 後半のストリートで自分のレンジを正確に把握することができる。
ソルバーの解析結果は非常に複雑なので、簡略化するかカンニングしなければ、完璧に覚えることは人間には到底不可能だ。例えば、43.5%の頻度で66%PSBを撃ち、19.7%の頻度で50%PSBを撃つ戦略を取り、次のストリートでどれくらいのハンドが残っているのかを計算するのは現実的ではない。次のストリートでどれくらいのハンド数を残しておくのか、簡略的に覚えてしまった方が良い。
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戦略を簡略化するデメリット
#1: エクスプロイトされる隙を与えてしまう。
理論的には、ナッシュ均衡から乖離すると相手にはカウンター戦略を取られてしまう。ソルバーで解析すると、1つのベットサイズだけを選択して、すべて同じアクションを取るような状況はほとんどない。これは、アクションを統一すると容易にカウンター戦略を取られてしまうからだ。混合戦略で複雑化することで、エクスプロイトされない戦略を構築している。
しかし、現実的にはあまり問題にはならないことが多い。ほとんどのプレイヤーは相手の隙を見つけてエクスプロイトしてくることはできないからだ。
#2: 強い相手に対してはチップを差し出しているのと変わらない。
ナッシュ均衡の定義として、互いの戦略を知るプレイヤー同士は期待値(EV)が最大化されている。理論に忠実な強いプレイヤーが相手の場合、ナッシュ均衡から乖離するとロスを生じることになる。
#3: 簡略化の方法が間違っているかもしれない。
十分な知識がなければ、戦略を正しく簡略化することは不可能だろう。あるフロップではレンジ全体でベットすることが肯定されたとしても、他のフロップでは全然違うかもしれない。簡略化すべきでないスポットでは、単に期待値を捨てているだけになってしまう。
#4: 思考停止したプレイヤーになってしまう。
簡略化された戦略を使うことになれてしまうと、1つ1つの状況を深く考えることなく、応用がきかないプレイヤーになってしまう。たしかに、精神的な負担を少なくして直感的にアクションを選択することは大切なのだが、多くのプレイヤーにとっては非常に大きな問題点であることは間違いない。
戦略を簡略化しようとする際は、思考停止にならないように心がけてほしい。しっかり考えれば、君の頭脳はきっと良い判断をしてくれるはずだ!
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フロップ「T♡ 7♠ 2♢」に対する3つの戦略
ここまでは戦略を簡略化することに対してメリットとデメリットを挙げてきた。次に、ナッシュ均衡から乖離することで具体的にどのようにEVロスが生じるのかを見ていこう。同時に、それをエクスプロイトする戦略についても紹介する。
BTNからオープンレイズしてBBがコールし、フロップが「T♡ 7♠ 2♢」となった状況を考えよう。BTNの戦略として3通り挙げたので、順番に見ていこう。
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戦略① 複数のベットサイズを使い分ける
フロップでは3種類、ターン以降では2種類のベットサイズを使い分けてくるような複雑な戦略だ。ピオソルバーの解析結果を以下に示す。上の表はアクションの振り分け、下の図はそれぞれのハンドが持つ期待値を示している。
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この戦略には以下の特徴がある。
●ベット頻度ごとにハンドを分類する。
[100%] KK~JJ, ATs, 77, 22
[90%以上] TT, AKs, A7s, A2s, KTs+, K2s, QJs, J9s, 98s, 86s, 75s, ATo, K8o
[75%以上] AA, 88, AQs-AJs, K9s-K7s, QTs-Q7s, JTs, J8s, T8s, 96s, 76s, A7o, A4o-A3o, K9o+, QJo, Q9o, J9o
[25%以下] A6s
●その他のハンドは約50%の頻度でベットを撃っている。
●すべてのハンドが混合戦略を取っている。
しかし、これを読む多くのプレイヤーは、この戦略を覚えてテーブルで実践することはできないだろう。それはつまり、簡略化が必要だということを意味する。
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戦略② すべてのストリートでベットサイズを1つに絞る
戦略①では3つのベットサイズを使い分けたが、それを1つだけに絞ることにした。ピオソルバーの結果を以下に示す。
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この戦略には以下の特徴がある。
●ベット頻度ごとにハンドを分類する。
[100%] KK-TT, 77, 22, ATs, T7s
[90%以上] AA, AJs+, A7s, A2s, KTs+, K8s-K7s, K2s, Q9s+, Q7s, J8s+, T8s+, 98s, 96s, 86s, 75s+, ATo, K9o, Q9o
[75%以上] 99-88, 44-33, A8s, A5s-A3s, K9s, K6s, Q6s-Q3s, J5s, T6s, 97s, 87s, 64s+, 54s, AKo, AJo, A9o, A7o-A3o, KJo-KTo, QTo+, J9o+, T9o
●その他のハンドは約50%の頻度でベットを撃っている。
This simplified strategy is a fair bit easier to pull off than the complex strategy, but it's still no walk in the park considering most hands are mixed strategies between betting and checking.
今回の戦略はさきほどと比べてずいぶん簡単になったように思うが、それでもまだ簡単に実行できるとは言い難い。
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戦略③ フロップで全ハンドベットする
これはさらに戦略を簡略化させて、ベットサイズを1つに絞ったうえで、全てのハンドで100%の頻度でフロップベットすることにした。
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この戦略には以下の特徴がある。
●すべてのハンドで33%PSBを撃つ。
超簡単だ!
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それぞれの戦略に与えられる期待値
戦略① 3.81bb
戦略② 3.75bb
戦略③ 3.75bb
なんと、複雑な戦略と比較して0.06bbしか差がないことがわかる。ポットサイズは6bbなので、戦略を簡略化させることで生じたEVロスは1%しかなかったということだ。
実行不可能なほど複雑な戦略で身動き出来なくなっていたとしても、たった1%のEVを犠牲にすることで非常に簡単な戦略へと変換できるのだ!
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翻訳は以上です。
よく「フロップは33%CBを撃つのがGTO」なんて言葉を聞きますが、このような仕組みだったのですね。
ただし、簡略化の方法や条件に注意しなければ、間違った戦略を続けてしまうことにもなりかねません。思考停止になって疑問がなくなってしまうことこそ、ポーカーで最も危険なEVロスだと思います。
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