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生きる姿を、ただ耳元で見ていて。

あのね、本当は、つい逃げ出したくなるの。
人の視線にさらされず、言葉を求められず、
現実味のない場所でただ微笑んでいられたら。
傷つくことはないのかもしれないなって。

ああ、でも、わたしには自我がある。
意志がある。言葉がある。権利がある。
なにも見えていないフリをして
ひたすらニコニコしていたら、
きっとそのとき、わたしは聞くんだ。
心が潰される音を。尊厳が崩れる音を。

家の中の、いつもと同じ場所。
大切に飾っているその子をすいと手に取る。
不安だよ、無理だよ、怖いよ、もうやめたいよ。
心が叫ぶ日には、いつもこの子に触れる。
ゴールド、シルバー、マットゴールド。
逃げ出しそうになるわたしに、
3種類の花びらがそれぞれ問いかけてくる。

「どうしようか?」
「どうするの?」
「どうしたい?」

正しい答えをくれるわけじゃない。
けれど、わたしに時間をくれる。
思考を動かすきっかけをくれる。

耳元で、やわらかく光を反射する花びら。
「好きにしなよ」と、「自由にしなよ」と、
「あなたの思うままにしなよ」と。
わたしの生きる姿に、ただ静かに寄り添う。

凛とした人になりたかった。
芯のある人になりたかった。
ただただ、強い人になりたかった。

けれど心の中で、いつも小さな子が震えている。
「わたし、怖がりで、いやになっちゃうね」
つるりとした花びらに触れながらつぶやく。
怖がりで、弱虫で、いやになっちゃうね。

「でも、でも……」
弱さを抱えながら、震える足で立ちながら、
なりたい自分に向かうことはできると思うの。
凛とした人を、芯のある人を、強い人を、
ベールのようにまとうことはできると思うの。

ねぇ、そうでしょう? 花びらは答えない。
憧れの自分のように、凛とした静けさの中で、
ただ光をうけてきらめいている。それでいい。
なんにも答えなくていい。ただ見ていて。

わたしとして生きる姿を、言葉を紡ぐところを。
不安になったら、そっと耳元に触れるから。
そのときだけはひんやりとした冷たさで、
そこにいることをただ示してほしい。

アクセサリーから想像したストーリーです

ANSUR さま
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