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コートールド美術館展 魅惑の印象派 神戸展の中止に寄せて

残念、という言葉の他に言い様がない。

私は関西の人間である。東京、名古屋、と巡回してきたコートールド美術館展は最後の神戸で楽しもうと考えていた。いつものことである。小学生から美術展に通い始めて15年、ずっとそうしてきた。だいたい関西は後なので。
当たり前だがこんな事になるなど想定できていなかったし、当然のように神戸で見られると思っていたので、昨年秋に東京へ行った時はハプスブルク展だけ見て帰ってきてしまった。
もちろんハプスブルク展は素晴らしかったし、見て後悔はしていないのだが、何しろコートールド展、自分の好みにドンピシャ過ぎたのだ。あの時見ておけばと、どうしても思ってしまう。
名古屋展は終了が早まり、3月末からの神戸展は開幕が延期されていたが、「三密対策の目処が立たない」という理由で中止となった。一報を目にして暫し放心し、その日は本気で落ち込んでしまった。今もやるせない気持ちが強く残っている。

エドゥアール・マネ「フォリー=ベルジェールのバー」(1882)

エドガー・ドガ 「舞台上の二人の踊り子」(1847)

印象派は好きだが印象派ならなんでも良いというわけでなく、言うなれば「上品な印象派」が好きである。具体的にはルノワール、マネ、モネ辺りだ。ドガは詳しくないが踊り子の絵は好きだ。
上の2点はどちらも、今回のコートールド美術館展で来日している。マネの大作・フォリー=ベルジェールのバーについては20年ぶりの来日だという。書いてて悲しくなってくる。次はいつ来てくれるだろうか。

公式サイトにアップされていた作品リストのPDFを見て大変驚いたのだが、この展覧会、とにかくビッグネーム揃いであった。
ただ単に印象派のビッグネームを網羅しているだけでなく、全体のほとんどが有名画家の作品で構成されているのである。具体的にはマネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラ、シニャック、ピエール・ボナール、ルソーといったところである。もう書いててくらくらしてくる。
大抵の展覧会というのは、そこまで有名でない画家の、そこまで有名でない作品との出会いが多数を占める。最後の方に有名な大作がちらほら、というのが常だろう。ここまで豪華なメンツが揃った展覧会は非常に稀である。
自分の好みドンピシャで、有名画家の作品見本市状態という、またと無さそうな機会が潰えてしまった事が惜しくてたまらない。
(余談だが、この上をいくビッグネーム揃いの展覧会「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が3月から東京・上野で開催される予定であったが延期になっている。こちらは何とか開催されてほしいところである)

そもそも、なぜここまで有名作品を沢山借りてくることが出来たのかというと、コートールド美術館が大規模改修のため2018年から閉館している為である。イギリスの人には悪いが、まだしばらく、もしくは数年後くらいにまた改修してくれてもいいんですよ、なんなら収束するまで日本で預かっときますよ、というような気持ちになる。日本にあっても公開されなければ意味がないのだが。書いてて悲しくなってくるが。

個人的に行きたかった美術展では、同じ神戸で終了が早まったゴッホ展と、このコートールド美術館展のみ見ることができなかった。ほかの展覧会については丁度ここ何日かで続々と再開されており、中には会期を延長するものもある。嬉しい限りである。

私は、絵を、美しいものを見ることだけが唯一の趣味であり、一番の楽しみである。
過去にはロックバンドのライブに行くことが生き甲斐で、その「楽しい」という言葉に収まらないくらい満たされる2,3時間のために、他の時間の全てを耐えてきた時期もあった。そして自分がそうだったからか、SNSでは同じような人を沢山見る。
家で出来ない趣味、足を運んで肉眼で見る事に意義のある趣味を持ち、それにより生きながらえている人には辛い日々が続いていると改めて思う。
働き方など、今後に良い変化をもたらした部分もある(もしくは今後出てくる)とは思うが、出来ることならばこういった楽しみの場においては、元の世界に戻ってほしいと願わずにはいられない。人気展の大作の前に出来る人だかりが恋しくてたまらない。

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