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2020年 展覧会巡り総括

なんだかまた暗雲立ち込めてきた感じがすごい中、もう師走になりましたね。
今年はですね、行くつもりだったけど見に行けなかった展覧会がいくつかあったので心残りが強いんですが、振り返ってみるとその割には結構な数を見ていました。

2020年 行った展覧会リスト
・みんなのミュシャ ミュシャからマンガへー線の魔術
・開館記念 福美コレクション展 (後期)
・カラヴァッジョ展
・美人のすべて
・フランス絵画の精華 ルネ・ユイグのまなざしー大様式の形成と変容
・いちからわかる円山応挙と長沢芦雪
・若冲誕生〜葛藤の向こうがわ (前期)
・メスキータ展
・大観と春草ー東京画壇上洛ー (後期)
・没後50年 浪花の女性画家 島成園
・ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
・生誕160年記念 アルフォンス・ミュシャ 創作の軌跡

正直こんなに見たのは初めてなんですが、こうなったのも年始に日本画に目覚めてしまった結果でして、日本画は何せ日本に沢山ありますから見始めるとキリがないですね。行きたいと思う展覧会の数が膨大になりました。
あとミュシャに始まりミュシャに終わってるのが面白いですね。ジェラピケのコラボドレスも買いました。もったいなくて全然着れてないけど。

多分今年はもう展覧会行かないと思うので(たぶん)、今回は今年見た絵の中から印象的だった絵・特に凄かった絵を紹介しようかと思います。まずは印象に残ったものから。

・「大運河のレガッタ」カナレット
於:ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

とてつもなく凄そうだなとは行く前から思っていたロンドン・ナショナル・ギャラリー展、予想通り物凄かったです。絵のオーラとかパワーを浴びすぎてめちゃくちゃ疲れました。翌日もぼーっとしてた。
こちらはヴェネツィアの船レース・レガッタの模様を描いた作品。
ブリューゲルのような細かさと精密さで驚きました。アートスコープで見ると、肉眼ではわからなかった部分にまだ人が居たりと更に楽しめます。
こちら、ただ細かいだけでなくヴェネツィアの当時の街並みが忠実に描かれており、町の再建
時に参考資料として使われた程だそうです。


・メスキータ展

「ワシミミズク」サミュエル・メスキータ

メスキータは、だまし絵で有名なエッシャーの先生だった人です。雑誌の表紙や挿絵などにおいても活躍したそうな。
展覧会の殆どがこのようなスタイリッシュな版画で構成されてました。物によっては不気味だったり、オシャレだったりと様々。版画はあまり見ないので個人的には新鮮でした。なので作品単体というより、展覧会全体が印象に残っています。
グッズの実用性・オシャレ度合いはピカイチでした。お土産にTシャツを買ったら喜ばれた。

・「桃実」小林古径
於:大観と春草ー東京画壇上洛ー

昨年10月、京都・嵐山にオープンしたばかりの福田美術館の所蔵作品です。
なんと殆どの作品が撮影可、SNS等へのアップも自由という大変現代的な美術館です。美術関係の記事を書くとき、まずパブリックドメイン探しに苦労する者としては有難い事この上ないです。
こちらは単に可愛かったのでよく覚えています。水色が入ってるのが不思議ですよね。まだ青いという訳でもなさそうだし。みずみずしい印象を与えますね。

・「虎図」円山応挙
於:いちからわかる円山応挙と長沢芦雪

こちらは福田美術館のすぐ近く・嵯峨嵐山文華館にて見ました。こちらも殆ど撮影可・アップ自由の懐深めスポットです。
全然怖くない。可愛い。ほぼ猫ですよね。
この当時日本に生きた虎はいなかったので、毛皮や絵画などを参考にして描いていたそうです。また同じネコ科であることは分かってたんでしょうかね、猫も参考にしたそうな。猫に引っ張られすぎでは。
ちなみに芦雪の虎もなかなかファニーでした。

・「富士巻狩図屏風」円山応挙
於:いちからわかる円山応挙と長沢芦雪

左隻

右隻

右隻 拡大

応挙からもう一点いっちゃいます。
源頼朝が行ったとされる狩の様子が描かれていますが、富士山と人間の大きさの違いができるだけリアルに表現されてます。富士山の雄大さが際立つ。細かい絵って見るのが楽しいですね。

ここから先は今年見た中で特に凄かった絵をインパクト重視で3枚選びましたので、ランキング形式でご覧に入れようと思います。

3位 「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」ウィリアム・ターナー
於:ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

何よりまず光の表現が凄かった。さすが風景画の巨匠ターナーですね。絵が眩しいんですよ。画像じゃ全然伝わらなさそうでもどかしいですけど。これこそ実物を見る甲斐に富んだ作品です。大きくて迫力があります。
あとは水面の精霊達や太陽神アポロン(太陽の周りの線がアポロンのシルエットとされています)などの描写の素晴らしさたるや。どうやって描いたんでしょうね。筆さばきを見てみたい。
この小ささではなかなか伝わらなさそうでもどかしいので、ぜひ調べて見てほしい。というか大阪では1月末まで展示されてるので関西人は見てくれ。

2位 「睡蓮の池」クロード・モネ
於:ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

正直に申しますと、モネのことは完全に舐めておりました(バカ正直)。
いや好きなんですけどね、パワー系ではないじゃないですか。やっぱり西洋画には見た瞬間のインパクト、動けなくなるような衝撃を求めているところがありまして。絵画鑑賞は(力を)浴びることこそ醍醐味だと思ってますので。その点モネさんはそういうタイプではございませんものね、みたいな気持ちでいたんですよ。

この睡蓮も決してパワー系ではないんですけど(まずパワー系っていう言い方何なんだろうね)、これを見て思ったのは、モネの絵は窓だな、という事でした。額縁が窓枠で、その先に本当にこの風景が広がってるように思えるんですよね。
見た瞬間本当に動けなくなって驚きました。ずっと見ていられそうでした。
他の睡蓮もいくつか見た事があるんですが、さすが超大手美術館が持ってるものは違いますね。今まで見た中ではぶっちぎって最高でした。

1位 「駅路之春」木島櫻谷
於:開館記念 福美コレクション展

福田美術館所蔵の作品。
年始に見たんですが衝撃を受けまして、この作品がきっかけで日本画に目覚めました。それまであまり興味がなかったんですけど。
桜の花そのものを描かず、散っていく花びらと木の幹のみが描かれています。全体は元々金箔なのですが、上から絹を張ることで光を抑え、それが春のうららかな光を見事に再現しています。
また一休みする人々も後ろを向いていたり、かなり端にチラリと顔が覗くだけというかなり変わった構図になっています。表情は穏やかで、きっと過ごしやすい気候なのだろうなと想像できます。
割と大きな屏風絵で、前に立った瞬間この世界に引き込まれる感じがしました。この絵の前だけ春うららでした。本当に見事でした。
こちら、年明け1月11日まで福田美術館にて再度展示されておりますので、ぜひ一目見ていただきたいです。私もまた見たい。



ターナー、モネを抑えてあまり一般的でない日本画家を1位に据えるという結果になっておりますが、こういう事があるから面白いなと思います。マジで誰?みたいな人が物凄い作品を残している事が普通にあります。

完全に余談なのですが、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展を見ていた時かなりひどい貧血を起こし1時間半ほど休ませていただきまして。
昼過ぎの時間帯で予約したものの結局夕方になって後半を急いで見る羽目になり、2位の睡蓮など見た時は閉館まで残り15分ぐらいでした。その後にトリとして控えていたゴッホのひまわり、完全に慌てて見ました。時間を気にせずフラットな状態で見たらもっと色々感じ取れたのではないかと思えてなりません。ランキングも変わってたかもしれん。
今回ほとんどロンドン展から選んでる割にメインのひまわりはどうした、と言いますとこういった事情でした。本当にリベンジしたい。

最初に書いた心残りと言いますとコートールド美術館展とゴッホ展のことに他ならないわけで。フォリー=ベルジェールのバーと糸杉を見逃して大変に悲しく、コートールド展など中止に際してわざわざ記事1本書きましたが、他にたくさん素晴らしい絵を見れて、まあ良かったな楽しかったなというところです。自粛があった割に過去最高の点数を見ているしな…。

海外の所蔵作品はまだしばらく厳しいかなと勝手に思っているのですが(今年見れたものはコロナ以前に日本に来ていたものと思われるので)、しばらくは日本画とか、西洋画も印象派などは日本にも良いのいっぱいあるみたいですし、色々楽しみつつ夜明けを待とうかなという心持ちでおります。
来年も美術にどっぷり浸かれたらいいなと思っております。ではまた。

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