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女子高生×ミニチュアハウス

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後藤葵はミニチュア作りが大好きな女子高生。 つらいときも、悲しいときも、ミニチュアを作っていれば、すべてを忘れられる。 そんな葵のミニチュアが注目を集めて、人生が大きく動き出す。…
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2024年6月の記事一覧

愛なんか、知らない。 最終章②愛の足跡

「ごめんなさい、お待たせしちゃって」  総白髪でぽっちゃりしたおばさんが、エプロンで手を…

凪
2日前
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愛なんか、知らない。 最終章 愛を知る家 ①哀しみの乗り越え方

 人生で、つらい思いをする回数って決められてないのかな。  もし決められてるなら、私はも…

凪
4日前
5

愛なんか、知らない。 第8章⑨いつか、笑顔でさよならを。

 純子さんのお見舞いに行った翌日。  朝、庭で植木の水やりをしながら、純子さんの「新しい…

凪
5日前
4

愛なんか、知らない。 第8章⑧やさしい時間

「それじゃ、葵ちゃん、一人で家にいるわけじゃないのね」  純子さんは心底ホッとしたような…

凪
6日前
9

愛なんか、知らない。 第8章⑦「ただいま」も言わずに。

 病院から帰って来た時は、既に9時を回っていた。  真っ暗な家の中。出かける時は一か所だけ…

凪
7日前
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愛なんか、知らない。 第8章⑥予期せぬ知らせ

 優がアメリカに帰ってしばらく経ったころ、お父さんから「今月、ボーナスが出たから、お金を…

凪
8日前
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愛なんか、知らない。 第8章⑤さよなら、また会う日まで

 優は立ち止まって、私の顔を見た。 「葵のミニチュアはすごいんだから。人を感動させる力を持ってるんだから。葵の世界は、誰にも壊せないから。そんなやつのせいで作れなくなっちゃうなんて、ホント、悔しくて」  私はなんて答えていいのか分からなくて、うつむいた。 「私、高校の時、葵にミニチュアを教えてもらって、どれだけ救われたか……。あの家にいる時も、豆本を作っている時間は自分でいられたんだ。親から冷たくされても、妹がかわいがられるのを見てても、『次はどんな豆本作ろう』とか考えて、

愛なんか、知らない。 第8章④思いがけない訪問者

 やっぱ、ミニチュアの仕事、やめようかな。教室もやめよっか。人数も減っちゃうし。  そん…

凪
10日前
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愛なんか、知らない。 第8章③さよならの連続

 心が去って一週間後、井島さんが家を訪ねて来た。  今後のことで、会って相談したいって言…

凪
11日前
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愛なんか、知らない。 第8章②失った色、失った光

 リビングのソファに腰を下ろす。  ああ。また一人になっちゃった。しばらく涙が流れるに任…

凪
12日前
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愛なんか、知らない。 第8章 旅立ちの家 ①春、旅立ちの家

 今って、何月だっけ。  私は縁側に座って庭をぼんやり眺めていた。  庭の木は青々と茂って…

凪
13日前
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愛なんか、知らない。 第7章⑬にせものの家

 どういうこと? どういうこと?  私、圭さんに「夜の音楽室」を見せたっけ?  ううん、一…

凪
2週間前
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愛なんか、知らない。 第7章⑫まさかの裏切り

 圭さんの部屋に行った帰りの電車の中で、日本クリエイター展のホームページを検索した。  …

凪
2週間前
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愛なんか、知らない。 第7章⑪胸騒ぎ

 そんなこんなで、ミニチュアを作ったり、教室やワークショップで教えたり、学校に行ったり、慌ただしく日々は過ぎていく。  あれから、心とは何となくギクシャクしてて。一緒に食事をしてる時も、沈黙が多い。心は、完全に気づいてるよね。何も言わないけど。いつか、ちゃんと話そう。  で。ついに。  来ちゃった。圭さんの部屋。  まさか自分が、リアルに「……来ちゃった」をする時が来るなんて。  あの夜から、二週間になる。  急に来たら驚くかもしれないけど、ちょっとだけでも顔見たい。圭さん