見出し画像

月例落選 俳句編 2022年10月号

投函したのは6月29日。27日に関東地方に梅雨明け宣言が出た(その後、「あれは違っていたかも」というコメントが出たが)。仮に27日に梅雨が明けたとすれば、平年より22日早く、統計開始以来最も早い梅雨明けだった。

題詠のお題は「素」。「素」という文字を見て、「素裸」しか思い浮かばなかったのは、たぶん暑さの所為だ。題詠は二句投稿できるのだが、二句とも「素裸」は流石にいかがなものかと思い、無理矢理「素顔」で一句詠んだ。

素裸を見せるタイプの責め道具

汗みどろ素顔顕る丑三つ時

近頃、「性犯罪」という言葉をよく目にする。私が子供の頃に頻繁に耳にして、近頃聞かなくなった言葉に「不純異性交遊」というのがある。子供の時分のことなので、その時は何とも思わなかったのだが、今になってみると「不純」ではない「異性交遊」というものがあり得るのかと素朴に疑問を抱く。妙な言葉は淘汰される。故に「不純異性交遊」も消滅したのだろうと納得できる。

世間は不純だらけなので、自分や他人の裸を公衆に晒して何がしかの商売をしようという人が少なくないらしい。しかし、商売のネタになるものは何かしら希少性のあるものだろう。価値というものは希少性に宿るのである。暑苦しいときに暑苦しいものを見せられると、時にそれは拷問のような作用をもたらす、という場合もあるのではないか。

暑くて寝苦しい夜に、ふと目が覚めると汗みどろの誰かの素顔があった。という怪談のような話もあるかもしれない。

やはり暑すぎるというのはよくない。やはり温暖化対策というのは誰もが真剣に考えて実行しないといけない。毎日の暮らしの中で、CO2の排出抑制には誰もが一人残らず細心の注意を払うべきなのである。CO2排出に関して一番いけないのは戦争だそうだ。たいてい兵器にCO2削減は考慮していないし、何より火器をこれでもかというほどに使い、爆発や火災をこれでもかというほどに引き起こす。平和が何よりだ。

雑詠は以下の3句。

鼻歌で道を拡げる夏の夜

薪能ヤマは寝落ちの5分過ぎ

闇雲に裸を見たいわけじゃなし

音痴だ。しかし、音楽が嫌いなわけじゃない。自分では意識していないのだが、よく鼻歌を歌っているらしい。家人からよく注意を受ける。「気持ち悪いからやめなさい」と。夜、駅から自宅へ向かう途中、たまに前を行く人が突然走り出すことがある。逆に立ち止まって道を譲ってくれることもある。2年ほど前の夏のこと。前をヒールの高い靴を履いた人が歩いていた。少し下り坂になったところでその人が崩れるように転けた。立ちあがろうとして、また転けた。このままでは私が前に行けない。しかし、今は安易に女性に触ることは許されない時代だ。どうしたものかと思いながら突っ立っていた。3回転けたところで手を貸そうと身体が少し動いたら、ものすごく怖い顔で睨まれた。仕方なく、カニ歩きで傍を通り抜けて家に帰った。脚力が衰えたらハイヒールを履くべきではないし、履くつもりならそれ相応に脚力を鍛えないといけない、とその時は思った。しかし、今こうして振り返ると、あの時も私は何か歌っていたのかもしれない。

たまに能や狂言を観に出かける。たいがい途中で寝落ちする。寝るくらいなら観にいかなければよさそうなものだが、いろいろあって、観にいかないといけないときがある。ここに挙げた句を詠んだ6月にも狂言の会があり、舞狂言「蝉」で寝た。こう言うとナンだが、気持ちよかった。

読んでいただくことが何よりのサポートです。よろしくお願いいたします。