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1985年2月22日 長距離列車の乗車券を買う

朝食代わりに昨夜屋台で買ったパイナップルを食べた。葉のところにたくさんの蟻がついていたが、これは甘い証拠と思い、水道でさっと洗ってナイフを入れた。みずみずしくて、いいにおいがした。期待していた通りの味にすっかり満足した。

鉄道の切符を買う金がないので、T/Cの換金のために先日利用したアルメニアン通り(Armenian St.)のコーポレーション銀行へ歩いて行った。まだ時間が早く、開店前だったので暇つぶしに近くのチャンドラ・ボース通りに並んだ屋台を見て回った。驚くほど多種多様な商品がならんでおり、日常の生活に必要なものはほぼここだけで賄える。日用雑貨、衣料品、食料品、何でも揃うのである。ここではビジネス・アワーが午前10時から午後2時頃までのようだ。10時すぎに銀行に行くと今度は開いていた。今度はまっすぐに2階へ上がり、ガラス張りの部屋へ直行した。そこの行員氏は一昨日に会っただけなのに、私の顔と名前を覚えていてくれて、部屋に入るなり
"How are you, Mr. Kumamoto?"
と来た。一昨日と同じように手続きを待つ間、いろいろ話をしてくれて、私が金融機関に就職することがわかると、話は日本の銀行のことやキャッシュカードの利用のされ方などにも及んだ。彼は数年前に第一勧銀のシンガポール現地法人が為替取引で大穴をあけたことまで知っていた。あたりまえのことなのかもしれないが、世界は確実に小さくなっているような気がした。

銀行で現金を手に入れると、中央駅へ急いだ。明日、この街を去ることは決めたのだが、何処へ向かうかはまだ決めていなかった。取りあえず駅で気の向いたところへ行こうと考えていた。ところが、駅の出札窓口の前で、そうした気まぐれは許されないと悟ってしまった。インドの他の駅がどのようなシステムになっているのか知らないが、ここでは列車ごと、座席の等級ごとに出札窓口が別になっているので、今回のような気まぐれは出札ビルを1周することを意味するのであった。しかも、どこへ向かう列車も指定席は3日から1週間先まで予約が一杯なのである。さらに付け加えると、窓口の職員の態度は民営化が間近に迫る以前の国鉄職員よりも横柄で不愉快なのである。しかし、下手に職員の機嫌を損ねては乗れる列車にも乗れなくなってしまうといけないのでひたすら我慢する。どうしても明日、この街から出たいので、ここから北か内陸へ向かう列車で明日の予約が可能な列車を求めて出札ビルのなかをさんざんうろうろして、やっとバンガロール(Bangalore)行きの 1st Class Chair という席の切符を手にすることができた。117ルピーだった。

このあと、郵便局へ行って日本へ絵はがきを出そうとしたら、料金が2.70ルピーもするので手持ちの現金を整理してから出直すことにした。なにしろ、10枚も出すので郵便料金もばかにならないのである。今日はこのまま宿へ戻り、荷物の整理などで時間をつぶした。やっと明日は別の町を歩けるのだ。

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