人心の無いものの果て ~航海士の野望と挫折 解説~

先日書いた歴史小説ですが、歴史背景などがわからないと難しいですし、小説本文だけですべてがわかるほどの書く力がまだ持っていないと思うので、歴史小説を書いた後は、今回のように毎回解説をつけようと思います。

この時代背景は、歴史の教科書でも出てくる大航海時代と呼ばれているところで、世界一周を初めてして、南米最南端の航路「マゼラン海峡」を発見したというマゼラン艦隊を取り上げました。これを取り上げたのは、艦隊の提督だったマゼランが途中のフィリピンで命を落としたという所です。

フィリピンという東南アジアで起こった事件と、この航海でマゼランの行動や心境などをいろんな資料で見ると、面白いことがわかりました。多分この人は職人気質の航海士で、人を統率したりする能力が弱かったので途中で死ぬことになったのがわかります。

出身のポルトガルで相手にされず、隣のスペインで認められて艦隊ができたのに、部下にあたるスペイン人たちとうまくいかないのが不幸の始まり。言ってみれば、中国人か韓国人のトップに仕える多数の日本人というような状況で、長期間大海原の閉鎖された社会生活を共にする中で、自分の国のやり方を強要したりするので、不満が溜まったと言うのは想像できます。そのあたり上手く人心をつかむやり方ができれば、チームが一丸となってもっと順調に事が運んだのでしょう。

結局途中で起きた反乱はうまく収めて表向きは成功したように見えましたが・・・。

どうにかフィリピンのセブ島まで到着し、現地の王とも仲良くなったまでは良かったのですが、そこでどういうわけか「勘違い」をして、宣教師のように神(キリスト教)の教えを無理やり押し付けようとしました。逆らおうとすると武器をちらつかせて恫喝してしまいます。 文化水準が違うので、舐めてかかった。だからマクタン島に少人数でおびき出されて、数の力で殺害されてしまった。ということですね。

ところで、ここは資料では確認出来なかったのですが、私は彼に野望があるのではと見たのです。普通なら一息ついたらすぐに出発して、インドネシアにある香料諸島で当時ヨーロッパで大変価値があったスパイス類を大量に仕入れて、本国に戻る事になり、その結果は非常に大きく、彼の扱いがさらに上になるだろうし、持ち帰ったスパイスで大儲けできたのです。(彼の後を引き継いだフアン・エルカーノが行った事ですが)

それをしなかったのは、あわよくばこのフィリピンの支配という「野望」をもくろんだのかなという事です。当時のフィリピンは島ごとに小さな王がいて、ちょうど西側にあるボルネオ島とのつながりがあったそうです。ボルネオ島を含めてインドネシアの島々でこの頃にはすでにイスラム教の影響を受けていたところも多く、マクタン島のラプラプ王はムスリムだったという資料もありました。そこでキリスト教を押しつけようとするマゼランとは合うはずもないでしょう。

マゼランは、当時のフィリピンの島々の国の武器が竹やりの様なものしかなかったので、余裕で勝てると思ってたようで、本気で小さな島の王たちを従えて、この地域の総督の様な地位を狙っていたと考えましたので、そこは創作で書きました。

結局マゼランの死後100年もたたないうちに、スペインから支配の手がフィリピンに行きますので、十分あり得える話です。ただ資料が見つからなかったので、解りません(想像)ですが、ひょっとしたらスペイン王からそういう許可を事前にもらっていたのかもしれません。

しかし助けてももらえなかったのは、本人が友好的だと思ったり部下は全部従っていると思い込んでいたけど、本当はみんな彼のことを嫌っていたという事なのでしょう。もし彼が信頼できる優秀なブレーンがいてその人物がうまく調整役をしていれば、途中で死ぬ事無く、うまく航海が成功したように思いました。

#解説 #大航海時代 #マゼラン #フィリピン




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