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兵庫県での内部告発事件から考える 『人事労務のあるべき姿』 とは?

こんにちは!クマ吉です🐻
今回は、直近の兵庫県での内部告発事件に関するニュースをずっと見ていて、個人的に感じたことを記事にしてみます。

まず、この一連の出来事において、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りします。

また、クマ吉自身が働く人に関わる仕事に携わっている身として、当事者やご家族、その他周辺関係者の方々のことを思うと本当に心が痛く、どのような経緯や事実があったとしても、働く人が亡くなるということは絶対に起きてはならないことだと強く認識しております。

なお、このnote記事については、事件そのものに対する個人的な見解等を述べる趣旨では全くございません。

自身の仕事(人事労務・社労士業)に当てはめたときの大切な考え方について、本音ベースでまとめたものであることをご理解のうえ、最後までお読み頂ければと思います。

それでは、具体的にお話していきます。

労働者という立場はやっぱり弱い、という認識を持ち続けることの難しさ

このニュースを見ていて最初に感じたことは、『労働者個人の立場というのは、周囲が考えている以上に弱いものである』という点です。

会社や組織の不正行為等に関わる内容について、労働者が一個人で関係機関等へ相談・報告・通報などを行う場合、それに伴う労働者自身に対する人事評価や報復行為等の潜在的なリスクは当然大きなネックといえます。

これは、内部告発であろうが、ハラスメント相談や個別の不正報告であろうが、その内容の大きさや相談先、相談方法を問わず、同じことがいえると思います。

一方で、本来内部通報などの制度は、実際に問題が悪化する手前でその火種を把握することにより、早い段階で適切な対応を進めることでその問題の深刻化や表面化を回避する、といった目的があります。

しかし、通報等をする側の労働者としては、先ほど挙げたリスクを感じる人も多いはずであり、「自分にメリットもないから黙っておいた方がいいよね」とか「関わらない方がいいや」と判断する人も多いことでしょう。

ただ、そのような背景がある中でも、「これは当事者や会社、社員みんなのために、自分が通報・相談しないと」と意を決して、自身のリスクをわかった上でも通報・相談してくれる労働者は実際に結構います。

そして、やはりここで一番大事なことは、このような強い決意で通報・相談等をしてくれた内容を受けつける側の人間が「この通報・相談者は一労働者なので非常に弱い立場にある」ということを絶対に忘れないことです。

これさえ忘れなければ、相談等を受けた後のプロセスのなかでも大きな支障が起きづらく、本来のあるべき改善等の対応も上手く進められるケースが多いです。
※もちろん相談内容が事実と異なる可能性もあるので検証プロセスはきちんとやる前提です

しかし、この相談等を受けて対応する人も、会社や組織から雇われているケースがほとんどなので(外部窓口であっても報酬をもらう先は会社や組織)、対応プロセスが進んでいくうちに無意識的に会社・組織寄りの考え方や対応に偏っていきがちなこともあるあるだったりします。

以上から、まずは「労働者の立場は弱い」ということを忘れないことが大切と理解しながらも、それを維持するのは非常に難しいことでもあるので、改めて対応される方々はこのことを強く意識できるように振り返る良い機会になればと思っています😉

「労働者からの個別相談の対応」で大事なポイントは3つ

クマ吉は社労士と人事労務担当として、これまで数多くの個別の労務相談を受けて対応してきました。

ちなみに、特にクマ吉は一般的な社労士や企業内の人事労務担当と比較しても圧倒的にその実経験が多いと思われますが、その理由は「社労士 × 企業人事・労務」という形での一定以上の経験年数を持つ人は、そもそも世間で多くないからだと考えます。
※普通はどちらか一方の経験に偏るケースが多いはずです

具体的には、社労士として顧問先企業からの労務相談を受けて企業の外から対応するケースや、人事労務担当として企業内での社員等からの個別相談を直接受けての対応、その他にも、ハラスメント相談窓口、外部・内部通報窓口の窓口担当・責任者など、あらゆるポジションで実際に相談対応をしてきました。

、、、で、そうしたいわゆる労働者個人からの個別相談を受けた場合、クマ吉が考える何よりも重要なポイントは以下の3つです。

①情報管理の徹底
②相談者・関係者への不利益取り扱いの発生防止
③独立した立場による第三者目線でのフラットな対応

一見すると、「どれも基本でしょ😄」と思われるかもしれませんが、実際に対応を進めていくなかでは全てをしっかりと念頭に置きながら、上手くバランスをとって進めていくのはかなり難しいことだと思います。

実際にクマ吉がこれまで対応してきたなかでも、これら全てをバランスよく高いレベルで実践出来ていると言い切れる人に出会うことは稀で、自分自身でも無意識的に薄れてしまう恐れさえ感じながら日々対応していますので、これを機会にクマ吉自身も改めて気をつけていきたいところではあります👍

さて、それぞれのポイントについても、もう少し深掘りしてみていきましょう😌

①情報管理の徹底

これは基本中の基本かもしれませんが、もっとも重要なポイントともいえるのではないでしょうか。

特に、企業や組織内に明確なルールがなかったり、仮にルールがあっても詳細まで決まっていないような場合には、『適切なタイミング』『適切な人(必要最低限の範囲のみ)』への情報共有の運用徹底が出来ているか、改めて確認してみると良いでしょう。

よくあるのが、労働者個人から相談窓口担当へ相談があった際に、関係者ヒアリングなどの客観的な立場による事実確認のプロセスをまだ実施していない段階で、窓口担当以外の人事責任者や役員等へ情報共有してしまうようなケースです。

これは、見方によって「速やかに必要関係者へ情報共有しているからいいことでは?」とも思われがちですが、まだ事実等の必要情報が充分に揃っていない状態で共有してしまうと、混乱を招いたり相談者や周辺関係者に対する不要な先入観を抱かせてしまうことも多いので特に注意が必要です。
※ただし、相談者や当事者等の健康状態や身体等に危険が考えられる緊急性の高い特殊ケースは除きます

例)「あ〜、◯◯さんはそういうことやりそうな人だからね」とか「相談者は会社の文句をよく言っている人だからいつものことだよ」などの不要な印象を与えてしまったりもします

また、客観的な関係者ヒアリングなどの事実確認・把握を進める際には、あらかじめ相談者本人へ「事実確認を進めるうえで◯◯さんには相談内容を共有しますが問題ないですか?相談者のバイネームを出すのは大丈夫ですか?」といったように、了承をとりながら進められると安心です。

以上のように、「どのタイミングで」「どの情報を」「誰に」共有するか、については細心の注意を払うべき重要なポイントです。

逆に、これが出来ていないと②や③にも支障が出てくる恐れも高まりますので(相談したから人事評価を下げられてしまったのでは?といったトラブルなどもあるあるです)、常に意識して対応していきましょう。

②相談者・関係者への不利益取り扱いの発生防止

こちらも重要なポイントではありますが、予期しない形で不利益取り扱いが発生してしまうケースも見られるので、特に注意が必要です。

繰り返しですが、1人の社員が個別の意思で何か改善すべきことを会社側(窓口等含む)へ個別相談すること自体は、周囲が思っているよりもハードルが高く、とても勇気のある行為であることを再認識する必要があります。

また、これは当然でもありますが、個別相談するということはオープンに言えないような内容の会社の課題について、それでも改善が必要だと感じるものがある、ということの裏返しともいえます。

そのため、対応を進めていくなかでは、この相談等の行為そのものを理由とした不利益取り扱い(例:人事評価を低くつける、懲戒処分する等)は絶対にしない(できない)という点を、随時それぞれの関係者へインプットすることも何より大切です。

もし、これが守られないケースは、相談等の対応によってトラブルが発生しやすくなる典型的なパターンに陥っている可能性が高いので、これも改めて徹底できると良いでしょう。

③独立した立場による第三者目線でのフラットな対応

最後に、これも意識的な部分は大きいですが、とても大切なポイントといえます。

何度もお話しているとおり、対応する側も会社や組織に雇われていることがほとんどなので、どうしてもその事実に関わらず会社あるいは上位職の側に立った視点になりがちです。

従って、あくまでも相談等を受けて対応する側の人間は「独立した立場である」という認識を強く持ち、第三者的な目線で事実ベースでの必要情報の収集に注力することが何よりも大事です。

ヒアリング等を実施する際にも、役職や立場に関係なくフラットに事実等を確認することを忘れずに、その場で同調したり感情移入する行為も控えながら粛々と進めましょう。

また、ひとつテクニックをご紹介すると、これまでお話した通りで一個人の労働者はとても弱い立場なので、弱い立場にあえて少し寄り添うコミュニケーション(対応そのものはフラットに)をとることにより全体のバランスが上手くとれることもあるので、対応する人の経験値に合わせてそうした点も覚えておくと良いでしょう。

最後に

ということで、今回は少し難しいテーマを取り扱ってみましたので、やや内容も分かりづらかった部分もあったかもしれませんが、より良い人事労務の実務につながる参考のひとつとなれば幸いです!

でわ、またね〜🐻

クマ吉

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