#呑みながら書きました 掌編書いてみた
名前をください
小さいころに見た夢のような、明るいところから見下ろしている世界の風景を、手元に抑えたいと思ったみたいに、私は山田君を校舎の三階の窓から見ている。中庭になっている、コンクリートの広場で、そこは卒業式や入学式の時に必ず記念写真を撮るような学校でも象徴的なスペースで、思い出のアルバムなんかを開くときは必ず、そのシーンが写ってくるような、そういう場所で、つまり神聖で、ある意味高校生活を意味する場所で、ステータスで、そこに堂々とたむろする、山田君は学校の一軍みたいな人たちの集まりの一人で、そうだとすると、私みたいなクラスのカーテンの裏に隠れてこそこそ友達と話すような学校カーストの下の方に居るような人間にとっては、それこそ神のように遠い存在で、いや、神よ。あれは、あの笑顔は。あのさわやかな笑顔は。いや、神が右手で書いた存在ヨ。私と違って、でも、その存在と同じ空気を吸ってるって、もうそれだけで幸せじゃない? 違う? あ、だとしたら、神は私のために山田君を描いたわけで、神って、神なの? あ、話がそれた。つまり、いまその高校の象徴的な中庭に、神が右手で書いた、美しい笑顔を持つ、山田君が居て、私はそれを見下ろしている。そう、見下ろしている。この構図を考えてみたら、急に悶えてくる。これって、最高に背徳を感じる構図じゃない? ああ、萌えてくる。この関係萌えてくる。あ、山田君が、左を向いた。右を向いているときは右目が見えているの。左を向いたら、左目が見えるの。その瞳の違いを私は丹念に探す。だって、普通右目と左目って違うじゃない? 私は左目の瞼の方が少しだけ重たいの。だから、山田君のそれを探そうとするけど、今日も見つからない。知ってる。完璧な顔なの。神が、そんな間違いをするわけがないの。山田君は右も、左もバランスが最高に良いの。でも、ほくろがあるの。あの白い肌に、黒いほくろが、右目の下のところに、ちょっとだけ、申し訳なさそうに居るの。でも、そのほくろが私にとっては消失点で、全てのものがそこに吸い込まれる場所で、つまり、光も闇も、もちろん、私の欲にまみれた視線だって、全てが。ああ、山田君、素敵ヨ。そのまま、そのまま固まっていて欲しいし、そのまま生き生きと動いて欲しいし。どっちが良いのか、どっちが欲しいのか、いや、こうなったらすべての時間軸に居る山田君を、都度都度私が冷凍保存をしに行けばいいのと、そうすればどちらも叶う。一刻も、永遠も、手に入る。全ての時間に存在する。あなたを。
「おーい、そこの本を片手に眼鏡をかけた、黒髪の彼女!」
と妄想をしている私の山田君が私に声をかけてきた。
「いや、妄想じゃないよ」
と妄想の山田君が私に・・・・・・
「あ、妄想じゃないよ、僕はちゃんとその、眼鏡をかけた黒髪の彼女に声をかけているよ。読者も混乱するから、これは妄想じゃないよと、僕が否定をしておいてあげるよ」
と優しい、山田君が私の行動を、誤解を与えないようにフォローしてくれている///// え?
どま、どちゃ、やばある。ありやぼあうsくあさうらじゃお
「はは、ごめん。そんな分かりやすく混乱すると思ってなくて」
「ど、どうして、私に声をかけてるんですか?」
——それは、分かりやすく言えば、君が一秒ごとに、僕を冷凍保存するからじゃないか? 困ってるんだよ、眼鏡をかけた黒髪の彼女——
山田君がそう言っている意味が分からなくて、私は下を向く。
「なんて、ト書きを書かないで欲しいだよな。君と話しているのに」
「だって、ずっとセリフを繋いでるだけだと、これって小説かどうか分からなくなりません?」
私はなるべく、淑女に見えるように立ち振る舞ってみた。そう、焦っても仕方ない。山田君が言った通り、私は、ちゃんと冷凍保存をしてきたのに、まだ生き生きとしているのだから、彼は本当に人間とは別の存在だったみたいで、ちょっと困っている。
「いや、そうじゃないんだ。ちゃんと、僕だって、普通の高校生をしたかったさ。だけど、どうやら、今日の神様は無茶苦茶をしてみたいらしくって、どうにもこうにもこんな感じなわけだよ」
って、自分で神様って、恥ずかしくないの? 私に与えるべき全権をゆだねさいよ。そうでしょ?
「そうやって、何もかも欲しなくても、僕はずっと前から君のことを知っていたよ」
ドキンとした。どれくらい前から? 山田君が私の事知っていたなんて。それって、かなり前? 私が高校に入学した時に、スカートのすそを長くするか、短くするか迷った挙句、スカートの真ん中を縫って、入学式に行ったときから?
それとも、中学の時に好きな男子が、他の子とうまく付き合ってしまう場面に出くわしたとき、何気ないふりして、上靴を三十個持って行って、彼の目の前で転げて、「ごめん、どれが私の上靴かわかんないだ。ええーん」って言ってた時? あ、やばい、思い出したら凄く哀しくなってきた。また泣きそう「ええーん」
それとも、私が小学生の時に、大好きだった、やまくんの唇が欲しくて、彼が食べたチョコのメーカーと同じチョコを買ってきて、彼の唇を一生懸命再現していた時から? あれって、最高の造形物だったわ。私の才能って、こういうところに出るのよね? うふ。
それとも、幼稚園の時に、好きになった保育士の先生が居て、あの先生の財布に、わざとハートマークのカードを入れた時? あのカードにちゃんとキャバクラの名前も居れたのよ。
それとも・・・・・・
「大丈夫、それ全部だよ」
僕は、君の全部だよ。
え? ト書きに入ってこないで欲しいんだけど
ある意味、君が好きだった、全ての男性が僕でもあるんだ。
わぁ、この状態、読者めんどくさくない? どっちのト書きか分からないじゃない?
そうやって、いつまでも普通を装うつもりかい? 黒髪の彼女。
でもさ、だってさ、
あ、まって、やだ近い。
そうじゃなくて、やだ、鼻が当たるほどの距離じゃ、目が、、目が
眼鏡外すよ。
うん。
って、やだ。眼鏡外すと、私の名前無いから、特徴が、黒上の彼女にならない? それって、もはや誰のことか分からないじゃない?
「だって、君が今まで好きだった全ての男が、僕、山田であるとともに、僕が好きな君は、全ての彼女でもあるわけだから、別に眼鏡ぐらいなくても構わないよ」
や、急に遠くに感じる、そんなセリフを今言わないで欲しい。
あ
唇を奪われたのか、私が奪ったのか、はたまた、もともともそんな話が無かったのか、分からないけれど、山田君をずっと、一秒ごとに永遠に冷凍保存をして、違う世界で私が一人一人の山田君を永遠に過ごしている中、今の私は、生き生きとしている、全ての存在である山田君とキスをして、それから、私は永遠に小さな氷の塊になって、つまり、山田君は私に復習を果たしたということになって、私は、一秒ごとに、この幸福なキスの味を覚えるたびに、凍っていく存在になった。入れ替わってしまって、もう二度と、戻ってくることが無い。こんな不憫な、私の魂ってなんだか哀しいような、苦しいような、もう、絶対に人間になんかなりたくないし、小説の主人公なんかになりたく無いし、今度こそ「名前」が欲しいと思った。どんな名前だっていい。私が生まれ変わるなら、ちゃんとした、名前を、ありきたりな名前でも良いから。お願い。神様。ちょっとだけ。ね?
今度はちゃんと良い子で居るから?
お願い。
「おい、山田。お前、あそこからずっと眼鏡かけた黒上の女に見られてるぞ」
え_?
わ、ほんとだ。あいつだ。
という、いつもと違う文体で書きました。今日飲んだのは福小町と言う、日本酒を美酢で割った謎の飲み物です。(ちなみに、最期どうなるか分からんので、先にこっちを書いております。後で掌編がどうなっているのか、、、ちょっと呑んだあとのことは知りません。お任せします。未来の私に責任転嫁、いったんここでさよなら)
戻ってきました。
やべ、ちゃんと、落とせた。あぶねぇ
文だけの、わけわからんのを書いてみたかったんです。これって、情景もないし、最悪の展開をしているし、物語の筋に、書いている人が感じられるようなやつです。もっとぐいぐい書きたかったけど、ま、いったんここらでおひらきということで。
小説楽しい。面白い。何も考えないの、面白い。わはは。
あ、だめだ。顔が赤い。
もう寝ようと。思う。
おやすみなさい。
2022.06.18 岸正真宙
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