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小説を書こう

 お疲れ様です。同人女です。

 創作と一括りしても様々です。絵、漫画、グッズ、コスプレ、そして小説……どれもピンからキリまであり、今から手を出しても大丈夫だろうか……と億劫になってしまいますね。

 そんなお前に朗報だ。お前が今この記事を見ているパソコンかスマホがあるだろ。
 小説はそれで書ける。
 
備え付けのメモアプリを使えばいいから必要なのはお前の〝魂〟だけだ。それさえあれば小説は書ける。書こうと思った時点で八割書いてる。
 さぁ、推しカプを書くぞ杏寿郎。

 というわけで今回は字書き10年目になる私が小説の書き方というものを解説してみようと思います。
 大雑把に考えるとTwitterも小説と言えます。つまりみんなもう既に最初のハードルは超えてるわけです。小説、簡単。誰でも書ける。怖くない。

【そもそも】
 お前誰なん?って話です。くまいぬです。何冊かオフ本も出しています。

 これです。よろしくお願いします。



①【全編】タイトルの付け方

 全字書きが百回は悩むタイトルの付け方。作品の顔となる重要なものですが、はてさてどう付けたらいいのやら……全く答えは出ません。ですが、世の中の小説を見ると凡そ6通りに分けられます。

1 状況説明

 最も簡単なものです。今の状況がどこにあるか、どうなっているかを簡潔に表します。梅雨のお話だったら「ついり」とか「雨の日」、海のお話だったら「海岸にて」などとても簡単なものです。最も手軽に付けやすく、また失敗しにくいという特徴があります。有名文学ですと「駆け込み訴え」なんかもそうじゃないでしょうか。

2 キャッチコピー or キラーワード

 小説を書こうとした時、もしくは書き終わった後に一番印象に残るシーンをそのままタイトルにしたものです。告白するお話だったら「愛してるって言ってんだろ!」とか「勝手に幸せになってろ!」とかです。作中で一番魅せたいセリフや一文をタイトルにしてもいいですね。「おやすみなさい、よいゆめを。」、「ポケットはいっぱい。」などでしょうか。「走れメロス」とかまさにキャッチコピー!って感じですね。

3 最初/最後の一文

 書き出し、書き終わりは小説の最も重要な部分のひとつと言っても過言ではありません。そんな部分をそのままタイトルに! というやつです。有名所だと「吾輩は猫である」でしょうか。

4 ネタバレ

 昨今のなろうやpixiv小説はこの場合が多いです。大凡のあらすじをタイトルの時点で開示してしまう手段ですね。あと話のオチのその後を書くとかもあります。「この後めちゃくちゃ(ry」系です。

5 有名文学をもじる

 これもありがち。よくもじられてるのを見るのは「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とかでしょうか……コントですけどラーメンズの「銀河鉄道の夜のような夜」とかももじってますね。わりと付けやすいです。エモいタイトルばっかなので。

6 テーマ

 個人的な意見としてはこれが一番付けやすいのではないかな〜と。決まらなかった時にアッ……てなりがちなのがダメですが……例えばテーマを「舞台の果てには花束」としたら舞台っていうか創作って御伽噺みたいなものなので〜「フェアリーテイルに花束を」とか? テーマが「等身大の私という存在」だったら愛とIをかけて「Iの証明」とか……そういう感じで付けます。

 そう、タイトルってね。エモければなんでもいいんだよ。


②【全編】プロットを書こう

 次にプロットを書きます。
 プロットって何? 大雑把な話の流れです。本当に要るのか? 短い場合は起承転結も頭の中に叩き込めますけど長い話書いてると「私は一体何を……?」みたいな瞬間必ず訪れます。後最後に思い付いちゃった展開の伏線を遡って張りに行く……なんて面倒な作業がプロット書いてると起きにくいです。

 先に三幕構成の話をします。
 シド・フィールドは言いました。世の中の最高な作品、実はみんな同じような構成してね?と。
 大体の作品は発端(状況説明)、ターニングポイント(プロットポイント1)、中盤(葛藤)、ターニングポイント(プロットポイント2)、結末(解決)で構成されています。詳しくはこれ読んでください。

 序破急ってご存知でしょうか。序と破の間には明確にターニングポイントが存在します。破と急の間にもターニングポイントがあります。ざっくり言うとこんな感じです。

 さて、大雑把に構成の基礎を叩き込んだところでプロットを書いていきましょう。

1 どういう話が読みたいか?

 真っ先に考えるのはこれです。己は推しカプのどんな話が読みたいか、どんなセリフを言わせたいか、どんな推しが見たいか、それをよく考えます。言わば妄想のターンです。オタクなら得意だろ? そういうの。統合性のないアイデアばかりでいいです。海行かせて〜〜喧嘩させて〜〜キスさせて〜〜そんな欲望を詰め込みます。ひたすら箇条書きに書きます。シーンにならないような些細な動作でも構いません。本編書く時に飽きたらそれ入れれば萌えますよね? そういうことです。統合性なんて今は考えるな。妄想していけ。

2 テーマはなにか?

 この作品で最も伝えたいことは何か? 最も重要な部分は何か? これを考えます。作品の根幹です。「銀河鉄道の夜」だと「ほんとうのさいわいとは何か?」みたいなものです。この話を1000の桁で四捨五入すると何の話になる? みたいなね。「愛の話」「希望の話」「恋の話」千差万別あると思います。決める必要あるか? と思う方も居るかもしれませんが、杏寿郎。よく聞け。お前が推しカプを書く上で一番叫びたい所は何処だ? お前は推しカプのどこが好きなんだ? それだ、それだよ杏寿郎。やはりお前は強い。同人作家になれ杏寿郎。若く無理ができる内に。いいやそうでなくとも。

3 大凡の着地点は?

 どういうオチになるだろうな〜って考えます。「告白する」「永遠を誓う」「死ぬ」「目を覚ます」こんな感じでいいんです。これがあるのとないのとでは今後の苦しみが段違いです。空に輝く北極星のように確かな明かりを見付けましょう。

4 そこに至るまでの障害は?

 物語として成り立つ以上どう頑張ってもそこに障害があるわけです。(※無い場合もあります)
 「告白する」オチなら「どうせ自分なんて釣り合わないと諦める」とか。「永遠を誓う」オチなら「突然別れ話を切り出される」とか。物語の大筋になる部分を考えるわけです。ここもまだ大雑把で大丈夫。

5 プロットを書く

 まず最初に言っておきます。いいか字書き!!!! シーンに一番必要なのはあらすじじゃなくて設定だ!!!! どういうシーンにしたいか、到達地点はどこか、どのくらいの長さか、それだけだ!!!!!!!!!! はい。

 最初に三幕構成のお話をしました。シェフィールドによると、お話は状況説明、ターニングポイント、葛藤、ターニングポイント、結末に分かれるわけです。まずはこの5個を決めましょう。何も難しいことではありません。
 恋物語の定番だとキャラが二人いる(状況説明)→一方が相手のことを好きになる(プロットポイント1)→この気持ちを伝えるか悩む(葛藤)→告白(プロットポイント2)→実は両思いだった(結末)とかです。ね? 簡単でしょう?

 ぶっちゃけ短い話だとこれだけ決めてれば余裕で書けるわけですが、長い話ともなると上手く行きません。
 大体の文字数はプロットで決まります。長い話を書くなら兎に角要素を詰め込んで複雑にする、目標までの道程を長くさせる、妄想したシーンを兎に角詰め込む、この辺りでしょうか。結論はシンプルな方が映えますが、そこまでの過程は長ければ長いほど印象に残りやすいわけです。


 「海に恋心を捨てに行く話」を書くならその旅路の中で他者と触れ合っていく内に恋に落ちた瞬間、それを捨てようと思った瞬間、けれど葛藤した瞬間、電車でガタンゴトン揺られている間にやはり帰ろうか悩んでしまう、やっぱり、と思い直したり、流れ行く景色を見てああそういえばあんなこともあったなぁと思ったり……様々膨らませるわけです。最終的に海に向かって「好きだったんだぞ、バーカ!」と叫んで終わり。
  はい、プロットできました。
 もっと細かく書かなくて良いのかって? 書いた方がいいです。その方がシーン書く時迷わないので。でも最初に言った通り、シーンを書くのに必要なのは設定です。どこにいるか、なにをするか、どうなるか、これだけです。これをひっっっっっっっっったすら積み重ねていったら一本の話になります。
 ね? 簡単でしょう?


③セリフを書こう

 セリフってのは簡単なように見えてとても難しいです。情報だけ連ねさせると説明口調になる、かと言って相槌ばかり挟んでいたら冗長になる。難しい。という訳でサンプルを書いてみました。

「どこへ行くんです」
「熱海の方まで行こうかと」
「今の時期は寒いでしょう」
「どこも同じようなものですから」
「死んじゃダメですよ」
「違います。死にに行くんじゃありません」

 なんだか簡素ですね。それにテンポも良くないです。読んでてつまらないな〜と私は思います。なので、ここをこうしてみましょう。

「どこへ行くんです」
「いえ、その……熱海の方まで、行こうかと」
「そうなんですか。でも、今の時期は寒いでしょう?」
「はは……いや、その。まぁ、どこも同じようなものですから……」
「…………死んじゃダメですよ」
「えっあ、ちが、違います! 死にに行くんじゃありません!」

 一気に「会話」感が増しました。追加したのは記号と相槌です。長くて冗長なセリフの合間に「うん」とか「へぇ」とか挟むだけでも印象はかなり変わります。
 ついでに熱海に行こうとしているキャラクターがなんとなく会話苦手なのかな? っていう雰囲気も掴めますね。

 小説ってのは兎にも角にもテンポが命ですので、音読して綺麗にスラスラ流れるならそれはテンポが良い小説になります。会話文は特に顕著ですね。え、とかあ、とか言葉に詰まったような文字も書いておくと〝っぽく〟なります。小手先の技術、磨いていけ。


④描写を書こう

 貴方の目の前に海があります。それを描写してみてください。

 ……と、言ってスラスラ書ける人間にこのパートは必要ありません。描写は慣れです。書けば書くだけ引き出しが多くなります。
 海を書くなら白く眩しい砂浜、突き抜けるような空の色、太陽の明かりに照らされてダイヤモンドを散りばめたようにキラキラと輝く大海原……こんな感じでしょうか。
 小説って意外と単純なので描写→セリフ→描写→セリフで一生やっていけます。試しに先程の会話文に地の文を挟んでみましょう。

「どこへ行くんです」
 老婦人は静かに聞く。ミホはいえ、と最初に曖昧に笑みを返したあと、暫くの無音に耐えかねて目線をあちらへこちらへと投げながら唇の端をひくつかせた。
「その……熱海の方まで、行こうかと」
「そうなんですか。でも、今の時期は寒いでしょう?」
「はは……いや、その。まぁ、どこも同じようなものですから……」
 ようやく目線を元に戻した時、婦人は随分怪訝な顔をしていた。なにか変なことを言ったか、と急速に回り始める思考を他所に、随分と重苦しい音をして彼女が言う。
「…………死んじゃダメですよ」
 はた、と目を瞬かせてから、ミホはようやく自分が何を言われたのか理解して慌てて首を横に振った。
「えっあ、ちが、違います! 死にに行くんじゃありません!」
 そんなに自分は死にそうに見えたのかと思えば、なんだか泣きたくなった。視界が潤まないようにグッと腹に力を入れる。それでもやっぱり、眉は頼りなく下がった。

 ……はい、こんな感じですかね。描写って結局やりたいことやらせるだけなので簡単です。書いてりゃぽこぽこ出ます。最初と随分印象が変わりましたね。キャラクターに色が付いてきました。

 もうね、ぶっちゃけ書くしかないです。書けば書くだけ「この時にはこういう動き」「この時にはこういう描写」の引き出しが増えていくので、他人の小説を積極的に吸ってください。この描写良い〜!!!! って思ったら書き溜めてください。それが財産になります。パッチワーク!


 さて、ここからは短編、長編に分けて解説していきます。書くぞ〜!!!!!!!!!!!


⑤【短編】1万字の小説を書こう

1 キラーワードを捻り出せ

 兎にも角にもこれです。これですこれですこれです。なにもあっと驚くような度肝を抜かされる一言を考えろって訳じゃありません。小説の軸となる一言を考えます。
 告白する話だったら「好き」とか、別れる話だったら「さようなら」とか、その程度で構いません。兎に角見せ場でドーン! と置く一言を決めます。

 短い話を書く時は兎に角「どう印象に残るか」が命です。勿論ただ日常を描く短編も面白いです。ですが、凡その場合物語には見せ場が着いて回ります。決めるべき場所でどう決めるか、短編を書く時はまずそれを考えましょう。キラーワード無くして見せ場はありません。
 pixivで言うなら間に改行挟んで目立たせて言わせるやつです。決めのセリフ、決めの一言を考えましょう。それだけで書きやすさ3倍くらい違います(※当社比です)

 先のプロットで例を出すと、一番魅せたいシーンは最後海に向かって「好きだったんだぞ、バーカ!」と叫ぶシーンです。次はここへ向かってひたすら書いていきましょう。

2 見せ場までの道程を作ろう

 そうしたら後はもう本能の赴くままに書くだけです。プロットがあってもなくてもこういうシーンが何個あって、それをひたすら書くという作業は変わりません。書きながら考えるか前もって考えるかの違いです。盛り上がりに向けてその下地を地道に作ります。設定、関係性、キャラクター、なるべくそれらの情報を落としがないように連ねましょう。

 今回の場合はミホが電車に揺られて海に辿り着くまでの過程です。老婦人に会って自殺者だと勘違いされたり、不意に景色が綺麗で途中の駅で降りてみたり、恋を捨てるに至るまでの回想、相手への好きだという思いの強さ、そういうものをひたすら書きます。

 全ての物語には見せ場までの繋ぎがあります。急にアニメの最終話を見たところでなにがなんだか全く分からないし感動できませんよね。最終話で感動できるのは、それまでの物語があるからです。短編の場合はなんも複雑なことありません。

 書け、それだけだ。

3 見せ場は停止が重要

 じゃあどうやって見せ場書くの? って話です。まず、上手い演出とは何か。

 ズバリ「止め」があることです。

 アニメの演出を思い浮かべてください。決めのセリフでBGMがふっと消えたり、凄く綺麗な画が映し出されたり……そんなの見たことありますよね? 小説も同じです。それまで流れていたテンポをバチッ! っと止めて、決めの一言、キラーワードをぶち込みます。これだけでなんか良い話になった気がする!

 どうやって止めるんだよ。こんな声が聞こえてきました。ぶっちゃけ正解は無いです。YouTubeで朗読を聞いてみてください。呼吸の瞬間、ありますよね? それからあえて間を置く読み手もいると思います。そういう所をひたすら研究するわけです。試しに話を書いてみましょう。

 海は存外、穏やかだった。ミホはただぼんやりと防波堤から夕日に染まる塩水を眺めて、それからハッとしてゆっくりと階段を降りる。地元じゃ嗅ぎ慣れない潮風が冷たかったから、制服で来たのを少し後悔した。
「————……き、れぇ」
 小さく呟くその声すらしょっぱい空気に溶けていく。ザ、ザ、と真っ赤に染まった砂浜を蹴りながら、少女はまだ泣かないぞと言わんばかりに唇を噛み締めた。傾いた太陽のとろけた海は写真みたいな青色じゃなくって、絵の具を散りばめたように不思議な色をしている。橙、紫、白、赤、黒、それから、青。神秘的で、でもどこか懐かしくって、ミホはこんな綺麗なとこで終われるなら、もうなんだっていいやと思った。
「……わー、」
 漣の音だけが響いているのが気まずくててきとうに声を上げる。掠れた音が余計に寂しさを増長させて、今度こそちょっと、泣きそうだった。もう終わるんだと思ったから。電車に揺られて乗った先で、ミホはこの心を捨てに来たのだから。恋をしていた。ずっと。幼い頃から、宝石のような恋を抱えて生きてきた。ずっとずっと、馬鹿やっててきとうやって、一緒に居られるもんだと思っていたのに。
「彼女なんか、作ってんじゃねーよ、あほ」
 ズビ、と垂れかけた鼻水を啜って、今更すぎる後悔がぐるぐると回って、ああ、ああ。私、好きだったんだって。どうしようもない程、恋をしていたんだって、自覚してしまう。スゥと息を吸う音は、波の音に負けないくらいに大きかった。でも次に夕焼けの海に投げ飛ばす声の方がずっとずっと大きかったから、涙に濡れた息は聞こえないまま。
 初恋の貴方。幼馴染の貴方。あのね、ずっと、ずぅっと。きっと出会ったその日から。

「好きだったんだぞ、バーカ!」

 空の向こうに秒速三百四十メートルで投げた声は、存外簡単に消えてしまった。ポロリと頬を滑り落ちた塩水はすぐに蒸発してしまって、沈む夕日を見ながら明日が来てしまうと、ミホはやっぱり寂しくなった。明日になったら、もうさよならだ。この心と、悲しみと、痛みと、バイバイしなくちゃいけないから。

 ……はい。どうでしょう。殺し文句、わりと際立っていますね。改行のお陰だろという声も聞こえました。うるせぇ使えるもんは使え。
 
一人じゃ分かりにくいのでゲストを呼びます。「海に恋心を捨てに行く話」、同じ殺し文句です。いつもお世話になってますチンチロウナギさん(@always1d10SANC )

深雪は一息に言いたいことを便箋に綴ってから一つ深呼吸をしてペンを置いた。花の模様が描かれた紙の上には、キラキラしたペンで書かれた丸っこい字が、水性のインクが滲んだ跡がひとつふたつとあった。
「……行こう」
決心したような顔で、女は立ち上がった。玄関に置いてあったシュシュで鏡も見ずにポニーテールを作って、はらりと落ちてきた後れ毛をそっと首筋に撫で付けて、彼女は自転車の鍵を握って家を飛び出した。

その日は風の少ない日だった。雲のない晴れた日だった。深雪の漕ぐ錆び付いた自転車は、ギイギイ言いながら面白いくらい速くアスファルトの上を滑った。潮のにおいが一段と強くなる。程なくして海が見えてきて、海岸の近くのコンクリートに自転車は放り投げるように乗り捨てられた。がしゃん、と横を向いた後輪がカラカラと空回りする。
彼女はざくざくと砂浜を歩んでいって、そっとサンダルを脱いで、乾いた砂の上に揃えて置いた。少し沈んだつま先の部分に真っ白でキシキシした砂が乗る。一歩、二歩と海辺に近付くと、寄せて返す波がきゃらきゃらと珊瑚のかけらや貝殻やシーグラスをひっくり返しては足の指の間を擽って遊んでいく。
ずっと頭の中で繰り返していた言葉を舌に乗せて、吐息と一緒に全て吐き出した。
「あんなに好きだった人がもう過去の人なこと、あんなに見つめ続けた物語がもう終わったものなこと、私、まだ信じないままで生きてる 、信じないまま、で、生きて、いけ、る」
つっかえながら、しゃくりあげながら紡いだ言葉は切れ切れで、とてもそうとは思えなかったけれど、それをずっと、信じていたかった。
ぱしゃりとふくらはぎに当たった水の音が鳴る。手に握りしめていた瓶詰めの言葉をそっと波につける。壜に詰めた紙がガラスに触れて乾いた音を立てた。書きなぐったそれを塩分濃度の低い涙と一緒に閉じ込めたコルクが海水に濡れる。そっと手を離して、少し浮かべて、やっぱり、と思い直してもう一度手の中に握りしめた。
おおきく、振りかぶる。せーぇの、と小さく呟きながら伸ばした腕を思いっきり前に下ろす。ひゅん、と飛んだ小瓶が少し遠くの波に落ちていく。唇をぎゅっと噛み締めて大きく吸った息を詰めて、無理やり涙を止めた。
もう一度息を大きく吸って、からからの喉で叫んだ。
「好きだったんだぞ、バーカ!」
言葉は、海に飲み込まれて攫われていった。

 決まってますね〜〜!! 最高〜!!!!

 印象的なシーンを作るためにはテンポが命です。音読して自然とそこでブレスが入るようなら、それは止められている、とも言えるかもしれません。正解はないので、やはり模索していくしかありませんね。

 さて! そういうわけで次は長編を書きます。


⑤【長編】10万字の小説を書こう

1 短編と何が違うのか?

 文字数だろと仰るかもしれませんが、実はちょっと違うのです。短編と違って何が多いか、理由は主に3つあると思います。

 要素が多いか、テーマが多いか、謎が多いか。

 要素というのは単純にアイデアの量です。例えばキス22箇所で話を作るならそこそこ長い文字数になりますよね。これは話を構成する要素が多いからです。額、手の甲、唇……ひとつ5000文字の短編を書いていけばもう11万字になります。

 次にテーマ。これは扱う題材が多ければ多いほど物語は複雑になるので、文字数が増えます。名作文学を取り入れてみるとか。いつも○○の話、だけで終わらせているのに違う要素を組み込んでみると単純にかさ増しされます。

 最後に謎! 謎と言うとミステリージャンル限定では? というイメージがあるかもしれませんが、普通の物語にも謎は多くあります。何故キャラクターはこの時このような発言、行動をしたのか、何故こんなトラブルは起きたのか、物語が始まるキッカケとなったものは何か? そんなものがあるわけです。テーマと同じようにこれも増やせば増やすほど物語が複雑になり、厚みが出るんですねぇ。

 凡そこれらを増やせば長編になります。
 逆に、長編が書けなーい! という場合はこれらが不足していることが挙げられないでしょうか? 改めてプロットを見返して見た時、想定文字数にしては扱う要素、テーマ、謎が少なすぎやしないかと考えてみることも重要です。

2 サブシナリオを作る

 これは上で挙げた要素、テーマ、謎に深く関わってきますが、本筋とは別に進む、サブシナリオを作れば物語に厚みが増します。
 単純に推しカプが各地を巡る話を書こうとした時、サブシナリオとして「推しカプの関係性や愛の重さの変化」を入れると、途端に書くことが増えるわけです。

 こういうとこでも文字数は増えるわけですね。そんなみんないきなり10万字なんて書けるわけがないので、何故文字数が多い小説は文字数が多いのか、という解説から入りました。

 周囲には長編ばっかり書いてる、という人もいれば短編しか書けない、という人もいます。結局人それぞれです。文字数が多い小説は確かに憧れますが、ぶっちゃけ長くて冗長でつまらない話より短くて印象的で面白い話を書いた方が圧倒的に良いです。この良いには世間受けが、というのも入りますが、なにより自分が書いていて楽しい。創作は楽しくやりましょう。

3 こまめな読み返しが重要

 長編を描き進めるに当たって一番の敵は「諦め」です。
 途中で書くのを諦める、クオリティを上げるのを諦める、そもそも原稿のために生活の一切を諦める……様々あります。全部よくないです。特に最後。家に引き篭って外にも出ず飯も食わず毎晩徹夜を繰り返し時折泥のように眠りひたすら同人誌を書いていたオタク〜!!!! 俺。はい。よくないです。生活は捨てないでください。ご飯は食べてください。寝てください。お風呂も入るとスッキリします。

 そういうわけで長い期間話を書いているとどうしても着いて回るのが「諦め」。もうこんなもんで良いんじゃないか、というのが一番良くありません。ですがまぁ諦めの心が湧いてくるのは何も悪いことではないのです。今日疲れちゃったな、寝よう。という日も沢山あります。できるときにできる作業を精一杯する。これを心掛けてください。分かったか極道入稿共。はい……

 個人的に長編執筆で一番重要なのはなにか、と問われたら、読み返しであると答えます。昨日1シーン書いたら今日の午前中、電車の中で読み返す。こういうこまめな積み重ねがエンドマークに辿り着いた時のクオリティに関わってきます。どうせ出すなら良い本を出したい! というのは全世界共通ではないでしょうか? 形になった後に後悔してももう遅いのです。なので、こまめに読み返して、こまめに修正して、満足のできる作品に仕上げましょう。

4 心が折れないために

 正気に返らない。これ重要です。メモしてください。創作は常に狂いと共にあるもの。狂いなくして創作はありません。(※そんなことないです)
 それから無理をしない。これも大事です。勿論無理しないと本は出ないんですけど、生命の危機にまでいかないでくださいね。同人作家、若さを生贄に本を出すな。エナドリで疲労を誤魔化すな。ツケは必ずやってきます。
 最後に、時折自分をとびきり甘やかしましょう。創作とは常に苦しみと共にあるもの。苦しみなくして創作はありません。(※そんなことないです)頑張った自分にご褒美をあげましょう! 限界に! なる! 前に!


⑥質問コーナー

 さて、ここからはありがちな質問を妄想して答えます。

Q.何使って書いてるの?
A.スマホでフリック入力か、キーボードでぽちぽち。

Q.筆が進まない時どうする?
A.お風呂に入る。

Q.作業で一番辛いのは?
A.推敲。読み返し。

Q.辞めたくなったことある?
A.本出す度に二度とやるかって言ってます。

Q.創作テンプレートをください!
A.【テンプレート】
タイトル:

テーマ:
予定文字数:
OP
PP1
PP2
ED
障害:
謎:
あらすじ:
サブシナリオ:

 ここからはマシュマロで聞いた質問です。Twitter遡っていただくと詳しく解説しております。

Q.10万字書く時のシーン数は?
A.2000~6000のシーンを大体30個。

Q.風景描写と情景描写、どっちのが多くあるべき?
A.情景描写。

Q.描きたいシーンと描きたいシーンが繋がらない。
A.「そのシーンが物語にどう影響するか」を考えてみる。


⑦番外編

 ここからは番外編です。創作する上で沢山悩み事があると思いますが、その中のほんの一部を個人的な視点で意見します。

1 承認欲求と付き合おう

 世は正に大SNS時代! いいね! ブクマ! コメント! マシュマロ! 拍手! そんなもんが欲しくて欲しくて堪らない!!!!!!!!
 分かります。どうせやるなら見られたい。褒められたい。チヤホヤされたい。分かります……
 だがしかし、それでは不健康になるばかり。
 昨今Twitterでも散々言われているが、自己肯定感の礎を他人に依存した状態だと、期待した反応が返って来ないときが本当に辛い。貰えたらラッキー、くらいに思っていた方が長く続けていくに当たって楽です。自分の作品を一番愛してくれるのは、自分しかいません。自分の話じゃ萌えないと思ってたって一番読んでるの自分です。自分しか期待した反応を返してくれません。
 貴方がこの話を書いたという事実だけは消えようがないのですから。
 感想来るのは奇跡だと思いましょう。来たら乾季に雨が降ったと思ってください。存分に踊り狂え。

2 神字書きになりたい

 なりた〜〜〜〜〜〜〜い!!!!! なりたいなりたいなりたいなりた〜〜〜〜い!!!!!
 なるには圧倒的な力かコミュ力が必要です。もしくはその両方。まぁ結局……運ですよ……界隈の大手解釈と意見が合わず一生孤独に踊り狂ってる日もありますから……そんな日しかないですけど……フフ……

 大事なのは定期的に情報を更新することです。Twitterに呟く、話をあげる、そうじゃないと増えるもんも増えません。これでも確率が上がるだけで絶対じゃない。SNSに間違いはあっても正解はないのですから。
 伸びる時は伸びる、伸びない時は伸びない! 自分の地雷は誰かの好き! 自分の好きは誰かの地雷! 私は許そう。だがこいつが許すかな!!!!!!!

3 なにはともあれご飯は食べよう

 同人作家、飯を食え。

 米を炊け、冷凍しろ。野菜を食え。

 〆切の3分前に脱稿するの、辞めよう。


⑧終わりに

 さて、ここまで小説の書き方を解説しました。私のやり方ではありますので、勿論古今東西十人十色、様々な書き方があります。これはほんの一例、必ずしもこう書かなくてはいけない! なんてことはありません。私には私の、貴方には貴方の書き方があって当然なのです。

 それでも分から〜ん!!! って時は、人に聞いてみましょう。身近な小説を書く人でもいいし、Twitterの字書きでも構いません。勿論、手の内を明かすようで嫌だと言う人はいます。なので返事がなかった時も良かれと思って投げた感想が邪険にされた時もそういう日もある、と思って落ち込まないことが重要です。


 ところで。私はなんでも答えますので質問があったら聞いてみてください。場合によっては周囲の字書きにも聞いてきます。(隙を見せたから宣伝された)


 それでは皆様! 良き創作ライフを!


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