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鉄急須さわぎ

私は意外と執念深い。

このように書くと、何だか怨念を抱えた妖怪のようであるが、そんな事もない。

かわいいくまでございますわよ。


すみません。思ってもいないことを書くと語尾がおかしくなるんです。

今、自分を「かわいい」と思うように練習しているんです。

3児のパパさんの企画に今度こそ乗りたいがごとく精神の鍛錬に励んでおります。

押忍!


さて、私が懇意にさせて頂いているnoterさんの中に「花丸恵さん」という、とてもチャーミングな方がいる。

丸恵さんの存在は私の中でとても大きなものとなっている。

日々、綴られる、編みこまれる、紡がれるお話たちは伝統話芸のようである。

ある時は軽快に、痛烈に。
ある時はこの時代に生きる普通で不可思議な私たちの日常の1コマを。
ある時は深く、光の届かない水の底まで潜って。
ある時は痛みの伴う、孤独やさみしさを抱えながら。
どのような物語も通奏低音のように流れているのは「愛」であると思いながら。

楽しみに読ませてもらっているのでありますが、上記の記事のコメント欄で私が書いたこと。


ずっと、書こうと思っていたのです。

そう「素敵な急須を手に入れた話」


忘れていませんでしたよ。

ここらで書かせて頂きます。


話は3月に遡ります。

私は前の職場を退職すべく、様々な人々へのお手紙やお礼の品物をせっせせっせと用意しておりました。


あるお店に入りました。たち吉さんという和食器のお店です。

そこで私はお世話になった恩人へのプレゼントを購入しました。

革と布が混在した紺色のカードケースです。

まあ、それはどうでもいいのです。

問題はお会計を待っている間に起こりました。
レジの横で私はある物に目がくぎ付けになってしまいました。

それが、この青い鉄急須です。

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もう「買おう」と決めていました。

恋におちるのは早かったです。フォーリンラブ。
この子を何としても迎え入れよう。狭い我が家だけどおいで。
そしておいしいお茶を入れようと一瞬で心に描いておりました。

もう少し大きいサイズの南部鉄器の急須も販売していたのですが、管理が面倒くさいし、大きさはこれくらいが良かったのです。
いくら店員さんに「鉄分が取れるからこちらの大きい方がおススメです」と言われてもダメです。いいんです。鉄分は確かに貧血気味で足りないけど違うもので補います。中がホーローの扱いやすいこの子にするんです。

追加で購入し、無事に自宅へ持ち帰りました。


あくる日、私は何の意図もなく、深い考えも何もなく、後輩にこの話をしました。そう「私のピーターパーカー」の記事で綴ったあの彼です。彼とはよく雑談をする関係性でした。

「この前さ、素敵な急須を買ったんだ」

「色がお気に入りで、お茶を飲むのも気分が上がるんだよ」

私はペラペラと彼に話しました。彼はいつもの調子で「え?どんなのですか」「どこで買ったんですか?」と質問をしてきました。私はそのまま彼の質問に答えました。


しかし

この時、彼は「これは大変な事になった!」と心中穏やかではありませんでした。

この時の私は、彼の胸中を知る由もなかったのです・・・・。


そして時は少しだけ流れ・・・

退職する時になぜか後輩たちとこの急須の話題になりました。
後輩の女の子の1人がやたらにこにこした顔で「今度その急須で入れたお茶を飲みに遊びに行かせてくださいね」とぐいぐいと言われたことが少しだけ「?」となったのですが、特別気にも留めませんでした。


最近、ピーターパーカーの彼が我が家に訪れ、再び会う機会がありました。(彼はキャンプで使う薪をもらいに来てくれました。)


話しているうちに、ふと、私は急須の事を思いだしたのです。

そうだそうだ。見せてあげよう。

「これなんだよ」と彼に急須を見せると彼は突然フフフと笑いだしました。

私はなんで笑っているのかわからずきょとんとしていました。

彼は笑いながら話し始めました。

いや、これね。危なかったんですよ。
〇〇さん(私の名前)に退職祝いに何あげようかってなって、▲▲さん(後輩のにこにこしていた女の子)が「急須がいいんじゃない?」ってなって、買ったんです。それで安心してたら○○さん(私)が鉄急須を買ったって話をある日俺にしてくれたじゃないですか。

話聞いてる時、もうどうしよー!ってすっごいあせってたんすよ。実は。

すっごいあせりながら気づかれないように聞いてて。終わったらみんなに「全員集合!」って言って。○○さん!急須購入してました!って報告して。急いで返品(笑)
それで急遽違う物へ変更したんです。
あの時話してくれたから良かったんです。みんなであぶね~、すごい偶然!って話題になってたんですよ。だからやたら俺食いつき気味であの時急須の事聞いてませんでした?

全く気づかなかった。

でも、今思えばいつになく彼は急須の事を詳しく聞いていたような気もするし、退職の時の後輩の女の子の笑顔も、その話を聞けば納得がいくものでした。

彼は購入した&返品した商品の画像をスマホで見せてくれました。

確かにほぼほぼ同じ鉄急須。私が買ったものと違う箇所は色だけです。(後輩たちは白をセレクトしてくれていた)

私はこんな(同じ物を買った&送ろうとしていた)偶然と

あの時たまたま(贈り物係を大体責任持って担ってくれる)彼に話そうと思った偶然に


急須で入れたお茶で乾杯した。


季節外れの、退職祝いで頂いたさくらのお茶の香りをほんのりと楽しみながら。




おしまい。

花丸恵さんに遅ればせながらこの記事を捧げます。

いつもいつもありがとう。




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