世界地図が教えてくれたのは、旅をするのを決めるのは結局自分なんだということ
ちりゆくものは何も言わない。
ただ音もなく、主張もせず、ただただ静かに消えていくだけだ。
残されたものは悲嘆にくれる。
涙は乾くことなく、幾度となく頬を伝わる。
私の担当していた利用者さんが急に亡くなることは決してめずらしいことでもない。
私は訪問リハビリテーションを生業として、日々、さまざまなお宅へおじゃましている。
その方は高齢の女性で、夫と2人で景色のよい崖の上に住んでいた。崖からは湾を一望できる。ひとつひとつのおだやかな波が光に反射してきらめいていた。空気