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『神様に一番近い動物』 新しい大人のための童話

神様に一番近い動物

この1週間ほどで水野敬也さんの本を4冊読んだが、4冊の中で一番好きかもしれない。
※下記内容で少しネタバレを含むので読む前の方は読まない方がいいかもしれません。

タイトルにも書いたが、現代の要素が入っていて、物語を読むことで自然と教訓を得られる新しい大人向けの童話だと思った。
もちろん小学生、中学生が読んでも面白いだろうが、実際に働いてみてから読むと違った感想を持つのではないかと思う。

7つの短編が含まれる本で、どの話も考えさせられた。
中でも引っかかっているのは、「愛沢」だ。
この本の他の短編である「お金持ちのすすめ」では「夢をかなえるゾウ」での話と同じように人を喜ばせたいという気持ちを持てと書かれている。
しかし、「愛沢」ではお客様を喜ばせたいので原価ぎりぎりでそばを提供し、自分の給料をゼロにしている愛沢はAIロボットだったという結末になっている。
この2つの物語をあわせると、「人を喜ばせたい」という気持ちを持つことは重要だが、完全な自己犠牲をすることは人間には無理だということなのかなと思った。

「夢をかなえるゾウ」でも自分のほしい、足りないという気持ちだけではだめで、他の人を喜ばせる夢でないといけないとは書かれているが、
人を喜ばせる過程で行う仕事は自分のしたいことであるという前提が含まれていることに気づいた。

「人を喜ばせたいという気持ちを持て」とだけ言われると、「そんなこと言われてもやりたくない気持ちの時はやりたくないよ」と思ってしまうが、
自分がやりたいことで人を喜ばせることを考えるとすればまだ可能性がありそうだと思えてくる。

また違う視点だと、当たり前だけ江戸AIロボットって給料要らないんだなというのを改めて認識した。(※つくるのにお金はかかるし、メンテナンス費用は必要)

作者が何を感じてほしくて、この「愛沢」を書いたのかが分からないので、機械があったら聞いてみたい(笑)

※書影は版元ドットコムから引用しました

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