見出し画像

熱中症対策に経口補水液は飲むな

みなさんこんにちは。

 この記事を書いているのが8月中旬なのですが、暑いですね。とにかく暑いです。
 そんな暑い時期にスポーツを行う上で気をつけなければならないことのひとつに熱中症があります。毎年どこかしかで熱中症になり病院へ搬送されたというようなニュースが流れますが、他人事ではなく、誰にでも起こりうる事なのだと、改めて思います。まだまだ暑い時期が続くので、この記事を読んでいる皆さんも、ぜひ熱中症にはお気をつけてお過ごしいただければと思います。

 さて、そんな熱中症について、日頃熊耳が思っている事、また数年前からツイッターで何回もしつこく言っていることについて、ここで書いていこうと思います。

 今回のお題はズバリ、「熱中症対策として経口補水液を飲むな」です。
 経口補水液と言えば、О塚製薬から出ている、所ジョージさんがイメージキャラクターのものを思い浮かべるでしょう。この経口補水液、実は熱中症を予防する意図をもって作られてはいないのです。今回はこのことについて、経口補水液の意図するところや、脱水症状の起きるメカニズムなどに触れながら書いていこうと思います。

 この記事を読むうえで注意いただきたいのが、熊耳は「熱中症予防として経口補水液を飲むな」と言っているだけであり、決して経口補水液の効能を否定する、あるいは特定の企業に対する批判を知るものではないというところです。利用方法には注意を要しますという趣旨ですので、誤解なきよう申し添えておきます。

そもそも経口補水液とは何か?

 そもそも「経口補水液」と言いますが、これって何なのでしょうか。
経口補水液とは、簡単に言ってしまうと人体の体液に近い塩分濃度で作られた塩水の事です。体が平常な状態で飲んだことがある人は分かると思いますが、基本的に健康な人が飲むと、生ぬるい塩味のする不味い水です。私は好きではないですね。

 この経口補水液、どうしてそんな不味い味なのかというと、体液に近い濃度で作るとどうしてもそうなってしまうのです。では、なぜそういう濃度で作る必要があるのでしょうか。ヒントは高校生で習う生物の話にさかのぼります。

浸透圧?

 高校生物で、細胞の構造や機能についての話をするときに「浸透圧」という言葉が出てきます。浸透圧とは、濃度の高低差がある水溶液を半透膜という、水分子ほどの大きさの物体を通す膜を境として、同じ容器を区切って水を入れた時に、濃度の高い方の水溶液の水かさが上がることを言います。

 例えば100グラムの水に10グラムの塩を混ぜた食塩水(10%食塩水)と、100グラムの水に5グラムの塩を混ぜた食塩水(5%食塩水)では、10%のほうが濃度が高いですよね。この2つを中央を半透膜で区切ったパイプに入れてしばらく放置すると、10%食塩水の水かさが上がります。

 このようになるのは、物体には濃度を均一に保とうとする力が働いているからで、10%の食塩水の濃度を均一化させようとする力が働くことで、水かさの上昇という現象が起こるのです。この辺は、文字での説明が難しく、伝わりにくいため、YouTubeなどで「浸透圧」で調べてみてください。

熱中症による脱水状態

 さて、話がややこしくなりましたが、本題はここからです。
 熱中症というとめまいがする、痙攣する、意識が朦朧とするといった症状がありますが、どの段階でもほぼ共通しているのが「体の脱水状態」です。

 ヒトの体は約60%が水でできています。この体の水分が外に出ていき、生命の維持や正常な人体機能の維持に支障を来たすのが脱水状態です。脱水状態では、血液中の液体成分が外に排出され、血液がドロドロの状態になります。これが、前述の「濃度の高い水溶液」という状態です。

 そうなった場合に、経口補水液を摂取することで、経口補水液よりも濃度が高い体液を薄めようと、体が水分を吸収し、血液や体液の状態を元通りにしようというのがおおよその考え方です。また、その場合に吸収されやすくするための濃度で作っているため、結果として健康体で飲むと美味しくないようにできてしまうのです。

健康な状態で経口補水液を飲むことは、熱中症の予防に効果があるのか?

 今回の話の重要な部分です。
 経口補水液を健康な状態で飲むことが、熱中症予防に効果があるのか否かですが、これは効果がありません。むしろ脱水症状の誘因となってしまいます。

 先程の浸透圧の話を思い返すと、水溶液は濃度が高いものを薄めようとする動きを見せます。健康体の体液と経口補水液の濃度を比べた時、経口補水液の濃度のほうが若干ですが濃度が高いので、体の水分を取られてしまう事になります。そうすると良かれと思ってやっていたことが逆効果となってしまうのです。

 某製品を作っているO塚製薬では、経口補水液を「病者用食品」の認定を受けて販売しており、あくまでも「発熱、下痢、嘔吐等による脱水状態になった際に飲んでください」と表示して売り出しています。健康な人は点滴なんかしないですよね。それと同じようなことなのです。

まとめ

長くなりましたが、この記事をまとめます。
・熱中症予防に経口補水液を飲まない。
・健康体で経口補水液を飲むと、体の水分が外に出やすくなり、脱水症状の誘因となりうる。
・経口補水液を飲むのは、脱水症状が現れた時。
・経口補水液は「病者用食品」であり、平常時の使用を想定してない。
・脱水前の水分補給はスポーツドリンクや水で行う。

 正しい知識と正しい行動で、スポーツ中に起きうるけど、しかし防ぐことができる事故は防いでいきましょう。

 今回の話は、若干読みにくい、あるいは理解しにくいところがあるかと思います。分からないことがあった場合にはコメントなどをお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?