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創作③ エッセイのようなもの 「人間って、面白い」

私は、午前中だけ薬局に勤めている。
それは、本職が昼からの勤務だからだ。いわゆるダブルワークである。
時間が短いので、ほとんどレジに入っている。
そこでは、客と言葉を交わすことが多いが、なかなか面白い人、変わった人が多いなと思う。
例えば。
勤める薬局の向かいにはパチンコ屋がある。
ある日、老人男性が来店した。タバコをくれという。
希望銘柄のタバコを渡すと男性は、
「あんたんとこは、タバコが安くていいなあ」と言う。
どういう意味かと考えていると、
「あそこは1万だしてもタバコが買えん」
そういうことか。そして、
「もう2度と行かん、あんなとこ」
そういうと帰っていった。
次の日、その老人はまた来店した。
「5000円だしてもタバコが買えん」と言って
もう2度と行かんと言って帰って行った。
また、例えば、
ある客が、店内で財布を落とした。
拾った私が店の金庫で保管していると、本人が取りに来た。
その客は、拾ったのが私だとわかると、何度も何度も礼を言い、
ちょっと待ってと店奥に入っていった。
そしてレジをしている私の所に見切りの飲料を持ってきた。
レジを済ませると、お礼だと言って商品を置いていった。
また、他にも、
いつも着たきりの服装で来店し、カップ麺とおにぎり1個を買う客がいる。
そして帰りは、タクシーで帰るのである。
そんな中、とても素敵な女性客が時々来店する。
年は70代だろうか。
背筋はピンとして、小柄なのに気品を感じる。
そして何より常に笑顔を絶やさない。
いらっしゃいませの言葉にも、満面の笑顔で返してくれる。
薬局の一店員に、である。
全てが丁寧なのである。
どんな人生を生きたら、このような境地にたてるのだろうと、
いつも感心し、感謝する。
その笑顔に対してである。
私も、そのような境地に立ちたいと願うばかりである。
他人に感心され、感謝される、そんな風になりたいと思う。

そして私は、人員の少ない本業で、
怒りまくりながら過ごすのである。


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