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オリジナル小説「むげんの宙へ」~プロローグ~

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前書き

・頭の中でずっと描いている妄想の物語を文章・小説にしてみました。以前の記事で作ったカードゲームの子たちです。
・小説を書くのは初めてで、拙い部分や痛い部分が多いかもしれません。
・展開も脳内でこねくり回しているので、謎展開・他作品からの影響とかも想定されます…
・それでも、頑張ってできる限りそのままの出力を目指してみました。読んでくれたなら幸いです。
・続きの頻度は未定です。絵も必要だし、書くのめっちゃ体力使うから…

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■プロローグ・第一話■


「ん…もう朝か、早いなぁ」

少女が目を覚ます。
まだ陽が登り切っていない、そんな時間だ。

「……よし、周りに異常なし。さあ準備。」

慣れた手つきで、体のケアと着替えを済ませ、携帯食料を頬張る。
素早く一通りの作業を終えた彼女は、一息つき呟く。

「なんか、長い夢を見ていた気がするな…
 疲れが取れてないかも。
 まあそんなことより、今日要るものは、っと」

テキパキと荷物を選んで、必要なものだけをリュックに詰めていく。
リュックを背負い、あとは出発するだけ―――だが。
部屋の隅を見やると、大きな一冊の本が目に入る。それは、彼女にとってとても大事なものだった。

「あぶな、忘れるところだった…
 これが無いとね…他は大丈夫そうかな。
 そしたら出よう、今日はいいことあるかなぁ」

この大きな本。それは、彼女の日記帳であり、同時に冒険者の身分を示す重要なもの。
そう、彼女は「冒険者」なのだ。




彼女の名前はリア。
冒険者として生活している少女だ。

「う~む。まあ大した依頼は残らないか。
 …まいっか。単純そうなこれにしとこ」

冒険者とは、街を転々とし様々な依頼を受け、その成果で路銀を得る。そんな暮らし方だ。
しかし、高額な依頼には今回もありつけなかった。

「"ゴミ掃除"ねぇ、またきついんだろうけど…どうにかなるっしょ」

なんてぼやきながらも歩いていく。
今日の依頼はどうやら、戦闘で発生した大量のガレキ掃除のようだ。
ゴミ掃除とは名ばかりの重労働。


そして、依頼先の街へ到着する。
依頼を受けた他の冒険者たちも集まり作業が始まった。
ガレキをすくって、トラックに載せて、運ぶ。単調だが身体を蝕む労働。
最初は渋々作業していたリアだったが、業を煮やしたように突然叫ぶ。

「あ~もう!みんな効率悪いなぁ!」

リアはどこからか銃を取り出し、ガレキの山に向かって構える。
突然のことに周りの冒険者たちがビクッとなった。
しかし、そんなことはお構いなしに続ける。

「危ないんでみんなどいてくださ~い!!
 よし大丈夫…いいか、こんな作業はこうすれば良いんだよ。
 ―――消えろ、リアライズ・バスターっ!!」

リアの手にした銃から、極彩色の光が放たれた。
眩い光が幾重にも重なった光線がガレキを包んでゆく。
そして光が消えた時には、あれだけあったガレキは塵も残さず消えていた。

「ふぅ、一丁上がりっと。簡単だったね。」

この光線を使い仕事を即座に終わらせる。これがリアのやり方だ。
大変な作業が一瞬にして片付いてしまった。
本当なら誰もが喜ぶところだが、周りはざわついている。

「あの耳…あれが獣人か」
「化け物だな。やはり相容れられない…」

周りの冒険者たちは口々に呟きながら、一人、また一人と去っていった。
そして、独り残されたリア。

「………」

でも、特に怒ることも泣くこともない。
リアにとっては、もう見慣れた光景だったからだ。

「獣人」。人に害をなす魔獣の特徴を備えた人。
獣人であり、さらに特異な力を持ったリアは、どこでも畏怖の対象なのだ。

「…さてと、昼は何食べようかな。そこまで余裕はないけど」

だがどうやらリアの興味は、すっかり終わった後に向けられているようだ。


他の冒険者たちは既に帰ったのか、帰り道はとても静かだった。
淡々と報酬を受け取り準備をし、また違う街へ向けてリアは歩き出す。
普段と同じ、慣れたことだ。それでも。

「今日も、いいことなかったなぁ」

空を見上げ、独りごちるのだった。




歩き続け到着したのは、大きな商業街だ。
様々な人が行きかい、賑やかで忙しなさそうにもしている。
武具屋やショッピングモールなどが立ち並んでいるが、リアのお目当てはそれより奥。

「おなか減ったな、くんくん…こっちからアレの匂いが」

人混みをかき分け小走りで進んでゆくと、見えてきたのは小さな屋台。
人が並んでいないその屋台には、「魔獣の串焼き チーズ載せ」の文字が。
その文字列を見た瞬間、リアのテンションが急上昇。ダッシュで駆け込んでいく。

「チーズのっっ!?しかも安い!
 …店員さん、この金全部で、買えるだけ!」

先ほどの作業で得た報酬が、一瞬で消えていった。

「はむっ。やっぱ美味しいなぁ、肉とチーズのハーモニー。
 この繊維質は小竜のやつかな。だから安いのか…
 ま、いいやなんでも。仕事終わりのごちそう最高ー!」


串焼きを頬張りながら、リアは街を歩いてゆく。
街を見て回り、次の依頼を探すのだ。

「はむはむ…なんか良い依頼ないかなぁ。
 …お、なんか珍しく高いやつあるじゃん。ごくん。
 『遺跡の調査』か…いけそ、早くしないと!」

滅多にない高額な依頼。内容は魔獣駆除と遺物の回収、リアにとっては難しくないはずだ。
すぐさま申請し、出発の準備にかかる。
まずは消耗品を補充しようとするのだが…

「やべ、串焼きでスッカラカンじゃん。うまかったけど…
 まあ多分足りそう、ピンチになったら考えよ。
 それより流石にちょっと串焼き多かったな。食料パックに入れとこかな」

買いすぎだった。
とりあえずひとまずの準備を終え、目指すは遺跡。

「久々の高い依頼だしな…ちょっと気を引き締めたいな。
 にしても遺跡か、どんなんが眠ってるんだろう…」




目的の遺跡に入っていくと、辺りは真っ暗。
懐中電灯なども支給はされていない。早速の試練だ。

「どーすっかな。うーん…
 そうだ、あれ使おう。」

何かひらめいたようだ。
ガサゴソとリュックをあさり、串焼きの串を取り出した。
そして、串に銃を向ける。

「これするの、なるべく弱くがコツなんだよなー
 ――燃えろ、プチ・リアライズ」

銃からの光線を、串の先端に纏わせるのだ。
だが、すぐに消えてしまった。

「ムカ。もうちょい微妙に強くか…
もっかい。プチリアライズ~」

先ほどよりも微かに強い光が放たれた。
今度はすぐに消えはせず、ロウソクのように輝き続けている。成功だ。
なんとか、これで凌ぐことができそうだ。


串の明かりを頼りに、遺跡の探索を続けるリア。
その後は難なく奥まで進んでいくことができたようだ。
探索する中で、依頼のために貴重そうな宝石や本など遺物を袋に詰めていく。
しかし、どうにも気になることがあるようで…

「…この遺跡、なんか変なんだよな。
 本や棚が散乱しているのを見る限り、
 図書館か魔術関係の何かなんだろうけど…それにしてはきな臭い」

壁を見ればびっしりと紙が張り付けてある。棚や本、魔法用具にも、壁と同じ紙が。
その全てが、少女と思わしき絵に「禁術」の文字が赤濃く塗られた、異様なデザインだった。

「趣味悪いな、一体何でこんなものが…
 魔術詳しいわけじゃないけど、魔術施設にはこんなのなんて無かったはず…
 そりゃだれも依頼受けないわけだなぁ」

それでも、責任感と好奇心のままに進んでいく。
やがてリアが立ち止まると、そこは大きな扉の前だった。
見るからに荘厳な、立ち入りを猛烈に拒む圧を感じる。

「うぉ、でかいな…これはヤバそうだ。
 依頼書にはなるべく壊すなって書いてるけど…やっぱ気になる。
 でかいだけで古そうだし、さっさと終わらせよう」

リアが銃を向ける。その腕には、どこか力が入っているように見えた。

「―――リアライズ・バスター」

瞬間、扉がはじけ飛ぶ。リアには造作もなかったようだ。


中に入ると、そこは無数の本棚が並んだ広い空間だった。
そして、奥からは強い光が照り付けてくる。

「うお眩しいな…やっぱ絶対何かあるよなこれ。
 あれ、これはなんだろ」

リアが拾ったのは、傍にあった一冊の本。ここまで見たような本とデザインは少し違いそう。
少女の絵が大きく書かれた本で、タイトルは…「泡壊の魔女」。

ふとリアが奥を向く。
光の先を凝視すると――そこには、大きな結晶が見える。
そして結晶の中には、絵と瓜二つな少女の姿が。

何かを悟ったリアは、ゆっくりと奥へと歩いてゆく。
そして、結晶の前に立ち、銃を構えた。

「どうやら、ヤバいことになっちゃったみたいだな…
 でも見過ごすわけには。なにがあったか知るためにも。
 なるようになれ。―――リアライズ・バスターっっ!」

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■プロローグ・第二話■

依頼で謎の遺跡を探索していた冒険者リア。
不穏な遺跡の奥で見つけたのは、結晶に包まれた少女だった。




「―――リアライズ・バスターっっ!」

普段よりも一段と強い光線が結晶に炸裂する。
轟音が響き、部屋からもミシミシと音が聞こえるほどの威力をぶつけた。

――しかし、小さいヒビは入るが、結晶はまだ砕けない。

「異常なガードだな…力技じゃきついかぁ。
 中は傷つけたくない。そうなると。
 …そうか、あれ使えば」

リアが思い出したのは、依頼のために遺跡で集めていた、遺物を入れた袋。
その中の一つ、小さく丸い宝石を握りしめる。
そして…高く高く投げ上げた。

(魔術は詳しくないけど、同じ石同士ならなんか親和性ありそう。
 チャンスは一瞬…威力範囲絞って正確に撃ち込めば。)

「―――ここだっ!!」

宝石を弾丸にして、脆くなっている部分に向けて撃ったのだ。
光線を限界まで圧縮制御し小さな宝石を狙い撃つ。
少しのズレも許されない、並外れた芸当だが――

――それは成功し、結晶が大きな音を立てて砕け散った。


「やっ…た。
 それより、あの子はっ!急がないと」

リアは駆け寄り、倒れそうになった少女を抱え込む。
見たところ傷はほとんど無いようだ。

「大丈夫?君は一体どうしてこんなとこに…」

ぐったりとしたまま動かない。
それでもリアが辛抱強く待っていると、暫く経ち少女の口が開いた。

「ここは…」

「あっ、気が付いたか!」

リアはずっと不安だったからか、安堵した声をかける。

「お…」

「お?」

「おなかへったー!!」

しかし、大きな声を上げると、またぐったりとなってしまった。
突然のことにリアが少し焦りだす。

「あっ、えっと、どうしたらぁぁぁ…
 …ああ、そっかお腹が空いてるのか。
 それなら丁度いいのがある。味濃いかもだけど…」

またリュックをあさる。今度は…串焼きを詰めたパックを取り出した。
串は明かりで消費してしまったが、幸い一本だけ残っている。
これを使えば食べさせられるだろう。

「…あの、これどうぞ。
 お口に合うかはわかんないけど」


「おいしーっっ!
 なにコレ、こんなもの食べたの初めてだよっ!」

串焼きを食べ、少女は元気を取り戻すと猛烈な勢いで食べ進める。
みるみるうちになくなってしまった。

「おお、すごい食べるね…
 あの…君はなんて言うんだ?そして、どうしてここに」

「もぐもぐもぐもぐ、ん?
 わたしはカプチーノだよ。見ての通り魔法使い。
 …逃げないんだ」

「どうして…?逃げないよ。
 こんな怪しいところに女の子なんて、放っておけないでしょ」
 
少しばかりの沈黙が流れる。
カプチーノと名乗った少女の表情が、微かに和らいだ気がした。
そして、リアは続ける。

「カプチーノね、覚えた。
 ボクはリア。冒険者やってる。
 …それよりも」

魔法使い。その単語にリアは引っ掛かりを覚える。

「…魔法使いってどんな職業なの?
 もしかすると古い文献で見たことがあるくらいのものだけど」

「えっ、魔法使いは魔法使いなんだけどなぁ。
 でもって古い文献って…ええっと、まさかなんだけど。
 何か日付がわかるもの、ない?」

リアが携帯していた日記帳を開いて見せる。
すると、カプチーノは大きく目を見開いて日記帳を奪い取った。

「ちょっ!」

「キミはリアって言ったかな。リア、少し借りるね。
 この日付に、知らない食べ物、魔法使いに馴染みがない。
 そしてこの紙の異常な強度…間違いないよ。
 …わたしはこんなにずっと封印されてた…!?」

何やらショックを隠せないカプチーノに、リアが問いかける。

「なんだろう…わからないことだらけだ。
 でも、君なら何か知っているんだろうと思う。
 だから教えてほしい。君…カプチーノとここに何があったか、知りたいんだ」

「キミは何も知らないんだ…いいよ。教えてあげる。
 …その前に、結構暗いねここ。
 そうだ。明るくなれ~ミルキーライト・タイム!」

カプチーノが手をかざすと、辺りが一瞬にして明かりに包まれた。

「お、魔法は使えるんだね。よかった。」

「えっすごい…こんな規模の魔術、見たことない…
 …ともかく、これで探索がしやすいな、ありがとう」

「いえいえ~こんなのお茶の子さいさいだよ」




遺跡を歩きながら、二人は話してゆく。

「さっき、魔法使いについて尋ねてたよね。
 空気中のエネルギー、いわゆる魔力を操作して不思議な現象を起こす。それが魔法。
 魔法を使える人は、みんな魔法使いと呼ばれるんだ」

「なるほど…それで、この光も魔法使いの力ってわけか。」

「そう。
 …そして、そしてなんだ」

カプチーノは少し言いよどむ。
そこに、リアが優しく声をかけた。

「いいよ。…大丈夫、続けて」

「…ありがとう。
 魔法の中でも、突出した威力と影響力を持つものがあるんだ。
 『禁術』と呼ばれ禁止されていたそれを、どういうわけか使えてしまえて。
 それで誰も彼も怖がっちゃって、わたしは『泡壊の魔女』って呼ばれて嫌われるようになったんだ」

泡壊の魔女。リアは、先ほど見かけた本のタイトルを思い出す。
繋がってきた情報を考えるうちに、カプチーノをじっと見つめていた。

「それから先はとんとん拍子。
 顔名前は色んなとこに広まるし、みんな捕まえようとしてくる。
 だから逃げたんだ…だけどダメだった。
 多分、ここに最後に逃げ込んだと思うけど、鉱物系と無効化系にやられた。悔しいな……
 …嫌だよ。ねぇ、平和が一番だよ。絶対」

今にも泣きだしそうなカプチーノ。
その力ない手をリアは、何も言わずぎゅっと握る。
自身の苦しい境遇。リアはそれを思い出して、その手には自然と力がこもっていた。

「………。ありがと。
 ねえ、リアは確か…冒険者とか言ってたかな。
 世界も。リアのことも、わたしが知らないことだらけ。
 わたしにも、教えてほしいな」

「いいよ。いくらでも教えたいよ。
 …でも、その前に、やらなきゃいけないことがあるな。
 隠せもしない殺気…出てこい。お前は誰だ!」

リアは突然振り返り、後ろに銃を向ける。
二人から死角とも言える位置に、人影を見ていたのだ。

「誰だって、か…それはウチのセリフやん。
 アンタやって、名前くらい知ってるやろ?
 …ウチの縄張りに、何の用だい?」

声の主は二人の前に姿を現した。
刀を携え、今にも切りかかってきそうだ。
その姿を見て、リアは声を荒げた。

「お前は…そうか。嫌でも耳にするさ。
 略奪と依頼荒らしの悪徳冒険者、トパーズ!
 捕まった話を聞かなかったが…ここがお前の拠点だったのか!」

「あぁ、ご名答や。
 でも悪徳とは失礼やな。ウチはこーんなに必死やのに。
 …さぁ、縄張り踏み入った罰に、その荷物全部寄越しな!」

トパーズと呼ばれた少女が襲い来る。
その動きをみるやいやな、リアも戦闘態勢に入った。

「カプチーノ、下がってて!
 …いっちょやってやるか。力の見せ所だ!」

突然にして、冒険者同士の戦いが始まった。

「えっ、あの、ちょ…
 わたし、どうしたらいいの!?」

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■プロローグ・第三話■

冒険者リアが封印から救い出したのは、魔法使い・カプチーノ。
そしてそこに現れたのは遺跡を縄張りにしている悪徳冒険者トパーズ。
二人の冒険者の戦いが始まろうとしていた。




「……その荷物全部寄越しな!」

先に動いたのはトパーズ。
瞬時にリアの元まで駆け込むと、重い木刀を軽々と振るい切りつけた。
日頃からそうしているのだろう。あまりにも手慣れた速度だったが───

「…ふんっ!」

リアは、これを避けてみせる。
走る方向と木刀の向き、これを計算し見切ったのだ。
そして、避けた勢いを利用し大きく飛び退きながら、銃を素早く向ける。

「…早く終わらせたいんだけどな。うりゃ!」

力を素早く溜め、リアの銃が火を吹く。
…だが、こちらも空を切った。

その後も、攻撃をしては正確に避け、勝負は決まらない。
息を整えつつお互いは、距離を取ったまま睨み合う。

「おーおー、おっかないわ。
アンタ、なかなかやるやないか。」

「どうも。お前こそ評判は名ばかりじゃないんだな。
 こりゃ疲れそうだ…」

少し離れた場所から、カプチーノの声がする。

「リア、がんばれー!!」

普段一人で暮らしているリアには、それは少し不思議な感覚だった。
温かいような、そんな気持ちに包まれ、銃を上げた。

「…でも、負けたくはないや。
 ここで、お前を倒す!」

「でも、威勢だけやな。
 お喋りはこの辺にして…本気でいかせてもらうわ。」

トパーズの雰囲気が変わった。

「───行くで」


リアが撃つよりも速く、トパーズが駆け抜ける。
先程とは比べ物にならない圧倒的な速度。

「…っぶな」

リアはすんでのところで避け、また銃を構えようとするが…

「アホ遅いで!」

その隙はなく、トパーズがまた切りかかってくる。
避けることはできるがそれで精一杯。
避けても避けても、攻撃するタイミングを見つけられない。

「これは思ったより…
くそ、なにか策はないか…」

考えるリアの隙を見逃さず、トパーズが木刀を向ける。

「隙ありや!」

突進してきたトパーズ。
リアは刹那の間に考えると…

「…これしか!」

地面を強く蹴り、宙へと舞った。
空に逃げたリアに一瞬の猶予ができる。
銃を構え、力を溜める。

「今度こそ!リアライズ──」

「甘いで」

突進したはずのトパーズの姿が目の前にあった。
この瞬間を見計らって勢いのまま、壁を使い飛んだのだ。

「くっ!」

「こうするやろなと思ったわ。
喰らえウチの、絶刀・瑠止炎流ッッ!」

まるで炎のように揺れる刀の一撃。
動きを捉えられず避けられないそれが、リア…自身ではなく銃に直撃する。

「ああっ!」

その衝撃で、堪らず離したリアの銃が遠くへと転がっていく。
リアは反射的に向かおうとするが、目の前にはトパーズが。

「アンタもなかなかやわ。でもこれで勝負あり、や」

「何か…手段は…くそ、こんな終わりって…」

受け止めきれない状況に、リアは目を瞑った。


戦いの様子を離れて見ていたカプチーノ。
下がっててとは言われても、やはり気になってしまうのだ。

「あっ、今の当たりそうだったのに!
 二人とも強いなぁ…」

しかし、リアが押されていくのを目の当たりにし、焦燥感が増していった。

「ぁ…これやばいんじゃないかな…
 でもわたしが入るのも無理そう。
 うーん、ここで使える魔法といったら…」

思慮を巡らすカプチーノ。
様々な魔法を考えるも、最後に思い当たったのは────禁術。

「…うん。やるしかないね。
 うまくいきますように」

カプチーノは目を閉じた。
息を深く吸い、手を前にかざす。

「…空よ、海よ、大地よ、光よ、闇よ。
 我に集い紡げ。無限の歌を。
 破壊の神の名のもとに、全てを滅する力を。
 ────ワールドエンド・デイドリームっ!!!」

トパーズの刀がリアに振り下ろされる、まさにその時。
膨大な魔力をまとった白い光が炸裂する。
それは遺跡の壁も床も、何もかもを飲み込んでゆく。
そして、今まさにそれに気づいた少女たちも。

「「えっ」」

全てを包み込んだ光は、膨張し輝きを増してゆく。
やがてその限界に達すると、ひときわ大きく光り、

────大爆発した。




「ん……ここは」

「よかった!気がついた!!」

リアが目を覚ますと、目の前にはカプチーノが。
手を握られ、よろよろと体を起こした。

「よっと…もう駄目だと思った。
 君に助けられちゃうとは。ありがとうね」

「いえいえだよ。こうするしかないと思ったから…
 わたし一人じゃ、アイツと戦えなんてしなかったし。
 こちらこそ、ありがとう」

自分だけでは勝てなかった相手、自分の考えもしない力。
一人で戦ってきたリアには、初めてのことで。
奇妙な感覚を覚えつつ、状況を整理する。

「とりあえず、あれはいなくなったのかな。
 持ち物でも整理しとくか。リュック、リュック…
 …あれ、ない。ない!」

そう、リアのリュックがどこにもないのだ。

「まさか、あの爆発で…!?
 いやそんなことないよな。丈夫だし。
 とりあえず、もっと探さなきゃか…」

そう思い歩き出そうとした瞬間、上のほうから手を叩く音がした。

「誰だ!?」

「誰だとはなんや。ウチやで。」

あの憎きトパーズの姿が、確かにそこにあった。

「お前…まだやろうってのか」

「もうええよ。ウチもアンタもボロボロや。
 …それに、ええもんも手に入れたし」

トパーズが持っていたのは、リアのリュック。

「あっ!お前それ!」

「ハハハ!
 …まさか、こんな強い奴らがおるとはなぁ。感心したわ。
 今回はこれで勘弁するわ。
 次に会ったら絶対倒したるからな。覚えてるんやで!」

そう言うなり、猛烈な速度で逃げていった。

「くっそ…あいつ、とことんまで…
 しかし、これからどうしたらいいんだろ…」

リアの荷物はどれも大事だったが、その中でも重要なのは、あの日記帳。
身分を示すためにも使うので、あれがなければ依頼は受けられない。生活が成り立たない。

「あぁ……」


深く落ち込むリア。そこにやって来たのは。

「ねえ、これってもしかして…」

「カプチーノか、どうした…
 ってこれ!」

カプチーノが抱えていたのは、先程飛んで行ったリアの銃。
そして…日記帳もあった。

「そういえばこれ、リアに返し忘れてて…」

そう、日記帳はカプチーノが取ったっきり、リュックの外に放置されていたのだった。

「これ、ボクのために拾ってくれたのか、ありがと…!」

「ううん。喜んでもらえたらよかった。
 それに、わたし取り返しのつかないことしちゃったから…せめてもの」

そう言われたリアは、周りの様子がおかしいと気づく。
ここが遺跡の中にしては壁もない。天井もなく、空が広がっている。
ここが外にしては…周りにはガレキがたくさん。
ということは、つまり────────

「これ全部…」

リアの顔が青ざめてゆく。
依頼の遺物はリュックごと取られた。調査も不十分。
いや、それ以前に、依頼場所の遺跡を全壊させたなんて伝わったら…

「ごめんね…わたしのせいで」

リアは決断した。

「よし、逃げよう」

「逃げる!?」

「悪評が広まる前に動けばなんとかなるかも。
 この日記があればなんか依頼はあるだろ。
 たくさん歩くし隠れながらになりそうだけど…
 君も行くところない…よね?」

「難しいこといっぱいあるんだね…けどわかった。
 キミについていくよ。」

そう言葉を交わすと、二人は走り出した。

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