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オリジナル小説「むげんの宙へ」~三世皇①~

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前書き

・ご無沙汰しています。進捗だめです。
まとめアップにも目途がたたないため、できたものから上げていこうと思いました。
次回はもちろん未定です。

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■三世皇・第一話■

とある薄暗い森。空はもう暮れかかっている。
そんな景色の中をリアとカプチーノは、荷物を抱え歩いている。

重い足取りだが、しばらく進むと二人は丁度良い場所を見つけ、腰を下ろした。

「ふぅ~お疲れさま!
 依頼のお金、半分もありがとね」

「お疲れ。今日も、本当大変だった…
 それより、カプチーノは何買ったの?」

「わたしは…杖だね。あったほうが魔法扱いやすくて。
 後で好みにセッティングしてみたいな。リアは?」

「ボクはカバンと…食料。
 ちょこっと調味料もあるから、しばらくはもちそう。
 色々買ったけど、何か気になるのある?」

買ったものを並べていくリア。
カプチーノからすれば、どれも新鮮で魅力的であったが。
その中の一つ、黒い液体の入ったビンを見つけた彼女は目を輝かせる。

「これってもしかして…コーヒー!?」

「そうだよ。おやつ代わりに買ったんだけど…どうかした?」

「ほんと!?わたし、コーヒー大好きなんだよね。
 魔法の研究の時にたくさん飲んでて」

「おお、何気なくだけど買ってよかったな。全部飲んでいいよ。
 …さてと、準備完了」

気が付けば、リアは焚き火を作っていた。
そしてその傍には…

「わわっ!お肉、しかもたくさん!」

「帰りに魔獣たくさんいたからこれだけ取れたんだ。
 調味料もあるしね、今日はぜいたくに串焼きにしよっか」

「やったー!」

久しぶりの豪華な食事に、二人は楽しそうだ。

───
──────
─────────

「ん…あれ…」

リアが目を覚ます。どうやら、いつの間にか寝てしまったようだ。

「昨日は食べて、銃の練習して、それからどうしたっけ…」

寝ぼけながらも、今日の準備をするリア。
視界の隅に入ったのは、なにやら作業をするカプチーノ。

「なにしてるの?」

「わ!おはよう。
 これはね、杖のセッティング。
 魔法を使いやすいようにしてるんだ」

「なるほど。凄いや。
 あの魔法がもっと強くなるのか」

ふと傍を見ると、コーヒーの容器が。
どうやら、すっかり気に入ったようだ。

「ふふ、嬉しいな」

「どうしたの?」

「ううん。何でもない。
 それより、支度は大丈夫?
 準備できたら出発しようか」

「うん。今日も依頼、頑張る!」

─────────────────────

リアとカプチーノは、依頼をこなす日々を送っていた。
冒険者じゃないカプチーノも同伴できる依頼は更に限られる。
けれどもうまく見つけては、依頼を受けていく。

「今日できそうなのは…これくらいか。
お店の掃除、安いけど」

「掃除、いいね。
わたしの力見せてやる!」

店に着く。見たところ飲食店のようだが、床や壁が特に汚れている。
荒事ならばすぐ片付けているリアだが、流石に真面目に掃除をし出した。
普段から身の回りのことをやっているのでその腕は確かだ。
リアはカプチーノに指導しつつ、店は少しづつ綺麗になっていく。

「んしょ…大分いい感じになったかな。
もうちょい仕上げしたら、帰ろっか」

「ありがとう。
仕上げね、任せて!
​───磨け、破壊の力よ!!」

カプチーノの杖からが魔法が放たれた。
魔法が終わると、なるほど綺麗になっていたようだ。
床も壁も全て。綺麗すぎて、真っ白に───

「あああっ!」

「どう?綺麗になったよ〜」

「確かに綺麗だけど…これはっ!!」

依頼主に怒られてしまう。
最低限のお金は貰えたものの、2人は気まずく街を後にした。

「ごめん…ただ綺麗にしたかったの」

「気にしないで。ボクもうまくいかないこと多いし…失敗なんていくらでもあるよ」

───
──────
─────────

その後も依頼を続けていくが、毎回うまくいくわけでもなく。
失敗を重ねるうちに、いつしか悪名として知られるようにもなっていったのだ。
遺跡の一件も、もちろんバレていた。

「はぁ…今日は依頼1つか。
お金がないんだよね…魔獣で肉だけはなんとかなるけど。
それに、お尋ね者なんて。知られてれない場所なんて、あとどれくらい残っているやら」

森の奥。身を隠すように夜を過ごす2人。
夜が明けたら、また遠くへ依頼を探しに行く予定だ。

「わたし、なんにもできないや…迷惑かけてばかりで」

「そんなことない。助かることも多いし…でも、向いていない依頼が多いのかな。
何か、もっと稼げてカプチーノにも向いている依頼なんて────」

その時、強い風が吹いた。

「風つよ…んんっ!!」

リアの顔に何かがぶつかる。

「わわっ、大丈夫!?」

カプチーノが駆け寄ると、リアはぶつかった何かを持ち、じっと見つめていた。
それは────

「これは、ふむふむ。
 …これだっ!!」

リアが手にしたもの。
それは、一枚の依頼書だった。

─────────────────────

『三世皇の討伐
 身分、職は一切問わない
 腕に自信のある者を求む』

そう書かれた依頼書を手に、二人は依頼場所へと向かう。

ようやく着いたその場所は、山の奥、木々が生い茂る樹海だった。
周りを見渡すと、他にも人が数多く集まっている。
どれも、屈強そうな者ばかりだ。

「おお、なんだかすごい場所だね…
 ここで戦えばいいんだ」

「ふう、やっとついた。
 …しかし、すごい報酬に惹かれたけど、何をすればいいのか。
 討伐はともかく…三世皇って?」

そんな疑問を抱えたリアの元に、何やら人が集まってくる。
攻撃的な瞳をしたその集団に、あっという間に囲まれてしまった。

「ふうん…お尋ね者のボクも倒して金稼ごうってか。
 でも───」

言い終わるが早いか、鋭い光が駆け抜ける。
その光は一人の首筋を掠めると、背後にあった木に炸裂する。
その木には、大きな穴が空いていた。

目にも止まらぬ速さで銃を抜いたリア。
トパーズに圧倒されたあの日から、速度も力も密かに鍛えていたのだ。

「───君たちじゃ勝てないよ。
 それに、ボクは敵対する気もない。
 わかったら離れてくれると嬉しい」

それを目にした集団は、一斉にリアから離れていく。
聞いてくれたのか、得体の知れない物への恐れか。
それはわからないが、ひとまず落ち着いたようだ。
近くにいたカプチーノもほっとする。

「よかった。リア、すごい…」

「まいったな…でもなんとかなったからいいか。
 それより、これからやることは…」

その瞬間。
彼方から、リアに向かう大きな影が。

「っ!」

すぐさま反応しようとするが、間に合わない。
反応速度を越えた速度で走るそれが、一目散に向かってくる。
そして───リアに抱きついた。

「お姉ちゃ~~~ん!!!」

やってきたのは、一人の少女だった。
その姿を見たリアは、安堵の表情を浮かべる。

「びっくりした、…でもよかった。
 こんなとこで会えるとはなぁ」

「リア、その子は誰??」

「そうだ、まだ言ってなかった。
 …この子はリオン、ボクの妹」

リオンと呼ばれた少女はお辞儀をした。
そして顔を上げ、元気な声で。

「ご紹介にあずかりました、勇者見習いのリオンです!
 本日は、討伐の任務に参りました!
 不束者ですがよろしくお願いします!!」

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