見出し画像

NFT.NYC2023 現地レポート 後編 〜NFTのマスアダプションに必要なことはなにか〜

ニューヨークでNFTを主テーマにおいた世界最大級のイベント「NFT.NYC」が現地時間2023年4月12日から14日の3日間に渡って開催されました。Kultureスタッフが現地に参加した中で、後編ではNFTでのスポーツやチケットといったテーマで行われたセッションの紹介と、その他会期中に行われた興味深かったトピックを紹介していきます。

前編では、NFT.NYCの概要と、音楽をテーマにしたセッションもまとめておりますので、あわせてご覧ください!

How NFTs are Powering Collaborative Fan Engagement with the NFL, Dapper, and Ticketmaster

スピーカー
・Daniel DeVece
NFLの新製品担当のシニアディレクターで、NFLの消費者向けて、インタラクティブ体験、ブロックチェーン、NFTなどの新技術の採用を管轄している
・Brittany O'Hagan
スポーツ業界のベテランマーケターで、スポーツとテクノロジーが交差するNFTのリーディングカンパニーであるDapper Labsのスポーツパートナーシップ担当副社長を務めている
・Joe Aiello
TicketmasterのNFTのプロダクトマネジメント担当ディレクター。
TicketmasterがNFLおよびDapperと協力して、ファンエンゲージメントにおけるNFTの可能性を追求するリーダー的存在。

セッションで話していたポイント
・Web3の⼀般化を検討(フィジカル、デジタル、体験などのユーティリティ設計)
・NFTチケットは多様な使い⽅がある(Profile Picture、⾃慢/感情的なつながりなど)
・コンテンツホルダーとテックカンパニーのコラボレーションやパートナーシップが重要になってくる
・NFTを活⽤することの啓蒙は消費者、コンテンツホルダー双⽅に対して現在進⾏中。マスアダプションを⽬指している
・テクノロジーとしてNFTは⽣き残ると思われるが、NFTというものへの抵抗感がある⼈へのアプローチがとても重要だと認識している

ただNFTを使えばいいということではなく、コンテンツホルダーや消費者に対してどのような貢献ができるか、その⽬的が重要であることを示したセッションでした。

How NFT's will Revolutionize Sports

スピーカー
・Jack Spataro
Finally Free Productionsのディレクターで、Web 2とWeb 3の開発会社として、全米でサービスを提供している。また、Venture hustlesのポッドキャストホストとして、テクノロジー、起業家精神、スタートアップについて論じている。

セッションで話していたポイント
・スポーツにおけるNFTの使い⽅をより深耕する必要があり、これまでになかった様々な特典と絡めた形で、ファンのエンゲージメントを⾼める施策を検討する必要がある(以下が一例)
-ロッカールームへのアクセス
-プレイヤーの試合前のルーティンチェック
-ビハインドザシーンアクセス(プレーの裏側、背景、ドキュメンタリー)
-デジタルサインされた様々なグッズ
-各個⼈の趣味趣向にあったパーソナライズされたNFTの提供

プロスポーツは試合はもちろんのこと、観客誘致のための商業的戦略も兼ねているのでファンにとっては一つの手段として、NFTは喜びになると示した。(但し、プレイヤーへの影響を最⼤限考慮する必要はある)
プレイヤーのパフォーマンスに影響を与えない最⼤限のファンサービスを提供すべきであり、さらにNFTを使ってこれまでになかった体験を作りだす必要がある。なぜ、NFTでやるのか意味を併せて考える必要があると感じました。

The future of live event ticketing across entertainment and sports

スピーカー
・John Abbamondi
LongBall Capitalの創設者兼CEO。ブルックリン・ネッツとバークレイズ・センターの元CEOで、そのほかにもNBA、MLB、NHLの様々な企業で上級職を歴任した。
・Michael Rojas
チケット販売、マーケティング、データテクノロジーのグローバルリーダーであるAXSのCPOを務めている。
製品開発、リーダーシップ戦略、エンジニアリングサイエンス、システムアーキテクチャの分野で25年以上のベテランであり、Ayalogic, Inc.、North Coast Logicを設立した経験を持つ。
・Tim
ヘッジファンド・マネージャー、アセット・アロケーター、資本市場の専門家として、国際的なものや新興のものを中心に、複数のアセットクラスで約30年にわたる投資経験を持つ。CNBCの番組「Fast Money」の共同司会者兼トレーダーとして、投資界で広く知られている。
・Josh Katz
チケット、音楽、メンバーシップのマーケットプレイスをリードするYellowHeartの最高経営責任者兼創設者。Maroon 5、Julian Lennon、Tao Group Hospitality、MGM Resorts、Blue Note Jazz Club、The Surf Lodgeなど、世界で最も尊敬されるアーティストやブランドと仕事をしてきた。
・Chris Schlosser
メジャーリーグサッカーのシニアバイスプレジデント。
MLS理事会と緊密に連携し、リーグ初のブロックチェーン・パートナーシップを立ち上げ、複数の新しいクラブ・パートナーシップをサポートし、リーグ内の画期的なスポーツベッティング・パートナーシップの数々を通じて、大きな新規収益を実現しました。

セッションで話していたポイント
・チケッティングにおける最⼤の課題は、誰が会場にいるのかをきちんと把握したいというニーズが強まっているその個⼈への特別な体験を届けることにフォーカスしたい
・場所をおさえているかどうかの権利をもっと⾃由化すべきであると考えており、チケット会社が場所を抑えられるようにすべき
・スポンサーシップ、広告が⼀番の収益源で、解決すべき経済上の問題がたくさんある
・セカンダリ取引の⺠主化が求められる完全にオープンで、信頼できる、プライスもフェアで価格操作する⼈もいないセカンダリを⽬指したい
・ポストイベントが⼀番のポイントで、買った後、楽しんだ後に付加価値を提供できるかどうか
・ブロックチェーンは破壊的だか、どんなもので出てくるのか正直わからない
・新たに出てきたアーティストであれば、ブロックチェーンでの適応可能ではないか
・ユースケースをどんどんみつけて進めていくことが⼤事

チケット業界としては個⼈を特定し、特別な体験を届けたいという思いが強いのがわかったセッション。特にライブイベントへ参加した後に、購買意欲の醸成や、エンゲージメントを⾼めたいと考えているのが理解できた。個々⼈の趣味趣向にあった、マーケティングを⾏うことが⼀番の⽬的となっており、それをNFTで実現しようというよりは、現時点でどうにかできないかを模索している状態であった。

会期中にはこんなイベントやパーティーも

タイムズスクエアでのビルボードジャックイベント

NFT.NYC開催前日の4月11日、タイムズスクエアでは本イベントの開催に合わせて大規模なビルボードジャックのイベントが行われた。
最も人出の多い夜8時30分からおよそ1時間にわたって、NFT.NYCのイベントスペースにて展示されるNFTアート、イベントに登壇するスピーカーリスト、出展企業のCMが巨大なビルボードに投影された。
特にNFTアートはそもそもが目を引くようなデザイン性のものが多く、作品単体はもちろん、それらの作品が集うイベント自体のプロモーション効果はかなり大きいものだったと思える。

アディダスフラッグシップストアでのALTSイベント

4月13日の夜にはアディダスのフラッグシップストアにて、ALTSのイベントが開催された。
前日には「Into The Metaverse」の最新プロジェクトが発表され、大きな注目を受けながらの開催となり、DJによるパフォーマンス、フードやドリンクのサービスなど、さながらセレブリティパーティのような雰囲気で会場内はとても熱狂していた。
入場時にはALTSモチーフのアディダススポーツTシャツが入場特典としてプレゼントされた。
また、会場内には至る所にPOAPが受け取れるNFCが配置されており、読み取るために待機列ができるほどの賑わいだった。
ハットやスウェットの限定アイテムも販売されており、スウェットに関しては早々にサイズが一部欠品するほどの売れ行きだった。
私自身、初めてホルダー限定イベントというものに参加したが、NFTを通して出来たコミュニティが一同に集まるという現象は、これまで音楽やIPなどの「それ」とは違う全く新しいコミュニティのエネルギーを感じた。正しい表現かどうかわからないが、ホルダーたち自身でIPを盛り上げようとする「パトロン」としての性質がより濃いような印象を受けた。

NFT.NYC2023に参加して

NFT.NYC2023を通して、NFTの新しい活用についての考え方が会場全体で一気に放出され、洪水のようなインプットを経験した。

これからNFTをマスアダプションさせていくにあたって最も注目されているゲーム市場に次いで、エンターテインメント市場が大きな可能性として注目されていることは間違いない。
ミクロ的にアーティスト自身のバリューアップに活用することも、マクロ的にエンタメ全体のソリューションにどうNFTが活用されていくかを世界全体が模索している状況だ。

バズワードとしてのNFTは終息し、技術的ツールとしてのNFTは、かつての「インターネット」という言葉と同じように思う。
技術的な仕組みを完全に理解しながら日常的にインターネットを使っている人がどれくらいいるだろうか。
NFTも言葉だけが一人歩きし、市場に対して難解なイメージを与えてしまっているとしたら、私たちはその本質から得られる便益を分かりやすく市場に届けていく必要がある。
従来のエンターテインメント体験動線の中で、どうNFTが入り込み、ファンの体験を向上させていくことができるか、それがマスアダプションには必要なことではないかと考えている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?