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企業価値分析で最も使われる「配当割引モデル(DDM)」とその限界


配当割引モデルは、モデルの数も多く計算方法も複雑なため、
今回は理論に焦点を当てて、各モデルがどのような考え方となっているのかを説明する。





普通株式の売買の仕組みと評価の基本

まずは、普通株式の基本部分を押さえておく。


売買される場所

  • プライマリー市場
    企業が新株を販売する市場

  • セカンダリーマーケット
    既発行の株式を投資家間で売買する市場


市場価格と本源的価値の比較

本源的価値とは、投資のファンダメンタルズ(基礎的情報)と特性の分析に基づくものである。
分析によって推定される「本源的価値」と実際に市場で売買されている「市場価格」を比較することにより、アナリストは3つの結論のうち1つを導き出す。

3つとは、その証券が市場で「過小評価されている」、「過大評価されている」、または「公正に評価されている」。


例えば、ある企業の株価を分析したときに、以下の3通りのうちいずれかの結果が生まれる。

本源的価値>市場価値
→ 当該企業の価値が市場で過小評価されているため、割安で購入した方がよい(多く買われる)

本源的価値<市場価値
→ 当該企業の価値が市場で過大評価されているため、売却・空売りした方がよい。(多く売られる)

本源的価値=市場価値
→ 当該企業の価値は市場で公正な評価を受けている。



企業価値評価の関連指標

企業価値を評価する際には、以下の指標を使うのが一般的。

  • 簿価
    貸借対照表による企業の純資産額

  • 配当金
    会社から株主への定期的な現金配布

  • 価値尺度
    P / E(一株当たり価格/一株当たり利益)
    P / B(一株当たり価格/一株当たり簿価)
    P / S(一株当たり価格/一株当たり売上高)

  • 時価
    資産と負債の時価を利用した財務諸表



配当割引モデル (The dividend discount model, DDM)

普通株式の最も基本的な評価モデル。
株主の今日の投資は、「将来受け取ると予想されるキャッシュフローの現在価値」であり、最終的に配当の形で投資に対する返済を受けることになるという理論。

普通株式の配当金にPVの公式を適用する。

V0 = D1/(1+r)^1 + D2/(1+r)^2 + (Dn+Pn)/(1+r)^n

V0: 株式のファンダメンタルバリュー(基本的価値)
Di: i年末に期待される配当
i: 1〜n年
Pn: n年末における株式売却時の期待価格
r (Required return on equity): 必要株主資本利益率
n: 株式を保有している期間



以下より、このDDMで使用される幾つかのモデルを紹介する。


ゴードン成長モデル (Gordon growth model, GGM)

GGMは、配当が無期限に一定の割合で増加すると仮定して計算するモデル。
そのため、一定の成長率をgとして、以下の式で算出される。

V0 = (D0×(1+g))/(1+r) + (D0×(1+g)^2)/(1+r)^2 + (D0×(1+g)^n)/(1+r)^n

短縮すると、

V0 = (D0×(1+g)) / (r-g)

また、以下に変形することも可能。
V0 = D1/ (r-g)
(ただし、r > g > 0 が成り立つ場合に限る。)



成長機会の現在価値化モデル (Value of growth opportunities)

必要収益率を超えるリターンを得る追加的な機会を持つ企業は、配当を行うよりも、利益を留保し、それらの成長機会に投資することで利益を得ることができる

そのため、ファンダメンタルバリューは、将来の配当の現在価値(非成長ベース)だけでなく、成長機会の現在価値(PVGO)も織り込むことで、より現実的な評価方法にしている。

V0 = E1/r + PVGO

Ei: i年度の収益


このモデルから、企業価値には以下の2つの要素があることが分かる。

  1. 保有資産の価値(E1/r)
     これはE1の永久キャッシュフローの現在価値である。

  2. 将来の投資機会の現在価値(PVGO)
     成長企業の価値の相当部分は、PVGOにある。一方、低成長産業(公益事業など)の企業はPVGOが低く、その価値の大半は保有する資産から得られる。



2段階モデル (the two-stage model)

会社が初期の高成長の期間と、それに続く低成長、成熟もしくは安定期間の2つのステージも持つと仮定したモデル。

V0 = [(D0×(1+gs)/(1+r) + ... + D0×(1+gs)^n/(1+r)^n]
+ (D0×(1+gs)^n×(1+gl)) / ((1+r)^n × (r-gl))

*式の前半が高成長の期間、後半が低成長の期間
gs: 短期成長率
gl: 長期成長率



H-model

多くの企業の利益成長は、2 段階モデルのように突然高い成長率から低い成長率に変化するのではなく、 競争力が発揮されるにつれて時間とともに低下する傾向がある。
H-modelは、最初に成長率が高く、一定期間内に直線的に低下すると仮定して、企業の価値を近似するものである。

この近似のための式は

V0 = (Do×(1+gl))/(r-gl) + (D0×H×(gs-gl))/(r-gl)

H = t/2 : 成長率が高い期間の半分
t: 成長率が高い期間



配当予測

これまで、配当割引モデルによる企業価値の分析方法を示したが、
これらで使用するデータの一つである「配当」の予測には、大きく3つの方法がある。

  1. 金融アナリストが定期的に将来の収益や配当を予測する。
    (データは金融プラットフォーム(Nasdaq、Yahoo Financeなど)で入手。)

  2. 過去の配当金を調べ、合理的に予測する。

  3. 配当成長率を推定する。
    g = ROE × b

g: 配当の成長率
ROE (Return on equity): 自己資本利益率
b: 再投資または、内部留保率


ただし、3.の予測方法では、しばしば現実とかけ離れた予測結果になる。
なぜなら、配当政策により配当成長率は経営者側が主導権を持っているから。

配当政策については以下参照。




DDMを利用するときに考慮すべきこと

  • 配当のある会社かどうか?

  • 配当実績はあるか?

  • 無配当の会社にどう対処するか?
    (フリーキャッシュフロー法、プライスマルチプル法などの代替法の利用)

  • 市場価格は本源的価値に漸近していくと想定する。
    (なぜなら、市場は一般に効率的である、つまり、市場価格が割安であれば、多く買われ、割高であれば多く売られ、本源的価値に落ち着くという前提の下にあるため。)

  • 現在の市場価格が公正な価格でないと仮定してから買わなければならないのか?
    →答えはノー。株価が公正に評価されている場合でも、相応のリターンを得ることができる。



類似企業を用いた比較

類似企業比較とは、類似企業の株式の平均的な株価倍率に基づいて、株式の価値を評価する方法。

類似企業比較法の経済的根拠は「一物一価の法則」で、2つの類似資産は同等の価格倍率(例えば、株価収益率)で売れるはずだと主張している。
この方法は、ファンダメンタルズデータが不足している成長企業を評価する際に有効となる。


比較法の限界

比較対象は、類似企業と全く同じではない。経営方針や戦略等、異なる面を有する。売上高、利益、簿価に基づく評価をどのように重み付けするかは不明。

使用する倍率によって評価はかなり異なるため、予想の域を出ない。





大英博物館で有名なロゼッタストーンは、触れるように展示してあってみんな触って写真撮って満足している人が、実はレプリカで、
本物は、有料の展示コーナーにある。(もちろん触れない。)

有料コーナーはすごい展示が凝っていて、ストーリー調に展示されているのでとても面白いし勉強になる。
ロゼッタストーンによって解読された古代エジプトの死後の世界の考え方とか最後の審判とか、、

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