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地域包括支援ネットワーク会議を有効活用するとは


 先日、地域包括支援センターが主催する「地域包括支援ネットワーク会議」でお話をしてきた。

1.地域包括ケアシステムにおける地域ケア会議

「地域包括支援ネットワーク会議」とは何かを説明しようとすると少し長くなるが再確認のため、ざっくりと確認したい。

 超高齢社会において、認知症高齢者や一人暮らし高齢者が増加するなか、支援や介護を必要とする高齢者が住み慣れた地域で尊厳ある生活を可能な限り継続できる体制の整備、つまり「地域包括ケアシステム」の構築が必要となっている。

 具体的には、高齢者のニーズに応じ、介護サービス、予防サービス、医療サービス、見守り等の生活支援サービス、住まいを適切に組み合わせ提供することで、24時間365日を通じ対応が可能となるシステムを地域に作り出すことである。

 そのためには、介護保険制度による「公的サービス」だけでなく、地域住民、ボランティア等のインフォーマルな社会資源との連携、協働が何より大切だ。

 先ほど「地域包括支援センター」が主催すると述べたが、地域包括支援センターは、地域住民の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援するため、
①介護予防ケアマネジメント業務(法第115条の45第1項第2号)
②総合相談支援業務(法第115条の45第1項第3号)
③権利擁護業務(法第115条の45第1項第4号)
④包括的・継続的ケアマネジメント支援業務(法第115条の45第1項第5号)
の4つの業務で構成される包括的支援事業等を地域にて行う役割を担っている。
この役割を担うことで、各地域の「地域包括ケアを支える中核拠点」となっている。
今、自身が住んでいる家が、どの「地域包括支援センター」が担当しているのかについて知っておくことは大切だ。

 私が住む地域では「地域包括支援センター」ではなく「高齢者なんでも相談室」と周知している。ただし、ホームページ上では必ず(地域包括支援センター)と書き加えてある。

 2005年の介護保険法改正においてつくられた「地域包括支援センター」だが、何を指し示す言葉か抽象的でわかりにくく、地域になかなか浸透しないため「高齢者なんでも相談室」等とする自治体もある。

 「地域包括支援センター」は、保健師や看護師、社会福祉士、主任ケアマネジャーらが連携し、地域で暮らす高齢の方々を、介護、福祉、健康、医療などさまざまな面から総合的に支援し、共に考え、内容に応じて、適切なサービスや機関、制度の利用につなげている。

2.地域ケア会議の定義と機能

 「地域包括支援センターの設置運営について」では、自立支援におけるケアマネジメントの支援等、前述した包括的・継続的ケアマネジメント支援業務を行うための手法として、また、多職種協働による地域包括支援ネットワークの構築のための1つの手法として「地域ケア会議」が位置づけられている。

地域包括支援センタ―設置運営について 地域ケア会議①

地域包括支援センタ―設置運営について 地域ケア会議②

「地域ケア会議」の定義は、
 地域包括支援センターまたは市町村が主催し、設置 ・ 運営する「行政職員をはじめ、地域の関係者から構成される会議体」であり、以下の目的のもと5つの機能を併せ持つことが求められている。

地域ケア会議の目的

地域ケア会議5つの機能

支援するにあたり対応が難しい個別のケース(専門職間では支援困難ケースなどと呼ぶ)について検討しながら、地域の課題は何かを発見し、課題解決をするための地域づくりと政策形成をもしていくため、A「個別レベルのケース検討会議」、B「地区レベルの地域包括支援ネットワーク会議」、C「市全体レベルの会議」などの会議を連動させることで、「地域ケア会議」の目的達成を目指す。

3.ある地域の地域包括支援ネットワーク会議

 私は、このたびはそのB「地区レベルの地域包括支援ネットワーク会議」に参加してきた・・・ということだ。
  このたびの「地域包括支援センター」の担当者は、「『当該地区に関わる人が参加している』だけが地域包括支援ネットワーク会議の個性ということでは今後の展開としては心許ない」として、当該地域の特徴を主に3点整理していた。
①市内において最も総人口・高齢者人口が多く、地域包括支援ネットワーク会議の参加者数も最多である。また認知症高齢者や介護サービス利用者も最多で、そのため他地域に比して大規模な地域包括ケアシステムが必要となること。
②駅周辺にある団地、旧来の商店街、これらを取り囲む戦後の宅地開発による住宅街、郊外に位置する農業振興地域、地域内に高等教育機関があり次世代を担う若者の人材も多様、国道沿いを中心とした多様な店舗を土台とした複合的な地域包括支援システム構築の可能性
③都市計画において、一部地域では大規模な新市街地開発が予定されており、地域開発の変容性(若年層の流入)に応じたケアシステム構築が求められること
   
 そのため、今のところ「福祉職以外との連携の拡大」を目標とし、「専門職種以外の団体を巻き込みつつ地域に拡がるその延伸的発展を確認していく事を地域包括支援ネットワーク会議の役割として位置付け」、地域の信用金庫、郵便局、薬局、大型スーパーセンター等の参加を求め地域包括支援ネットワーク会議を開催している。

 前回は、信用金庫等、銀行関係機関から認知機能が衰えた高齢者への対応をふまえ色々な意見があったようだ。

 今回、私へのお話の依頼は、超高齢社会において、なぜ「地域ケアシステム」が必要なのか、また、地域における見守り支援についての大切さを、「地域づくりの主役は住民の皆さんです」ということをわかってもらえるように(初心にもどって皆さんに聞いてもらうので)お話してほしいということだった。

 短い時間でもあったので、悩んだ末、2019年1月の朝日世論調査「自分が孤独死を心配しているか」の結果をベースに、現在、朝日新聞が特集している「あなたは誰ですか ルポ孤独死」の事例もとりあげながら、専門職のみでなく、一般住民にわかってもらえるよう意識し話をした。
https://www.asahi.com/special/unidentified/?iref=kijishita_link

 また、各地域において、高齢者の見守りガイドブックが作られているが、何故必要なのか理解をし、地域包括ケアシステム構築において、市民の誰もがその一員として重要だということを伝えたが、ただ「伝えた」だけにとどまらない、(なるほど、そうなのか)にとどまらないことが重要である。

4.遺品整理及び引越時に発生する家庭系ごみに限定した一般廃棄物収集運搬許可

 昨年、7月末、福岡市では、「遺品整理及び引越時に発生する家庭系ごみに限定した一般廃棄物収集運搬許可について」募集要項に基づいて受付,審査し,二つの会社の事業許可を行った。遺品整理に限定し、ごみ回収・運搬の許可を出すのは、全国の政令指定都市で初めてという。

福岡市遺品整理許可業者

孤独死は、突然、誰にも看取られず最期を迎える。
処分されることになる遺品は、「一般家庭ごみ」として扱われ「廃棄物処理法」のもと、市町村が決めた業者しか回収・運搬できず、従来は、「家庭ごみ」回収日に出す、あるいは収集業者を予約するなどしていた。

これでは、遠方の遺族が片づけにきて作業をする際(作業日が限定される)、また、部屋の所有者、近隣住民らの負担(遺体の体液によるにおい等)が強くなるなど、従来の収集業者のみでは対応しきれないということから考えられた対応である。
 この2社は、遺品整理として、孤独死した人の身辺の片付けを遺族などに代わって担い、遺族にのこすものを分別し、遺品の処分や部屋の清掃も行うという。

 会議を重ね、地域で困っている内容を明らかにし、この福岡市のような新たな取組を考えることが大切になってくるのだ。

 講義の後半では、私の大学にあるサークルのひとつ「地域にお住まいの高齢者の日々の生活に寄り添い、 お手伝いをすることを目的とした学生ボランティア団体『日々の暮らしに笑顔を』という理念のもと活動」する学生たちの温かい取組も紹介した。

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 この場でも、いつかお話したい。
 今週もお疲れさまでした。

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