088 マッサージと髪結いの亭主

どういうこっちゃねん?
って思いますよね。
というボクも、この稿は先が見えないまま書き始めています。

でも、ちょっと感動しちゃったことがあったので。

ボクは「凝り性」です。あっ、それ違います。勘違いしないでください。

えっ、何が勘違いかって。
ボクの「凝り性」は、単に肩と腰が凝る、ってことですから。

感動した話に行く前に、ボクの「凝り性」とそれを癒すマッサージ遍歴の世界へどうぞ。

まず、ボクが通い詰めたのが表参道にあったマッサージ店。
中国北部から来ていた店長が数人の中国人を雇ってやっていた店です。
「中国って広いから、言葉もいろいろです。でも、南の人は信用できないから、うちにいるのは北の人だけです」

あくまで個人的な意見ですよ。
ボクはそれを判断する材料は一つも持っていません。

その店はどの人もマッサージが上手でしたが、ボクが指名し続けていたのは黒竜江省から出稼ぎに来ていた女性でした。
ほとんど日本語はできませんでしたが、紙に漢字を書いて、ある程度の意思疎通をしていました。

今日は特にどこが凝っているとか、あの店が美味しいよとか。節約のため友だち数人と一緒に暮らしていて順番にご飯をつくっていて、滅多に外食はしないようでしたが、たまの機会だからこそ失敗したいくないというので。

そのうち、彼女がノートPCに録画された娘の動画を見せてくれることがありました。まだ小学生だそうで、学校で習ったことなどを母親に教えてくれているみたいです。

えっ、その間マッサージはって?
そんなことより癒されますよ。十歳にもならない少女が、遠くに出稼ぎに行っている母親に一生懸命、今日習ったことを伝えようとしているんですから。
うるうるしちゃいますよね。

彼女は就労ビザを持っていないので、3ヶ月経つと一度、国に帰ってしまいます。
その間、ボクの凝り性がおさまってくれればいいのですが、そういうわけにもいかず、ボクは同じ店で別の人にマッサージを受けます。
あ、そこそこ。でも、ちょっと違うんだよなぁ。。。

彼女がとうとう店をやめて、中国に帰ってしまうというのです。
ボクは何かプレゼントでも、と思いましたが、何が好きかわかりません。
きっと、それに大量の荷物を抱えて帰国するのだろうからと思って、食事に誘おうと思い立ちました。

でも、誤解されて変な奴と思われても困るので、友だちも誘っていいからとメモをしたためました。今ほど翻訳ソフトが優秀でなかった時代ですから、きちんと伝わったかどうか。

マッサージが終わってメモを渡した途端、彼女はそのメモを突き返してきて、ダメだと言うのです。
誤解されたか、傷つけてしまったかと思ったのですが、そうではなかったようです。

自分がプレゼントすると言って、店で売っていた中国の置物を買ってくれました。
逆だろうが。。。

金色と緑色に輝く蛙の置物で、背中が開いてアクセサリーなどをしまえるようになっています。金額は見ていませんが、数千円はしていたように思います。

ボクはうれしさより申し訳なさで、二度と会えないだろう彼女と握手をして別れました。

次にボクがはまったマッサージも、中国人の女性が一人でやっている店でした。

彼女は少し日本語ができて、上海出身だと言います。いわゆる、南の人?

でも、とてもやさしくて、上品で、美しい人でした。
しかも、ボクの2倍くらい大きい--というとオーバーな、と思われるかもしれませんが、幼い時からやせすぎと言われ続けてたボクを知っている人には、そういうこともあるかもと思ってもらえるでしょ。

最後に伸びをさせられて、ボクの腕を引っ張るのですが、グイッと彼女のほうに引き寄せられて、いつも大笑いされていました。

女性ばっかり出てきますが、男性の整体に通ったこともあります。
もう70歳すぎのおじいちゃんで、スポーツ選手が通っていると評判の人でした。

初めて訪ねたのは、四十肩が長引いて困っていた時のことです。
ベッドの真ん中にうつ伏せになれと言われて横たわると、大笑いされました。

「どうしました?」と訊くと、
「見てごらん、ベッドの端に、斜めになっているよ」と言うのです。

見てごらん、と言われてもねぇ。。。

噂通り、とても上手でした。
腰がずれていると指圧を続け、そのへんが温まってくると、いきなりボキッとひねります。

「うわっ」と大声を出してしまいましたが、
「立って歩いてごらん」と言われると、そのなんとも軽やかなこと。
オフィスまで宙を歩いているようでした。

どうしようもないくらい肩や腰がつらいと、時々そこに通ったものです。
もう20年以上も前の話ですから、彼は90代?百歳?

『髪結いの亭主』を見た時、やっぱ映画はフランスのものだ、と思いました。
男は世界中どこに行ってもだらしない生き物のようですが、それを映画にしてしまう。。。

大学に入った頃、ボクの将来の夢は髪結いの亭主(=売れない作家志望)でした。
朝、髪と髭をあたってもらって、はいと500円をもらって近所の図書館とカフェで1日潰して帰ってくる。

アルバイトで一緒になった女性が理容学校に通っているというので、お茶に誘ったことがあります。別に、やましい気持ちがあったわけではないんですよ。

「わたし、同棲している相手がいますから」
うーん、そういうつもりじゃなく、理容学校についてヒアリングしたかっただけなのに。ボクの鼻息が荒かったのでしょうか。。。

大学の2年生になると、後輩が入ってきます。
当時、新入生歓迎行事の一つで、一緒にバスに乗ってバーベキューに行くというのがありました。

そのとき横になった後輩と話をしていて、
「先輩の夢はなんですか?」と問われ、
「髪結いの亭主」と答えたら、2度と口をきいてもらえませんでした。

パトリス・ルコントの『髪結いの亭主』が公開された後だったら、反応は少しは違っていたでしょうか。1991年の公開ですから、ボクは遅れてきた青年ではなく、早すぎた青年ですね。

アンナ・ガリエラ、美しかったですね‐-って、この稿となんの関連もない話になっちゃった。

話戻って、最近ボクが感動したことはいっぱいあって、このnoteに書く気持ちになれなかったし、なかなか時間も取れなかったのですが、その割にはどうでもいい話が続いていますね。そろそろ本題に。

ボクが最近はまっているマッサージは、若い日本人女性です。
小柄なんですが、とても上手で、最初の十分ほどこの1、2週間のことを話しているうちに、スーっと深い眠りに。
それまでの気持ちよさと言ったら。

困ったことに、最近、彼女は週2回しか店に出て来ません。
その彼女が九条Tokyoにやって来てくれたのです。

「どうして店に出てくる回数を減らしたの?」
「妊産婦の骨盤矯正の勉強をして、独立しようと思って」
「へー」

最後の「へー」は、感動・感心したのと、ボクの凝り性は?って心配が一緒になった、お腹の底からの嘆息です。
誤解しないでくださいね。ボクは髪結いの亭主じゃなかった、整体の亭主になりたいと思ったことはないですから。

出産前後で、女性の骨盤は大きなダメージを受けるそうです。それを治そうと、今は出張で骨盤矯正を請け負っているそうです。
スゴイ。

髪結いの亭主程度が学生時代の夢だったボクには想像もつかない、誰かのためにと勉強したり活動している若い人たちがいます。

ボクも暇だ暇だと愚痴ってばかりいないで、「つながる本棚」の取材に邁進しなきゃ。
でも、取材は楽しいから、億劫がらずにどこへでも行くのですが、そのあと原稿を書かなきゃいけない。最近、これが億劫になってきています。原稿を書くのが一番性に合ってる仕事だと思っていたのにねぇ。

しゃーない。今夜は久しぶりに『髪結いの亭主』でも見て、場面転換の勉強でもするか。。。

あ、凝り性っていったら、この週末9月5日(日)15時からは
【投げ銭サイエンスカフェ】
「氷の世界--最新科学で分かった・氷には20種類もある」
です。

その氷、全20種類食べたーいって言ったら、それは無理ですって言われてしまいました。その理由は、9月5日に。

どこが凝り性だって、、、こおりゃーまいった。
考えてもみてくんねぃ。大学院で「氷の世界」をひたすら研究してる若者がいるんだ。その話、投げ銭で聞いてみたくなんねぇかあ。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?