見出し画像

―その3「介護福祉士実務者研修」を受講してみて

「実務者研修」って何をするの?


実務経験3年以上を経て介護福祉士試験を受ける人に必要な「実務者研修」


介護福祉士資格を取得するためには、大きく分けて3ルートあります。

1.実務経験ルート
2.養成施設ルート
3.福祉系高校ルート

※EPA候補者(経済連携協定:Economic Partnership Agreemant)に基づき研修を受けながら就労するEPA介護福祉候補者(インドネシア人、フィリピン人およびベトナム人)ルートもあります。
(――外国人の就労先として円安(賃金)や労働環境などを背景に日本が選択されなくなっているというニュースを耳にすることが増えてきました。この制度の維持もが懸念されるようになるかもしれませんね――)

介護の仕事をしながら資格を取る「1.実務経験ルート」のみ、3年の実務経験に加え、「介護福祉士実務者研修」が必要になっています。
(3年のカウント方法については、「その1」でも説明していますが、具体的には1,095日以上、従事日540日以上です。雇用形態は関係ありません。パートタイムでもフルタイムでも勤務日は1日とカウントされます。)
(専門学校や大学、福祉系高校ルートは「国家試験」(介護福祉士試験)合格が条件となっています。)

これらの条件は、「社会福祉士・介護福祉士法等の法律」が平成19年(2007年)に一部改正されたことによるものです。
※施行は平成27年度(2015年)からでした。

「介護福祉士実務者研修」のねらい

介護福祉士の養成機関(専門学校)を卒業せずに実務経験を積んだ人が、実務経験のみでは習得できない知識・技術を学ぶことが目的になっています。

実務経験とはどんなことでしょうか。
介護の現場でスタッフが求められていることを、私の経験から述べると、
・利用者さんの見守り
・立ち上がりや、着席時の介助
・移動時の介助
・食事介助、見守り
・服薬の見守り
・入浴介助
・排泄介助
・体操時の支援(進行)
・レクリエーション時の支援 
・会話
・送迎(デイサービスの場合)
・利用者さんのバイタル計測(体温、血圧、脈拍数、血中酸素飽和濃度等)
・各種報告や記録の記入
などになります。

現場では何よりも「安全」を重視していますので、利用者さんの行動の先にある危険を想定し、取り除くような介助スキルが求めらます。
だからと言って、ご本人ができることもすべて職員がやってしまったり、残存能力を活用できない介助をしてしまうと、介護の目標の本質から離れてしまいます。⇒介護に大切なことはご本人の自立支援であるということを、現場では、「ご本人ができることはやっていただく」という言い方で、利用者さんごとに必要な介助方法として伝えられることが多いと思いますが、「介護職員初任者研修」でも介護の理念として改めて学びます。
さらに、実務者研修では、介護に関わる知識をテキストを使って、深めていきます。

また、介護事業所では、利用者一人一人の援助計画(サービス計画書)が作成されていますが、その内容を現場で確認することはあっても、その計画がどのような流れで作成され、勤めている事業所が提供する介護サービスはどのような位置づけにあるのかも現場職ではなかなか理解する機会がありません。
このような介護計画の流れ⇒「介護過程の展開」(「介護過程Ⅲ」)として、通学実習で5日間かけて学ぶことになります。

実務者研修修了に必要な時間


450時間 (6カ月)⇒・介護職員初任者研修やヘルパー資格を持っている方は、その研修期間をカウントすると学習時間は2カ月です。
・働きながら学べるように、通信教育で学べるようになっている
・ただし、対面(通学)で学ぶ45時間は必須となっている。

 まとめると
1. テキストと理解度を確認する確認テストの通信教育(郵送またはWEB受講)

2.通学で学ぶ演習(介護過程Ⅲ)5日+医療的ケア2日

になります。

各学校の受講日程にもよりますが、受講クラスは、おおむね週1回、5日間の受講であれば、5週間、2日の受講には2週間の期間が必要になると考えていいと思います。

具体的な内容ーテキスト編

私は、介護職員初任者研修修了していたため、
「社会の理解Ⅱ」
「介護の基本Ⅰ」
「コミュニケーション技術」
「介護過程Ⅱ」
「こころとからだのしくみⅡ」
「発達と老化の理解Ⅰ」
「発達と老化の理解Ⅱ」
「認知症の理解Ⅱ」
「障害の理解Ⅱ」
「医療的ケア」
をテキストを用いて自宅学習(WEB学習)しました(ヘルパー2級資格のある方も同じ学習範囲になります)。
「社会の理解Ⅱ」は、社会福祉や介護保険制度を理解するテキストです。

それぞれの分野の確認テストがあるので、
通学日(「介護過程Ⅲ」「医療的ケア」)まで、合格点を取っている必要がありました。

テキストで学ぶ内容は当然ながら介護福祉士国家試験に出題されるものですので、テキスト学習で基礎固めをしておくと試験対策につながります。


具体的な内容ー通学編

 ①前述したように5日間の講習「介護過程Ⅲ」を学びます。

内容は
・ICF(国際生活機能分類)に基づいた情報の整理の仕方を学ぶ 
・介護過程の展開用紙の書き方(情報の収集⇒分析、解釈、統合化⇒解決すべき課題⇒短期目標⇒具体的な援助内容⇒観察の視点)
・作成した介護過程に基づいて援助方法を考える
・具体的な援助内容の言語化
・具体的な援助の実習
・実施した支援内容を振り返るための観察方法
・目標達成のための
などです。
 ご本人がどのような方であるかの理解に加え、〇〇ができないというネガティブな考え方ではなくではなく、この支援があれば〇〇ができるようになる、〇〇ができている、というプラスの評価の視点も大切でした。

私が苦労したのは、ICFの分類項目の情報整理(活動、参加、環境因子や個人因子、などの欄にどの情報を記入するか)、
介護計画の「展開用紙」作成においてのケアプランとの整合性、
短期目標についての理解、特にご本人を主語にした目標設定と目標到達のための援助方法を考えることでした。
私ははじめ、モデルとなる方が自立でき、人生がもっと豊かになるような支援アイデアをたくさん考え、書き出しましたが、ケアマネージャーさんが考えたケアプランに沿って、施設で実施可能な内容に合わせて、短期間(1カ月~2カ月)でご本人が到達できる具体的な支援内容を言語化しなければなりません。
(私自身の実務経験の浅さが影響したと思います)。

5日目に理解度の確認(実習テスト)があります。
私が受けた確認テストは、訪問介護で、利用者さんを居室から玄関まで、安全な誘導をする内容でした。
当時作った、試験対策用メモを見ると、必須のポイントだけで、12個。
家の中の数メートルの移動でも15以上の実施項目がありました。
実習にはボディメカニクス(身体のつくりや動きを知り、無理なく安全で効率的に解除をするため動作で原則がある)の理解が必須です。
覚えることが多いのですが、修了(合格)を目指すためのテストであるため、講座内で何度も練習する機会があります。テスト本番では落ち着いて臨めば大丈夫だと思いました。

 ②医療的ケアは2日間で学びます 

この講座で学ぶ医療的ケアは、医療行為の原則や、心肺蘇生法に加え
そして「喀痰吸引」(口腔内吸引・鼻腔内吸引・気管カニューレ吸引を各5回)、「経管栄養」(胃ろう腸ろう経管栄養・経鼻経管栄養)を各5回実習し、修了のための認定をもらいます。
通学前にDVDで予習することができますし、YouTubeにも手順がアップされていて、参考になりました。
講座当日にもわかりやすく教えてくれるので、心配しなくても大丈夫ですが、5回の実習できるようにならなくてはいけないため、真剣に向き合うこととが求められました。
なお、実習は、きちんとお名前(ケアの際に、ご本人確認と呼びかけが必要なため)と設定のある人体模型を使用して行われます。

介護福祉士が医療的ケアを行うようになったのは、必要とされる背景や歴史がありました。2011年6月に社会福祉士及び介護福祉法の一部が改正されたことで(2012年4月実施)、医師の指示のもとにたん吸引と経管医療を行うことになりました。

また、「医療的ケア」のテキストでは、法律で原則として医療行為ではないと考えるもの(体温計測、自動血圧測定機による血圧測定、パルスオキシメーターの装着、軽微な切り傷、擦り傷の処理、異常のない爪の爪切り、耳垢除去、歯磨きなど)についての解説があり、介護の現場で行われている根拠として理解を深めることができました(現場で間違った運用が行われていないか判断する基準にもなります)。

実務者研修の医療的ケア講習と、研修の違い

ところで、実務者研修の医療的ケアの講習(各5回以上の実施)は基本研修(演習)と位置づけられていて、
介護現場で実際にたん吸引・経管栄養などの特定医療行為を行うためには、
別途、研修の実地機関(医療機関など)の「実地研修」を受講する必要があります。たん吸引は50回以上、経管栄養は40回以上の実習後に認定されるものです。

介護福祉士国家試験合格後に、介護福祉士の登録が必要になりますが、実地研修を修了した方は「喀痰吸引等行為の申請」が一緒にできるのですが、"「講義」と「演習(人体模型による練習)」だけでは申請できません”と説明書に書いてあり、納得したことを覚えています。

このような、テキストと通学による実習、演習を経て介護福祉士の受験に必要な「介護福祉士実務者研修」の修了書を取得することができます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?