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不思議の国の豊39/#火遊びが好き

前回はここまで、そして

#火遊びが好き

僕には学校から帰えってから、

父母やおばあちゃんが仕事から帰るまでにする

仕事があった。

牛に餌をやったり、

洗濯物を取り込んだり、

何と言っても外せないのが

風呂に水を溜めて、お湯を沸かすことだった。

マッチで小さい枝に火をつけて

それに徐々に大きい枝を載せていき、

最後に太い薪をくべる。

できるだけ早く遊びたいから、

早く大きな薪をつっ込むと、

火は大きくならずに、また一からやり直しになる。

風呂に水を溜めるのも、

いっぱい溜めるのには時間がかかる。

それを待ってられないから、

最初は鉄でできたおかまの部分まで水がたまったら、

そこで火を焚き始める。

父親から、「空焚きしたら、お釜が割れて、風呂が壊れるぞ!」

と、言われているから、

お釜の上の端まで水がたまるのを待って

竈突(くど)に火を焚き始める。

そうすると、風呂桶に必要な水がたまった時には

温度がある程度上がっているので、

適温になるまでの時間が短縮できる。

僕は、おかまの線まで水が溜まる前に

火を焚き始めた。

僕は父に「どうしてお釜が割れる」か聞いた。

お釜が割れるのは本当に水がない状態で、

竈突で火を燃やし、

1 お釜が手で触れないくらい熱くなった時に

水を入れると、お釜の一部が縮み上がり、

お釜が歪んで割れる。

2 お釜がもっと熱くなって、

その中に藁でも入れれば燃えそうなほどになれば、

お釜は膨れるが、

お釜を支えている周りの風呂桶のセメントは

それほど膨れない。

だから割れるんだ。」

と説明してくれた。

父は石割職人で、ハンマーや石ノミを自分で作る。

炉に炭を入れ、ふいごで風を送り、

鉄の塊を真っ赤にした状態から、

ハンマーで叩いて、必要な道具を造るのも得意たった。

だから鉄と熱の関係は分かっていたのだ。


「要はお釜が割れにゃあええがや!」

と僕は考え、

蛇口をひねって、水を少し入れ始めて

すぐに火をつける。

急に1や2の条件にはならない。

お釜に手で触りながら、

火加減と水加減を注意深く見る。

水が温くなり,僕が入っても寒く無い温度の時に

風呂桶に僕が入ると、丁度お釜の線まで水面が上がる。

そのタイミングを僕は図って、

次に、僕が風呂桶から出ても、

おかまの線まで水が溜まるタイミングで、

僕は体を洗う。

これで、風呂を沸かす時間を節約しつつ、

風呂に入る時間を前倒しして

獄の自由時間を増やすことに成功した。

僕が、風呂から上がる頃には

お風呂は沸きあがっているのだ。

しかし、それでもお父さんたちが喜ぶ温度にならないときがある。

夏は良いが冬は簡単には風呂が沸かない。

僕は風呂の火の世話をしながら、

火遊びをして遊ぶようになる。

小さい木切れからは、

炎や煙が先の方に噴き出している物がある。

煙は火を近づければ炎になる。

これは横や下に向きを変えても、

他の炎と違って、上ばかりに行かない。

まるでテレビで見た火炎放射器のように

炎が飛び出しているのだ。

僕は、拾ってきて直した、

プラモデルの戦艦や戦車に向かって、

戦争を仕掛けた。

見事に大砲はくねっと曲がり、

それを繰り返すと、

本体は火事になって燃え始める。

僕の方が勝つのだ。

プラモデルは他の薪と違って、

変な燃え方をした。

ろうそくのように溶けながら燃えるのだ。

僕のうちのふろ場は、

敷地の端っこの

石垣に沿って立っていた。

そのメートルほど下に道があり、

風呂の焚口はそのすぐ横だ。

僕は、燃え始めた戦艦を持ち上げた。

すると、燃えて溶けたプラスチックの雫が滴り落ちる。

「ボォーッ、ボォーッ、」と言いながら、

火が付いたまま落ちる。

そして地面に落ちると、

そこに溜まった状態で燃え続けるようになる。

僕はその

「ボォーッ、ボォーッ、」と言いながら、

青白い火が付いたまま落ちるのを

見るのが好きだった。

それを道の方に差し出すと、

その「ボォーッ」は長く続いた。

僕は火遊びが好きだった。

それが、こっぴどい目に合う理由にもなる。

以下次号

https://note.com/kujirakun/n/n356324f62e9e



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