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なんとなく観戦したネット将棋の水面下に奇跡的な攻防が潜んでいた件

将棋倶楽部24にて上位者の将棋を観戦していたところ、面白い手順が水面下に潜んでいた。

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上図は38角と飛車を取ったところ。後手玉は62飛以下の詰めろで、受けても一手一手。勝負の行方は先手玉に詰みがあるかに委ねられた局面である。

実戦は、78金、97玉、86銀!、同玉、68馬、77桂打合、84香、96玉、85銀、同桂、95馬、同玉、94歩、86玉、85香、同玉まで先手勝ち。

途中の77桂打合が85に利きを作る好手で、先手が勝ちになった。3手目86銀は普通88銀だが、96玉と上がられて詰まない。86銀なら96玉には87銀不成、同玉、88金の筋を用意しており、代えて同歩にも96香、同玉、88金以下の筋で詰む。

この筋に魅せられての後手の切り込みであったが、先手の同玉~77桂打合が冷静な対応だったというわけだ。

実戦は詰みなしだが、第一感は詰みと思える局面である。金銀3枚+桂香と豊富な持ち駒で詰まないとは信じがたい。ちょっと考えてみたい。

(腕自慢の方はここで止まって、先手玉の詰みの有無について結論を出してから進んでください)

(以下の考察は将棋倶楽部24のレート2700程度の人間によるもので、正確かは分かりません。より正確な結論を得たい人は手元のソフトで検討してください。私は面倒なのでしません。)










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とりあえず、78金の代案として96桂が見える。同香と取れば、78金、98玉、97香、同玉、88銀、86玉、68馬以下詰み。代えて98玉も88金以下なので97玉と逃げる。以下、88銀、96玉、86金、同玉、84香でどうか。


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合駒は桂よりない。困ったようだが、同香、同玉、73桂打!が閃いた。74玉には84金まで詰み。同金、同桂、74玉、84金、63玉、62金、54玉。。。

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あと一歩のところで逃れている。しかし、73桂打の筋の発見は大きな収穫。そこで、85桂合の局面で68馬と銀を取る。以下、77桂打合、85香、96玉。。。

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85香を取らずにかわすのが好手で逃れている。馬が68に移動したことで、87馬と引けなくなっているのだ。

詰みそうだが、意外としぶとい先手玉。「端歩の位は終盤の貯金」という格言の偉大さを痛感した。

代案を考えてみる。3手目88銀に代えて、87馬!、同玉、84香なんてどうだろうか?

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86歩合には88金以下詰む。一瞬喜んだのもつかの間、78玉以下右辺に逃げられて詰まない。右辺に抑えが一枚もいないとは情けない。

諦めきれずに脳内で駒を弄りまわす。ある時、閃いた。

始めの図から、96桂、97玉、86銀!、同玉、84香、85桂合、同香、同玉、73桂打

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実戦で現れた鋭手86銀と、私の発見した73桂打の筋を組み合わせるのが詰みに導く手段であった。

86銀に同歩は87金、96玉、88金以下で詰む。また、73桂打に先ほどは同金で詰まなかったが、今回は金が一枚多いため詰む仕掛けだ。

やれやれ、と疲労感を覚えつつも、実戦ではなかなか現れない筋を見つけたことに嬉しさや充実さを感じていたが、冷静に眺めると話は終わっていない。

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86玉!

96玉には85金、97玉、96金打以下詰み。途中の96金を打たせないために、と考えればわかりやすい理屈ではあるのだが、「取れる駒を敢えて残す」技が実戦の中に潜んでいるとは驚きである。

今度85金は97玉で詰まない。しかし、68銀が落ちている。冷静に考えれば詰んでいるはず。


86玉の局面から、68馬、77銀合、85金、97玉、88銀、同銀、86金打、98玉、88桂成、同玉、87金、同玉、86金、98玉、87銀まで

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88銀~86金打と上から押しつぶすのが決め手で、ようやく詰みとなった。88銀に98玉は99銀成、同玉、77馬、同桂、88金まで詰む。

長々と玉を追い回したが、最終的には先手玉は詰む、というのが私の結論である。

96桂、86銀、73桂打、86玉。実戦らしくない手がよくありそうな局面に潜んでいるとは驚き。

個人的には「86銀」に羽生さん味を感じた。羽生さんの表情で有名な対局である。

「ふざけんな詰んでねえよ!」「他にも詰み筋を見つけた」とか何か言いたいことがあればコメントください。

終わり


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