『まちの映画館 踊るマサラシネマ』映画館の存在意義

兵庫県尼崎市にある塚口サンサン劇場というミニシアターの館長が執筆された本を読みました。

コロナ禍や動画配信サイトの拡大、シネコンの存在などで全国で次々に閉館していくミニシアターですが、その中でも独自の方向性を打ち出し、映画好きの間では全国的に有名な塚口サンサン劇場のその独自性を、エッセイ形式で紹介した内容になります。

私は映画館が好きなので、コロナ禍以前も以後も変わらず定期的に行っていますが、渦中では動画配信サイトの影響でほとんどの映画館が潰れてしまうのではないかと本当にヒヤヒヤしました。

実際、ミニシアターでは厳しい所が多かったようで閉館の話を数多く聞きました。

その中でも「何か変わったことをやっている」という認識の地方の映画館が元気になっていること、そして本まで出していることに驚き、嬉しい気持ちです。

読んでみると、明るく、楽しく、駆け抜けてこられた様子が書かれていますが、実際は大変なことも沢山あっただろうと思います。

その中で感動したのは、取り組まれている内容の多くがマーケティングや企画などの本で紹介されている内容の応用が多く、たくさんの経験の中からそこに辿り着かれている事でした。

特に「イベント上映に独自の名前をつけること」、「映画館に来られる人の裾野を広げるという目的を揺るがせない事」「番組の組み合わせを変えることでバリエーションを出す事」なんかは、企画の本でよく言われる事ですが、実際にこう活用できるのかととても勉強になりました。

そして「動画配信サイトの存在をネガティブに捉えない事」が個人的にすごいと思いました。

持論ですが、それぞれの分野のすごい方はその分野を脅かす物が新たに出てきた場合、警戒するのではなく嬉々としてその事について学ぼうとされる気がします。
すぐに警戒してしまう自分への自戒も込めた持論です、、
動画配信サイトの構成を参考にされる事にも驚きましたが、映画館は潰れないという予測にも驚きました。
これまでの積み重ねからそう考えられたのだと思いますが、前述の通り私はかなりヒヤヒヤしていましたし、これから先もわからないと考えていましたので、映画館側の方からそういう考えを聞けて安心しました。

読んだ総括としては、盛り上げの技術もですが、何より全ての事を楽しもうとされている事に感銘を受けました。
そして何にも臆さないエネルギーと、目の前の事に全力で取り組む姿勢が本当に素晴らしいです。
それと目の前のお客さんのことを本当によく見ておられる。
結局人はコミュニケーションですし、商売と言っても人と人の繋がりなのだと感じます。

映画館にはこれから先も新たな壁が出てくるのかもしれませんが、体験に価値を感じる気持ちは変わらず、時代に柔軟に対応しながら映画館は続いていくのかもしれないと希望を感じることができました。

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