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天秤秤Age.48:喪服がない/藤田美香

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ビル風はどっどどどどうど容赦なく飛べない私を煽って あ、スカート

置き去りの魂なんかと目が合って何か入れ物、ちょっと持ってきて

駅でさらさらさらさらと手を振って当たり障りのない障りだな

百均でなんでも揃うと聞いたのでたましいの入れ物はどこです

こんな拒絶 朝から市民センターのロビーは暑い ここにも居られない

冷房は二十八度の設定です。汗が引いても引かなくてもです

仕切られた机の下で靴を脱ぐ爪は赤、でも嘴じゃない

今誰か死んだら喪服がない、金も。私が死ぬなら良いのでしょうが

砕氷とおもえば平気 砕けても私は私。きっとそれ兵器

最近はピアスをしない日も増えて風通しのよい人でいる

フリスクを一粒汽水に投げ込んで釣った魚の息がさわやか

蝉のようにからからに乾いて死にたいな昨日もそこで死んでたふうに

弱い薬なのでと医者が繰り返す大丈夫です飲みませんから

ここに無いものに名前をつけてみて 私のなまえだったら正解

はくしょんがふぁくゆーみたい我ながらふぁくゆーみたい はぴばーすでい

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私の短歌は「日記」です。短歌を詠む、なんておこがましい。日記を短歌形式で「書いて」いる、そんな感じでしょうか。

ただ、私の日常のあれやこれはまちがいなく詩、だなあ。もちろんあなたの、日常も。

わざわざお手に取っていただきありがとうございます。あなたがそこにいてくれることにいつもとても感謝しています。

私は、私の歌を。


2019.10.16発行  (ネットプリントとして発行した作品です。)



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