【同人ネタバレ感想】『ボクは絶対犬じゃない!!』
僕ラブ37で頒布された、しろ先生によるゆうミア新刊。
璃奈ちゃんの試作品によって(同人誌恒例)犬の耳と尻尾が生えてしまったミアちゃん。見た目だけでなく、習性まで犬そっくりになってしまい、次第に侑への気持ちが隠せなくなってきて……というお話。
しろ先生もツイートで仰っていたのですが、表紙には肉球がいくつも散りばめられています。光に当てるとわかりやすいですね。作者様の好みやこだわりが感じられやすい表紙デザインを堪能するのは、同人誌好きとしての一つの楽しみです。
ちなみに、この装丁のおかげかはわかりませんが。表紙を初めて捲ったとき、「パキパキ」と固いものが解されていくような音がしたんですよね。おそらく肉球の加工が施された部分からの音だと思います。
この音がなんだか、新品を開封したときのワクワク感を彷彿とさせて、読む前からテンションが上がりました。新品のスマートフォンからフィルムを剥がすみたいな、あんな感覚です。伝われ。
この本を制作されている時のツイートを拝見させていただいてたのですが、どうやら相当な修羅場だったらしく、それはあとがきに如実に現れています。
世の中の作家様方はみんな揃って深夜まで作業しすぎじゃないですか? いい作品は長く楽しみたいので、本当にどうかご自愛いただきたいものです。
とは言え、我々読者のために必死になって間に合わせてくれたことに、最大限の感謝を贈りたいと思います。お疲れ様でした。
さて、ミアちゃんに犬適性があるのは共通認識かと思いますが。
今作はそんな〝犬らしさ〟に焦点を当てたものになっています。
改めて、犬っぽいとはどういうことを言うのでしょうか。
今までなんとなくなイメージで「犬っぽい」と言っていたので、そこについてあまり深く考えたことはありませんでした。
ですが、今作を読み終えて、ようやくそのなんとなくのイメージの解像度を上げることができました。
犬って尻尾や耳の動作だったり、ご主人の傍を駆け回ったりと、とにかく見た目で感情が伝わってきやすいんですよね。
対極的なのが猫でしょうか。あの子たちは「察せよ」みたいなオーラを放ってきますから。そこが可愛いんですけど。
言うなれば、犬は男性的、猫は女性的な印象があります。
そんな犬っぽさに魅力を感じて、その気持ちを正面からまっすぐに伝えられる侑ちゃんの姿が、それはそれは輝いて見えました。きっとミアちゃんの瞳にも、同じように映っていたことだろうと思います。
最初は「犬のままがいい」という言葉を直接的な意味で受け取ってしまい、臍を曲げていたミアちゃんが、侑ちゃんの気持ちを知ってお返しをくれてやるシーンは、心臓が雑巾絞りされたみたいになりました。ステイツの14歳、やるなぁ。
余談ですが、私が敬愛する小説家の中山七里先生が、インタビューでこのようなことを仰っていたのを思い出しました。
きっとこの言葉は、女の子同士である今作にも言えることなんじゃないかなと思いました。
別の生き物だから、理解したくなる。気持ちが伝わったら、すごく嬉しい。
ミアちゃんの赤裸々な感情がみられて、侑ちゃんもきっと幸せだったんだろうなと思います。
そっけない態度をとりながらも、心は確かに弾んでいる。
そんなミアちゃんの内面を、犬の耳と尻尾という、目に見える形にして我々に提供してくださったしろ先生の発想と手腕に頭が上がりません。
本当に、素敵なゆうミア本でした。
しかし璃奈ちゃんは、どうしてこんな薬を作っていたんでしょうね。
もしかしたら、この薬を飲んで犬っぽくなれれば、自分も感情を表に出せるようになるかも、なんて考えていたりして……なんて深読み。
最近TLでよく見かける、今めちゃくちゃ熱そうなゆうミア。
気になっている方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
『ボクは絶対犬じゃない!!』委託先リンク
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1902521
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